3話  ネットの怖さ   第5章完

〜校長先生、西村への取材〜


「校長先生は加奈という生徒が親からDVを受けているといった話を本人から相談受けていたんですか?」



「ええ。担任の先生には相談しずらいからと…」



「具体的にどんな?」



「テストの点が悪いと殴られるとか。しょっちゅう痣を作ってましたよ。全部親からの暴力のせいだとか」



「な、なるほど。でもそれって教育の一貫じゃないんですかね?校長先生に相談することですか?」



「あなた、何を言っているんですか?今は躾でも暴力はいけないものとなっているんです。昔は多少の暴力も黙認されてたのかもしれないですが。私は心配になって親御さんに何度も電話しましたよ。でも加奈ちゃんの親御さんもあなたと同じようなことを言っていて聞いてくれませんでした。加奈ちゃんが自殺した原因は親からの暴力の可能性が高いと私は思っています」



「そ、そうですか」





ジャーナリストは校長先生への取材を終え、学校を後にした。校長先生の言葉を聞き、自殺の原因はキヨではなく、家庭内暴力のせいかもしれないと薄々察していた。













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 数日後。ジャーナリストがネットにあげた取材動画は大反響だった。そして最初の取材のせいで清水キヨがネット上で大バッシングを受けていた。クラスメイトの咲月、大地、そして校長先生への取材内容を知らない世間の人たちはキヨをイジメの主犯格と叩き続けた。キヨはその現状を見て嘆いていた。



「私、イジメなんかしてないのに。でも周りから見たらイジメっぽかったのかな?」


「いや、キヨちゃんは悪くないと思う!あのインタビュー動画の切り取りが悪意あるよね。」


「でも、、。世間はそうは思わないよね。私は一生イジメの加害者として生きていかなければいけないのかな?」





ジャーナリストがネット上にあげた取材動画。担任の今野先生と宮本彩の取材分しかネットにあげていないため、清水キヨはイジメの加害者、自殺に追い込んだ張本人というレッテルが貼られてしまっていた。この後、新しい情報が出てきたとしても最初に貼られたレッテルはなかなか覆すことができない。




 このようにメディアには悪意があるにしろ、ないにしろ一部が切り取られて情報が間違って相手に伝わってしまう事例が多々存在する。キヨは中学生にしてネットの怖さを肌で感じることとなった。











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 一方、今回の中学生の自殺事件の取材を担当した小鳥遊ジャーナリストは上司と事件について会話していた。





「小鳥遊!お前の取材した動画、大反響だったな。うちの記事も閲覧数が増えて今月はかなり売上が期待できそうだ!」



「ありがとうございます!」



「それにしてもあの自殺は本当にキヨって子のイジメが原因なのか?」



「多分そうだと思います。色んな生徒からキヨちゃんがイジメをしていたという証言が取れましたから。」



「なるほど。まあ中学生だから罰せられるとかはないんだろうけど世間は許してくれないだろうなぁ」



「でしょうね。まあでも自殺の原因が分かったことにより他のマスコミの人たちもあまり騒がなくなりましたよね」



「そうだなぁ。本当にお前の取材のおかげだったと思うよ。お手柄だったな!」



「ありがとうございます!」






















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--あなたはこの話の真実に気づくことができましたか? 1話から名前に注目してじっくり読み直すと真実が見えてくるかもしれません--






              



               〜完〜

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