第5話 様子を見たけど!
景子と会うことは減ったが、まだ全く会わないというわけではない。景子とも会う。会えば、景子に誘われてホテルにも行く。景子は、毎回勝負下着で挑んでくる。景子は、友人に性体験の回数で負けていたのが悔しかったらしく、いつも積極的に体を求めてくる。まあ、まだ愛子と付き合っているわけではないので、僕は誘われたら景子の思いに応えていたのだ。
「崔君、最近、なんか悩んでる?」
「うん、悩んでる」
「何を悩んでるの?」
「うーん、秘密」
「なんで? 何を悩んでるか教えてや」
「聞きたい?」
「うん」
「この前、或る女の娘(こ)を紹介してもらったんやけど」
「え! 聞いてないで」
「うん、言ってない」
「なんで、そんな大事なこと言わへんのよ!」
「だって、言うたら気にするやろ?」
「当たり前やんか! ほんで、崔君はどうすんの?」
「それを悩んでるねん」
「相手はどんな娘(こ)なん?」
「女子大生」
「ほんで、崔君はその娘のことどう思ってるの?」
「うーん、それが、わからへんねん」
「崔君は、私のこと好きちゃうの?」
「それが、わからなくなってきてるねん」
「どうすんの?」
「それで悩んでるねん」
「悩むことちゃうやろ、私という彼女がいるんやから」
「うーん、景子と一緒にいると楽しいけど、その娘のことも気になるから困ってるねん。今、正直に話してしまっているけど、正直に話すのは僕の誠意やと思ってくれ」
「もう、崔君、しっかりしてや!」
「うん、でも、考えさせてくれ」
「崔君がそんな態度やったら別れるで!」
「ほな、その女子大生の方へ行くわ」
「もう、そんなん言わんといてや」
「景子、こんな僕に愛想が尽きたら去ってもええぞ!」
「そんなん、出来るわけが無いやんか」
「ほな、しばらくソッとしといてくれ。もうすぐ、結論を出すから」
「崔君は、その娘のことをどう思ってるの?」
「なんか、守ってあげたくなる」
「私のことはどう思ってるの?」
「一緒にいると楽しい」
「もう、Hしたん?」
「してない」
「私、別れるのは嫌やから」
「うん、考えとく」
「別れるの嫌やー!」
景子は泣き始めた。僕には、どうすることも出来なかった。景子に話すかどうか? 迷ったが、愛子は僕が景子と付き合っていることを知っている。だったら、景子にも愛子のことを話すのが公平というか平等だと思ったのだ。もし、僕が愛子を選んだとして、突然、別れ話をするのも申し訳無くて、前振りをしたかったのだと思う。
景子には1つ問題があった。メニエル病なのだ。繁華街、人混みの中で急にうずくまったりする。目眩がするらしい。僕は何度か立てない景子を背負って、あるいはお姫様抱っこして、タクシーで土曜日も開いている病院に連れて行ったことがある。まあ、僕としてはそれくらいのことは許容範囲で、だから別れるということは無いのだが。でも、どうせ付き合うなら健康な方がいいような気もする。その点、愛子は華奢だが健康だ。繁華街を景子を背負って走るのも疲れるのだ。一度、景子をお姫様抱っこして走っていたら、通行人に、
「誘拐やー!」
と言われたこともある。勘弁してほしい。“こんなに病弱で、丈夫な子を産めるのだろうか?” と思ったこともあった。
そんな景子だったが、僕とは“絶対に別れない”と言っていた。
愛子は飄々としていた。僕は、もう無理に話題を探すことはやめていた。自然体で付き合うようになった。沈黙の時間が多くなったが、愛子は気にしないようだった。僕も気にしない。でも、これでは熟年夫婦みたいじゃないのか? 僕は盛り上がらない愛子とのデートに、“今後、これでやっていけるのか?”と、また慎重になってしまう。でも、まあ、お互いがそれでいいなら、これでいいのかもしれない。と思ったりもする。愛子のビジュアルで、中身が景子だったら完璧なのに。
愛子とテーマパークにも行った。アトラクションがあれば、共通の会話ができる。こういう時は、普通に話せる。相変わらず、愛子は受身のしゃべり方だったが。
映画、テーマパーク、共通の話題がある時は話が盛り上がる。でも、何も無いデートではどうしても沈黙が多くなる。まあ、僕も沈黙の時間を気にしなくなったから良かった。でも、無口過ぎる愛子と結婚したら、どんな家庭になるのだろう? ちょっと怖い。やっぱり、会話も重要だと思う。すると、景子の顔が目に浮かぶ。
だが、不思議と、会えば会うほど愛子を“守ってあげたい!”と思ってしまう。僕は退屈なデートでも愛子に更に惹かれていった。だが、愛子は“結婚相手としかHしない”と言っている。愛子は早く結婚したいと言う。大学を卒業したら、スグにでも結婚したいと言うのだ。僕も結婚願望は強い。愛子を抱くと言うことは、愛子と結婚するということだ。大きな決断になる。勿論、愛子を抱く時には景子と別れていなければならない。愛子と付き合う=結婚。重い。でも、遊んで捨てるなど出来ない。
悩んだ僕は、景子と愛子を親に会わせることにした。結婚となると親も絡んでくる。それなら、親の意見も参考にしようと思ったのだ。
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