第6話 その時は、よるのすっごい魔法で

 


 でも。


 すごくツラそうな声だった。

 女の人、胸がぎゅーってなるくらい、悲しそうな声だった。


 よるに何か、できることありますか?

 悲しい顔を笑った顔にするお手伝い、できますか?


 夢の中なら何とかなるよね。

 よる、その子を探しますね!


 森って目の前の?

 まっくらなとこ?


 ううう。


 魔法とか使えないかな。お父さんとお母さんが教えてくれたの、使えたりするのかな。


 ふむう。

 あとで試してみよっと。

 

 そうだ!

 だったら!

 だったら!


 よる、カワイイ魔法使いに変身したい!


 お星さまが杖の先についてて、年上のお姉さんみたいにヒザがちらりって見えるくらいのフリフリのスカートでぇ……うーん、大人っぽすぎるかなあ。


 あ!


 ダメだからね!

 ふとももがいっぱい見えちゃうようなカッコはダメですよ!


 あああ、あとあと!


 姫香ひめかちゃんがこないだ学校に着てきた、背中やオヘソがちらりって見えちゃうちびシャツ! あれもゼッタイにダメです! カワイイけど! カワイイけどよるは着ないので! ダンコ拒否します! 


 ももも、もし!

 もしですよ!


 変身して、よるのふとももとオヘソがちらりってなってた場合は、神様、カクゴして下さい。


 よる、怒ります。

 めちゃめちゃ本気のすっごい魔法、使っちゃいます。


 1000匹のゴールデンレトリバーさんが神様のところに遊びに行きます。そして神様に甘噛みはむはむ、フワフワでもふもふしちゃいます。神様の前で、ぐでーって寝ころんで、きゅーんきゅーんってしょんぼりします。よるもいっしょにしょんぼりしちゃいます。


 みんなでしょんぼりふにゃふにゃんです。神様ももちろんしょんぼりなんですよ? だから普通の可愛いカッコの魔法使いにして下さいね!


 ……これだけお願いしておけば、大丈夫かな?


 そ、それじゃ。

 どきどき。


 えーい!

 変身!


 …………あれれ?

 もう一回!

 

 よる、変身!


 何も起きない。

 あうー。


 わがままいっぱい言ったからかなあ。

 ごめんなさい。

 

 でも。

 変身できなくても行かないと。


 だって。


 ……よるが迷子になって泣いてた時、お父さんとお母さんが心配していっぱい探してくれた。受付の女の人が、迷子の放送をいっぱいしてくれた。


 なのに、よるは何もしないの?

 かわいそうって思うだけ?


 そんなのヤダ。

 何にもできないなんてこと、絶対にない。


 子どもだって、女の子だって。

 気持ちは、大人に負けないもん!


「すみませーん! オオカミの子どもがいる森って、目の前の森ですかあ!」




” 誰か、フォルカを助けて! ”




「武器とか魔法って使えますか! ひぐれっていう黒猫はどこにいますか!」




” フォルカ立ち上がって、お願い! ああ、ダメ! エルフの森に入ってはいけません! ”




 聞こえてないのかな、むうう。


 あ、そうだ!


 あの声をひぐれも聞いてたならフォルカ……ちゃんだっけ? 探してるうちに、『うにゃあ~』って出てきてくれるかも!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る