MS.10 平凡な魔法使いは、恥に生きる
全ての魔力を使い果たす勢いで、リベンジカウンターの魔法陣に魔力を注ぎ続ける
出来るだけ長く、最後の一瞬までゴーレムの動きを見逃さないように、まるでゴーレムを睨みつけるかのような視線で見続けていた
だけど、魔力切れの影響で眩暈がして、視界が暗くなったことが不安になって、つい、目を瞑ってしまった
そして、激しい頭痛に襲われながら目を開くと、試験用ゴーレムの胸部 -本来のゴーレムであれば
つまり、
うぅッ・・・・・
ううぅぅ
・・・・・やったぁ!!
勝ったんだ、僕、ゴーレムに
っ、うグッ!?
痛いッ!!
うぅ
魔力切れ間近で、頭痛が酷いよぉ
本当にギリギリで、なんとか賭けに勝ち、僕の実技試験は無事に終わった
・・・早く・・・休まないと・・・・・
「ふむ、実に素晴らしい結果だ
おめでとう
諸君が、この実技試験に合格したことを認めよう
これから、筆記試験を行う
が、その前に少し休憩が必要そうだな
筆記試験の開始は、今より2時間後
13時30分とする
会場は、2階
資料閲覧室の右隣
学習室を使用する
席の指定は、学習室内にて掲示してある
開始時刻には着席しているように
もし間に合わなかった場合は、筆記試験を不合格とする
・・・あと、今回は特別だ
昼食を食堂で食べる場合は、この券を提示しろ
無料で提供するように手配してある
それでは、解散」
フィオリーネさんは非常に気が利く人で、僕たちがお昼ご飯をちゃんと食べられるように対策してくれていたみたいだ
「ふぅ、助かりました
デサトフィアの中心街は、想像以上に物価が高く、用意していた路銀では、宿に泊まることが精一杯で、あたしたちには食事のことを考える余裕がありません
ですが、僅かとはいえ、体力を消耗している以上、食事を抜いて筆記試験に挑むなど愚の骨頂
しっかりと休息をとり、万全な状態で挑むべきでしょう
あたしたちは食堂へ向かいますが、ウルバス殿は、どうされますか?」
お昼ご飯は、食べに行っておきたいなぁ
でも、歩くのはまだ難しい気がする
ここで暫く、休憩しているしかないのかなぁ
「テト、見て分からない?
今のウルバスは、立ってるだけで精一杯
無理に動こうとすれば、すぐに倒れる
ウルバスを休める所に連れて行く
それが、最優先事項
ということで
テト、ゴー
ウルバスを抱えて」
えぇっ!?
「な、何を言うんですか!リル
流石にそれは良くないでしょう!」
そうだよね!
それに、この歳になって年齢が近そうな人に抱えられるのは、僕だって恥ずかしいよ
「ん?
何で?
今のウルバスは、一人で移動できない
誰かしらの手助けが必要
そして、私じゃウルバスを抱えることは出来ない
身体強化魔法は苦手
だから、テトが運ぶしかない
そうでしょ?」
た、確かにそうなんだけど・・・
そうじゃないって言うか
その・・・
「ぐぬぬぅ
正論なだけに、反論し難い
しかしそれは、心理的な面では、あまり良い方法とは言えない
などと言ったところで、リルは理解なんて出来ないのでしょうね」
「うん?
今は、プライドに固執したところで、1メルト分の得にもならない状況
下手したら、ウルバスは筆記試験を受けることすら出来ない
現状、可能性がないとは言えない状態
だから、きちんと休息が取れる場所へ移動させるべき
何か間違ってる?」
うぅ
確かにその可能性は有り得る
このままだと、2時間後に、筆記試験を受ける上で辛くない程度にまで魔力が回復しきる保証は無い
だけど、食事を摂れば、魔力の回復速度は確実に速くなる・・・・・
これは、恥ずかしいとか言ってられないかな
「何も、間違っていない
非常に珍しいことに・・・な
・・・・・分かりました
ウルバス殿、申し訳ないのですが、抱えさせていただきます
あと、外傷は無かったと思いますが、一応念の為に聞いておきますね
お怪我などはありませんか?
魔力枯渇症以外の症状は有りませんか?
何かしらの異常が有れば、何なりとお申し付けください」
えっと
テトラさんって、たぶん貴族の方だよね?
びっくりするほど腰が低い喋り方だなぁ
んー
もしかして、使用人さんとかの喋り方の真似をしているのかな?
確か、ユリーカさんも勇者のパーティでの旅が始まった最初の頃は、平民との友好的な会話のための言葉遣いって言って、使用人さんの言葉遣いを真似てたっけ
それでシスが、
「やっぱり、その言葉遣い、嫌」
って言ってからは、ユリーカさんは普段通りの言葉遣いに直したんだよね
「異常は無いです
それと、ありがとうございます」
「行き先の指定はおありでしょうか?」
「食堂でお願いします」
「かしこまりました
それでは、ご案内させていただきます」
うウェえぇッ!!??
お姫様抱っこ!?
「二人とも、何やってるの?」
ううッ
恥ずかしいよぉ
「おっと
昨日の坊ちゃんに嬢ちゃんたちじゃねぇか
どうしたんだ?
って、まぁ見りゃあ分かるか
魔力切れだよな
ってことは、今、入所試験を受けてるんだな
よっしゃ、ここは魔力回復スペシャルだな」
昨日の夜も受付に居たお兄さん -確か名前は、ビルフォードさん- やたくさんの冒険者の人たちに、テトラさんにお姫様抱っこされている姿を見られてしまった
ううぅぅ・・・
穴があったら、入りたい
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