MS.2 平凡魔法使いは、初めての料理に浮かれる


 バルバロッサさんのお陰で、もう諦めないといけないのかな、って思いはじめていた、今日の夕食にも、なんとかありつけそうで、ウキウキしてる


 スキップしちゃいそうになるのを抑えながら、挙動不審にならないように気を付けて、食堂までゆっくり歩いていく


 そして、食堂入り口のスイングドアをゆっくりと押し開けると、エントランスからだとよく見えていなかった部屋の中の壁際の方まで、ハッキリと見えるようになった



 って、うわぁー!

 この食堂、とっても広いよ!



 エントランスから見えていた景色からでは、想像出来なかったくらい広い食堂は、とても賑やかで、少し騒がしく感じるくらいだった


 奥の方のカウンターに居るお兄さんに、バルバロッサさんから渡された札を見せると



「ん?


 おぉ、坊ちゃん

 その札を持ってるってことは、もしかしなくても、閣下のお目に留まったんだな

 良かったなぁ


 それじゃあ坊ちゃん、何食べたいんだ?



 おっ、因みに、

 今日の日替わり定食はハンバーグだぞ」



 はんばあぐ?

 聞いた事の無い料理名だなぁ

 どんな料理なんだろう?



「えっと、

 は、はんばあぐ?

 って、どんな食べ物ですか?」



「あぁー、なるほどな


 そっか、そっか

 坊ちゃん、デサトフィアの外から来たのか

 なら、ハンバーグのことは知らんよなぁ


 ハンバーグはな、デサトフィアの名物料理だ


 ほら、そこのテーブルを見てみな」



 そう言ったお兄さんが指し示したテーブルには、鉄板付きのお皿があった

 そして、そのお皿の上には、少し平べったい団子のようなものがのっかっている

 鉄板は加熱されいるみたいで、団子のようなものからは、ジュー、って焼けているような音がしている



「あれが、はんばあぐ?」



「おう

 あの皿にのってる肉団子がハンバーグだ


 坊ちゃんもあれにするか?」



 肉団子!

 ということは、お肉だ!

 お肉が食べられるんだ!


 勇者のパーティにいた時の食事で、お肉を食べるのは前衛職のみんなが優先だったんだ

 だから、探索中にたくさんお肉が手に入った日以外に、後衛職の僕たちがお肉を食べられることは殆どなかったんだよね



「んー、うん

 あれにします!」



「ほいよ

 じゃあ、この札を持って待っててくれよ

 出来上がったら呼ぶからな


 っと、坊ちゃん

 この札に書いてあるのは読めるか?」



 お兄さんに渡された札は、二枚のプレートを組み合わせて一枚の札にしたものだった

 よく見てみると、上のプレートには数字が、下のプレートには料理名と量が表示されていた



「えっと、



 824


 ハンバーグ

 中



 で、合ってますか?」


 あの料理、『はんばあぐ』、じゃなくて『ハンバーグ』だったんだ



「おう

 坊ちゃん、字がちゃんと読めるのか

 偉いじゃないか」



「えへへ

 これでも魔法使いなので」



「ほぉう

 凄いじゃないか


 魔法使いなんて、スキルの適性以外に教養とか知識とかもいるんだろう?

 習得するのは大変じゃなかったか?」



「えへへ、

 確かに大変でした


 でも、良い先生と師匠がいたので」



「そうか

 それは良かったなぁ


 っと、次が来てるな

 坊ちゃん、そろそろ席探しとけ」



「はい

 ありがとうございます」



 初めて食べる料理

 しかも、久しぶりのお肉


 ワクワクするなぁ

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