MS.12 平凡な魔法使いは、少し賢くなった気がする


「326番!

 キャベツとレタスのサラダ

 ポテトポテトフライドポテトの中

 それぞれ1人前


 327番!

 ロカフォージャのホワイトシチュー、1人前

 サディンチュナのサラダサンドの小、2つ


 328番!

 ウィリーセントラルの中、3つ」




「!

 ご飯

 お腹空いた」


「はぁ、

 まだ、納得はしてないけど・・・

 今回の話し合いはここまでね」




 僕たちの番号が呼ばれたことで、二人の口喧嘩は無事に終わった


 うぅ、

 まだ頭の中で、キーンって音が鳴ってるよぉ






 お昼ご飯を受け取ってテーブルに戻ると、気になっていたリルシアさんの料理を見てみて驚いた


 ポテトポテトフライドポテトの見た目には、ものすごく、見覚えがあったから




 あの見た目は


 そう


 レンコンのはさみ揚げ!




 ポテトポテトフライドポテトは、想像していた物より、かなり美味しそうな見た目をしていたから、次に来た時は頼んでみようかな



 そして、僕のウィリーセントラルは、テトラさんが言っていたとおり、カンノーロのような見た目をしていた


 ウィリーセントラルを創ったウィリーさんの故郷では、筒状のお惣菜のことをセントラルと呼んでいたことから、ウィリーさんが開発したセントラルの料理として、『ウィリーセントラル』と、当時の国王様が名付けたらしい


 テトラさんの説明によると、ウィリーセントラルはポワソンとヴィヤンドの2種類のセントラルを1組みにして提供するらしく、僕が貰ったお皿にも6本のセントラルが置かれていた



 ウィリーセントラルのセントラルに使われる生地には、魔力回復をサポートする効果があるアルベリーを使っているから、魔力をたくさん使った後の人に人気な料理なんだって








 ふぅ、美味しかった

 それに、思ってたよりも皮の部分の生地がパイみたいにサクサクで、食べていて楽しかった




「回復完了?

 ウルバスの顔色が良くなった

 これで、もう安心」



 どうやら、リルシアさんは僕の様子をずっと心配してくれていたらしい

 もしそうだったのなら、喧嘩はしないで欲しかったなぁ



「次は筆記試験との事ですが、こちらは依頼を受注する際の分類が目的なので、成績自体は考慮されません

 無理して考える必要は無く、知っていることだけ回答すれば良かったかと」



 確かに、そうだよね

 冒険者って、無理して知らないことを知ったかぶることが危険な仕事だし、知識量や得意分野で依頼を分類するのが、普通だよね


 って、あれっ?

 僕、生活文字は読めるけど、書ける自信はないんだよね


 んー、どうしよう・・・あっ、でも、そもそも、読み書き自体出来ない、っていうような人が試験を受けに来ることだってあるよね?

 そういう時の対処法だって、きっとあるはず、だよね?



「ウルバスみたいな例は、希少

 普通、実技試験に合格するだけの実力がある人は、自力で生活文字の読み書きができる


 受付の代筆は、冒険者ギルドのマニュアルに沿ったもの

 支部の方での利用率は、そこそこ高い

 だけど、本部で登録を希望する人が利用することは、稀」




 あ、あぅぅ

 そう、ですか



「ん?

 別に、恥じる必要は無い

 あれは、覚えるだけ無駄

 全部覚えようものなら、そのうち、記憶力の無駄遣いを後悔する羽目になる


 魔法使いは、生活文字が書けなくても困らない

 読めるだけでも、問題無く仕事が出来る


 ウルバスだって、トゥオカヌやメラギッソは、書けるでしょ?」



 えっと

 トゥオカヌが、古代文字

 メラギッソが、魔法文字

 だったかな?



「はい

 その二つなら書けますし、読めます」



「だったら、それでいい



 そもそもの話、生活文字は文字の数が多過ぎる


 トゥオカヌが、30とちょっと

 メラギッソが、100より少し少ない


 それに対して、生活文字は、2万だか3万だかくらいあったはず」



 ぅうウェェッッ!?

 生活文字って、そんなにたくさんあるんですか!?


 あっ

 そういえば、カレンが勇者として認定された時に渡された、って言っていた『文字帳』は、僕がユリーカさんから貰った、基礎魔法学の魔導書と表紙の大きさは同じだったのに、その魔導書よりもずっと分厚かったような記憶がある

 そのことを考えると、それくらいはあってもおかしくないのかも?



「生活文字全てを数えれば、確かにそのくらいの種類があるはずだ、と記憶しています


 ですが、一般的に使用されることが多い文字の数は、3千程度ですので、その3千字ほど覚えれば、日常生活も快適になると思います」



「その無駄なことに使った記憶領域をリセットすれば、トゥオカヌくらい、直ぐに読み書き出来るようになる


 人間って、時々、本当に愚かなことをする」



 うん

 僕もリルシアさんの意見に賛成


 だって、きっとその3千文字を覚えたところで、生活していれば、そのうち知らない文字が出てくるのは間違いないよね

 わざわざ、3千文字覚えたにも関わらず


 だったら、意味ないじゃん

 結局、読めないんだから




「で、ですが、生活文字には5種類の大きな分類がありまして、それぞれの長所で短所を補いあっているんです

 確かに、覚えるまでは大変かもしれませんが、一度使い始めれば、その利便性に驚くと思います」



 そう、なの、かなぁ?

 でも、実際のところは、どうだったんだろう



「生活文字を覚えて、ある程度使えるようになった側としての意見が、さっきの通り『


 短い文で、多くの情報を伝えられることは、確かに便利

 だけど、それでも面倒


 トゥオカヌは、音を文字で書き表す

 言葉の意味が分からなければ、調べればいい

 簡単


 生活文字は殆どが、一文字で意味を表す

 読み方も分からなければ、意味も分からない

 だから、その文字自体を覚えてなければ、調べようが無い

 お手上げ


 ほら

 面倒でしょ」



 うわぁ

 それは確かに面倒そう

 本を読んでる最中に知らない文字が出てきたら、その部分が読めないのは嫌だなぁ



「そ、それは、意味型や意匠型に多く見られる特徴でして、音型や象形型であればその点については、問題無いことでしょう」



 生活文字には、分類が5つあって・・・・・?

 もしかして、今ではもう使われることが無い、古代魔法言語の属性文字みたいに、複数の種類の文字があるってことだよね?

 意味型、意匠型、音型、象形型・・・あと一つは、なんだろう?






 そんな話をしているうちに、学習室と思われる部屋の前に着いていた


 のだけど、この部屋、入り口らしき場所が見つからない

 どこから入ればいいんだろう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真・魔道覇伝〜幼馴染勇者のパーティを追放された魔法使いは、魔導王だった前世の記憶を取り戻す〜 鹿島恒星 @stellardeer

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ