第4章
1話 自殺配信
俺の名前は稀咲陣。大学からの親友、峰岸宝とコンビでYouTube活動をしている。しかし、なかなか伸びない。再生数は1000回を超えればいい方。ほとんどの動画が数百回再生止まりだった。ユーチューバーとして成功するため俺たちは就活をしなかった。フリーターとして働きながらYouTube活動を続けている。つまり俺たちのチャンネルが伸びるかどうかは俺たちの生活がかかる大事な事だった。
そんなある日。宝は良いネタを思いついたと提案してきた。
「自殺配信とかしたらどうだ?ビルの上から飛び降りたりとか!過激な動画って再生数回るからさ」
「おいおい。それバンされる可能性あるぞ?それに死んだらYouTubeも何も意味なくなっちゃうだろ」
「大丈夫!俺の台本はこうだ。まず、お前は自殺配信という名目で配信し、自殺したい理由を語る。それで世間の注目を集めるんだ。ある程度再生数が回ったら飛び降りる。もちろん飛び降りても怪我するくらいで済むビルから飛び降りるんだよ。つまり死のうと思ったけど死ねなかったということにする。お前はその後、泣きながら自殺は考え直した、支えてくれる仲間を裏切れないと言って俺のことを紹介するんだ。世間はそういう友情系の話には弱いから絶対バズるぜ!」
宝は自信満々にそう話す。俺はあまり乗り気はしなかったが確かにバズりそうな気はした。YouTubeの再生数のためなら死ぬこと以外はかすり傷!本気でそう思っていたため、怪我くらいは大したことないと考え、宝の提案に乗った。
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自殺配信。まず陣が屋上にスタンバイ。そして機材をセットし、『自殺配信』と打って予約投稿をする。その後、陣はSNSで自殺を仄めかす文章を打つ。フォロワーはそこまでいないが後々の伏線のためにこういうところも気を抜かない。準備ができたら宝がビルの下でスタンバイ。そんなに高くないビルとはいえ、万が一の事があってもいいように宝は着地位置にマットを敷いていた。
自殺配信が始まった。陣は泣きながら自殺理由を語った。
「俺は子供の頃、イジメを受けていました。靴に画鋲を入れられる、トイレの水を頭からかけられる、机に『死ね』と書かれる。そんなことは当たり前の毎日でした。中学では信じていた友達に彼女を寝取られました。そんな経験が積み重なった結果、人を信じることができなくなっていきました。しかし、大学で親友と呼べる人に出会いました。それが今、一緒にYouTubeをやっている峰岸宝です。宝と一緒にYouTubeで有名になって昔俺をいじめていた人を見返したい。そう思ってYouTubeを始めました。就活もしませんでした。有名にならないと意味がないと思ったから。でもなかなか有名になることはできません。借金も貯まっていくばかりです。もう生きてる意味がありません!宝、今までありがとう!俺はここから飛び降ります!」
コメント欄には『死なないで』『生きてたら良いことあるさ』『死んだら親友の宝くんが悲しむよ?』と言ったコメントが寄せられていた。
反響は大きかった。閲覧数は1万を超えた。さらにSNSでも『自殺配信』がトレンド入りした。これがいわゆるバズリというものだった。
後は陣が飛び降りるだけ。宝ももちろんカメラに写らない位置で陣の飛び降りを見守っている。
陣は意を決して飛び降りた。
_____しかし
宝は陣の飛び降りる位置に合わせて巨大な煉瓦を用意した。陣はそれに頭をぶつけて死んでしまった。
ビルの下はカメラに写らないようになっていたため、宝が煉瓦をセットしたところは写ってなかった。しかし、ビルから飛び降りた人が血を流して倒れてる様子に野次馬がたくさん集まり、ネット上で話題となった。
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