真・魔道覇伝〜幼馴染勇者のパーティを追放された魔法使いは、魔導王だった前世の記憶を取り戻す〜

鹿島恒星

第1章

第1話 平凡魔法使いは、勇者パーティを追放される


「あ、すみませーん

 素材の買取り、お願いしまーす



 これとこれは売却で

 えっと、こっちは、ポーションが作れるらしいから残しといて

 あっ、これも売却で



 んと、それと、この剣を打ち直してもらいたいので、いつもの鍛冶屋に連絡お願いします」




 僕は、ウルバス



 しがない寒村でしかないシトリン村の出身で、特に目立つような才能が無い、平凡な人間



 今は、同じ村出身の幼馴染で、スキル【勇者】を発現させて、今代の勇者として認定された、カレンを筆頭とする勇者パーティの一員として活動している



 とは言っても、僕は未だにスキルが未発現のままで、だからか、いつも戦闘には参加させてもらえないんだ



 一応、カレンと一緒に旅に出たいと言った時に受けた才覚鑑定では、スキル【魔導士】の片鱗はあったらしい


 だから、フリーの魔法使いとして勇者のパーティに参加しているんだ



 だけど、実際のところは、さっきも言った通り、戦闘には一切参加させてもらえないから、ただのサポーター兼雑用係しか、させてもらえていないんだ





 それで、今代の勇者のパーティに所属しているメンバーは僕を含めて8人


[勇者]カレン・ブロントエイム

[聖者]ヴィンディオル・エストレイマ

[剣聖]アルト・ディゴワーズ

盾聖じゅんせい]バルト・ロスターク

[賢者]ユリーカ・アノン

[弓聖]エレン・ナート

[錬金王]マイケル・ケベック


 そして僕、

[魔法使い]ウルバス・ロンディーニ



 僕以外のみんなは、エストレイマ王国の国王様の要請を受けて集まった王国の精鋭で、僕だけが凡人(未満かもしれない)



 それにしても、もう、魔族の領域の入り口に接しているからか、今日の探索は、思うように行かないことが多かったなぁ

 特に、魔法を無効化する魔物に、金属を溶かす魔物なんかとの遭遇は、本当に不運だったなぁ、って思うよ




 それでも、そんな敵たちをも倒してしまえるカレンや、パーティの皆には感心していたんだ



「戻りました」



「戻ったか、ウルバス


 おい、こっちだ

 こっち、上に来い


 話がある」



 物資調達や装備品・防武具の整備、素材売却などに出掛けていて、パーティメンバーが揃っていない中、アルトさんとバルトさんとヴィンディオル様に呼び出された



 そして、


「なあ、ウルバス

 お前はさぁ、弱すぎるんだよ


 今回もお前のせいで、剣は折れるし、怪我を負うしでもう散々だ


 出てけよ、このパーティ


 俺たちは勇者の一行なんだよ


 ただの魔法使いでしかないお前はな、ここじゃ完全にお荷物なんだよ」



 突然、勇者パーティから脱退しろ、という話をされた



 アルトさんの剣が折れたことに関してだけは、僕に責任はないと思うけど、それ以外はアルトさんの言う通りなのかもしれない


 確かに僕はいつも、アルトさんやバルトさん、カレンといった前衛のメンバーに守られている

 でも、それは他の後衛のパーティメンバーにも同じことが言えるはず


 それなのに、ただの魔法使いでしかないからと言って、パーティからの追放は流石に受け入れられない



「ウルバスはよぉ、前に、勇者様を守りたいとかなんとか言ってたけどさぁ、お前が弱すぎて逆に勇者様のことを危険に晒してんの、分かってるのか?


 守るってのはな、簡単なことじゃねえんだよ

 常に強く、常に丈夫であり続けなければいけねぇんだよ


 だってんのによ、お前は、守りたいと口先では言いつつも、強くない

 強くならない


 勇者様の幼馴染だろうがなんだろうが、魔族の領域に入るからには、ここから先は、お遊びじゃないんだ


 中途半端な実力しかない奴がいると、迷惑なんてもんじゃ済まないんだよ」



 盾聖であるバルトに、守護のことを持ち出されると、弱ってしまう


 でも、僕がカレンを守りたいという気持ちに、偽りはないし、変わりもない


 それでも、僕が今、とてつもなく弱く、カレンの足を引っ張ているという事実も変わらない


 それに、今の環境では、どんなに強くなりたくても、技術アーツの練習と修練と研鑽以上の経験を積むことが、全く出来ていない


 どれだけ自己研鑽で経験値を稼いでも、実戦で使用しなければアーツのレベルは上がらないんだ


 だから、今のぼく僕のステータスに表示されるアーツのレベルは軒並み0のままなんだ


 それでも、パーティのみんなは誰一人として、僕を戦闘に参加させてくれない


 ソロで討伐に行くことは許されていないし、パーティメンバーが揃っていないと魔物が出現しやすいエリアへ探索に行くこともできない


 そんな状況で、僕には手っ取り早く、強くなる方法が無かった



 悔しいけど、今の僕が弱いことは事実


 魔族の領域に入っていないにも関わらず、今日の探索には苦労したし、その探索で僕が活躍していないのも事実


 現実を受け止めるなら、このパーティ去るしかない



「覚悟が決まったなら、早めに行け

 他の者たちが帰ってきてからでは、遅くなるぞ」



「分かり、ました


 ・・・それでは、さようなら」




 これは、いい機会だ


 今まで出来なかった実戦を積み、アーツのレベルを上げられる、いい機会なんだ




 勇者のパーティの最終目的は、魔族の領域の中心に在る魔都、に住む厄災の魔王とその配下の罪禍さいかの悪魔をすべて討つこと


 きっと、それまでの道程は、今までとは比べ物にならないほど、長く、険しくなっていくんだと思う




 だから、

 今からでも遅くはない





 最後の決戦までに、




 いや、

 カレンが僕の力を必要としてくれた時に、




 その期待に応えられるように



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