MS.9 - 3 平凡魔法使いは、冒険者ギルドの入所試験を受ける 3


 メテオストライクが付与された異常と言える程強大な破壊力を誇る矢が、腹部にクリティカルヒットしてしまった悲劇のゴーレムは、僕が瞬きをしたほんの僅かな一瞬のうちに、盛大な音を立てて爆散してしまった


 えぇっ?


 う、うわあぁぁ!?

 と、とんでもない一撃だよ!



 戦い終わったリルシアさんは、鼻歌でも歌い出しそうなくらいに軽い足取りで戻ってきた




 ゴーレムが元々立っていた位置の辺りでは、魔法陣が発動して、爆散してあちこちに散らばっていたゴーレムの欠片や破片なんかがゆっくりと集まって、元のゴーレムの姿を形成し直している






 リルシアさんの試験が終わり、ゴーレムの再生も完了して、ついに僕の番がやってきた




 僕の今のステータスじゃ、あのゴーレムと真っ向から勝負することは無謀だと言える

 僕の身体能力やこのゴーレムの性能のことを考えると、ナイフみたいなリーチが短くて、攻撃力が弱い物理型の武器を使う意味は全く無い

 だから、完全に魔法主体の戦闘にする



 でも今の僕だと、ゴーレムを挑発して、シールドで攻撃を受けて、カウンターでダメージを返す方法が、一番可能性があるくらいには、攻撃力と戦闘経験が足りてない



 ゴーレムは挑発が効きにくいから、効かなかった時のことを考えると、できるだけ魔力消費量が少ない魔法がいいかな

 シールド魔法は、ダメージ蓄積量が分かりやすいし、かなり得意な魔法だから、ミルフィーユシールドがいいよね

 カウンター魔法は、もしもの時のために、反射するダメージの量を強化できる系統が安心かな



 作戦を色々と考えながらゴーレムの前まで歩いて行くと、急に緊張が大きくなってきた



 これが僕にとって、初めての戦闘

 だけど、大丈夫

 ちゃんと出来る


 今までずっと間近で、強い人たちの戦闘をたくさん見てきたんだから



 最初に、戦闘開始と同時に、挑発魔法の詠唱を始めて魔法防御力が下がる瞬間に発動させる

 次に、ミルフィーユシールドを発動させて、シールドの枚数が残り一枚になるまで、攻撃を受ける

 最後に、カウンター魔法でシールドに蓄積したダメージを強化してゴーレムに返す



 普通の魔法使いなら、魔力を全部消費すると気絶してしまうけど、スキルがまだ発現してない僕には、消費可能な魔力量に上限が定められているらしく、魔力を全部消費しきったつもりでも、ほんの少しだけ余裕が残るから、気絶まではしない


 だから、カウンター魔法を発動する時には、全ての魔力を消費する

 それで倒しきれれば僕の勝ち、倒しきれなければ僕の負け



 覚悟は決まった

 よし、頑張ろう




 大きな深呼吸を一回して、気を引き締める


 動き出したゴーレムを見つめながら、詠唱を始める


{煽動の意志よ、我に力を

 耳目寄せるは、黄霊おうれいの叫び

 四角しかどの祝福、この身に纏い

 不動たる精神こころよ、仇敵を捕らえ給え)



 挑発魔法を発動させるタイミングを見計らう



 物理防御の魔法陣が起動した瞬間が、このゴーレムにとって最も魔法防御力が下がるタイミング


 あっ!

 魔法陣が見えた!

 よし、今だ!!



(《挑発スタラップ》}



 ゴーレムの視線が勢いよく動き、僕の姿を捉えた


 掛かった!


 なら、


{《ミルフィーユシールド》}



 一番使い慣れている、得意な防御魔法を詠唱破棄して発動させる

 多めに魔力を消費しただけあって、久しぶりにシールドの総枚数が50を大きく上回った、かなり分厚い重層の盾ができあがった



 今から暫くは、僕の忍耐力を確かめる時間だ


 僕の方から近付くと、スタラップは解けてしまうから、ゴーレムが寄ってくるのをじっと待つ







 思っていたよりもゴーレムの攻撃力は高くて、シールド1枚毎に耐えられる攻撃数は、たったの2~3回だけだった


 ゴーレムがシールドを殴る時に発する轟音が少し怖くて、涙が溢れそうになってしまうのを必死に我慢する


 時間制限が無いから、ゴーレムがカウンター魔法の効果が一番高くなる枚数までシールドを割るのをひたすら待ち続ける





 シールドの残り枚数が5枚になった


 そろそろ、カウンター魔法の詠唱を始めよう



{反撃の意志よ、我に力を

 焚き上げし狼煙は、白霊はくれいの叫び

 三角みかどの祝福、この身に纏い

 全ての代償を捧げ、我が身を燃やし給え)



 シールドの残り枚数が1枚になった


 今だ!

 まだ残っている魔力の全てを賭けて、ゴーレムに挑む



 絶対に!

 負けたく!!

 ない!!!!



(《強化リベンジ 反射カウンター》}!!

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