第44話  母と娘と!

 弥生は素敵な女性だった。週末、僕は弥生に会いに大阪に帰った。金曜の晩に弥生の家に着き、日曜の夕方から岡山まで戻る。さすがに毎週だとお互いに疲れるので、会うのは月に3週。3回の内、2回は僕が大阪へ行き、1回は弥生と瞳が岡山に来てくれた。岡山の観光名所は会社の先輩に聞いたり、自分で探したりもしたが、広島に行ったこともあった。更には瀬戸大橋を越えて香川に行ったこともあった。



 弥生のマンション、或る日の会話。弥生のベッドはセミダブル。結ばれた後、僕は弥生に腕枕をする。弥生は僕にしがみつく。


「相手が崔君で良かったわ」

「なんで?」

「瞳と一緒に会えるから。前の彼氏には瞳を会わせなられなくて、瞳に隠れて会ってた。それって、ちょっと瞳に対する罪悪感があったのよね」

「今はいつも瞳ちゃんと一緒やもんな」

「このマンション、防音もしっかりしてるし、ええやろ?」

「防音がしっかりしていないと、夜、思いっきり楽しまれへんからなぁ。瞳ちゃんに声が聞こえるから」

「そやろ? 防音がしっかりしてるから、私も思いっきり燃えることが出来るわ」

「そうそう、防音が無かったら瞳ちゃんが走って来るで。何かあったのかと思って」

「私、そんなに大声出してる?」

「自分ではわからへんもんやけど、弥生は結構スゴイで」

「崔君が今までに抱いた女の中では、私はどんな感じなん?」

「結構、乱れる方。昼は淑女なのに夜になるとすごく乱れる。これってええことやで。弥生は大人の女性の色気もあるしなぁ。歴代の彼女と比べてもナンバー1や! (お世辞を言ってしまったが、これは許されるだろう)」

「ありがとう。乱れるって言われたら恥ずかしいけど……だって、楽しまないと損やんか。崔君も激しく燃えた方がええやろ?」

「そうそう、だから、これでええねん」



 また、或る日。岡山のホテル。弥生達はツインの部屋に泊まる。僕はシングルの部家に泊まる。すると、瞳が寝静まった頃に弥生がやって来る。


「ふー! 1週間分のストレスが吹っ飛ぶわ」

「弥生がピルを飲んでくれてるから、Hが充実するわ」

「うん、ええやろ? やっぱり違うやろ?」

「全然違う。僕、弥生から離れられへんわ」

「離れたらアカンで」

「弥生はやっぱり若い方がいい?」

「うん、崔君大好き」

「僕が若いから好きなん? 若かったら誰でもええの?」

「そんなわけ無いやんか、こっちもちゃんと選んでるわ」

「ほな、どういうところが好きなん?」

「顔も身体も好きやで。夜は私を満足させてくれるし。私をお姫様扱いしてくれるところも好き。優しいところも好き。瞳に優しいところも好き。まだまだ好きなところはあるけど、もっと聞きたい?」

「いや、もういい、ありがとう」

「このまま、こんな日々が続いたらええなぁって思うわ」

「僕も、そう思う。まだまだ弥生を抱き足りない」

「貧乳やけど、ええの?」

「弥生は顔も身体もキレイやで。身体は、スレンダーやのに胸がキレイやし、脚が長いし。モデルやって言われたら信じてしまうで」

「私、Bカップやで。ブラによってはCやけど」

「形がキレイやから、ええねん。弥生は抱き心地がええねん」

「もう30代の半ばやのに、嬉しいことを言ってくれるやんか。私、オバチャンやろ? 本当に若く見えてる? 崔君の横にいても不自然じゃない?」

「オバチャンじゃないよ、色気があるねん。女性の30代は女盛りやんか。めちゃくちゃ魅力的に見えるで。でも、弥生は自分が美人だと自覚してるやろ?」

「自分のこと美人だと思ったことは無いで。美人やったら、旦那は浮気せえへんかったんとちゃう? 私、別れた旦那の浮気が原因で離婚してるから、自信は無いねん」

「それは関係ないで。僕の知人にも浮気してる人達がいるけど、相手はブサイクやったで。“奥さんの方が美人なのに、なんで-?”って思ったよ。キレイな奥さんがいても、浮気する奴は浮気するねん」

「そういうものなんかなぁ」

「多分、そういう男は甘いんやと思う」

「自分に甘いの?」

「勿論、自分に甘いのは間違いないし、“バレない”と思ってるのも甘い。けど、1番は、“結婚したら、もうこの人以外は愛さない!”という覚悟が足りない。そこが甘いねん。中途半端な気持ちで結婚するから、浮気するねん」

「ほな、私の別れた旦那も甘かったんやね?」

「そういうことになるなぁ。だって、好きな人がいれば、その人以外を抱きたいとは思わへんもん。そうやろ? 弥生はどう思う?」

「セ〇ク〇レスは嫌。ちゃんと私のことを抱いてくれるなら、満足させてくれるなら、相手は1人でいい」

「そやろ? やっぱりそうやんな」

「崔君は再婚を考えてるの?」

「漠然と考えてる。もう1度、今度は幸せな結婚がしたい。でも、離婚というトラウマがあるから、まだ再婚は少し怖い。というのが正直なところ」

「離婚したら、いろいろ考えてしまうやんなぁ。わかるわ」

「でも! やっぱり僕はもう一度結婚したいんやと思う」

「ほな、私を嫁にもらう気なん?」

「うん、弥生との新婚生活を考えることがある。勿論、瞳ちゃんも一緒の生活や」

「へー! なんか、幸せそうやね」

「そやろ? 弥生も想像してみてや」

「想像してみた、幸せそう!」

「そやろ? 今スグにとは言わんけど、そういうことも考えてほしいな」

「でも、私も今は大企業に勤めてるから、結構、給料もらってるしなぁ」

「古いけど、3DKの社宅があるで。2室借りれるらしいで。社宅使用料、なんと1室で6500円やで。結婚したら手当もつくし、ちょっと現実的やろ?」

「ええかもしれへんなぁ。でも、今スグに返事は出来へん。今は瞳が幸せになることを、優先して考えてるから」



 また或る日、僕が大阪に戻り、迎えに来てくれた弥生と瞳だったが、突然、瞳が言った。



「パパ、お帰り!」







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