3話 誘拐
俺は夏実を必死に探した。諦めかけたその時、救世主が現れた。
「あのぅ〜。中村武昌さんですか?」
声をかけてきたのは俺より少し年下くらいの好青年だった。
「は、はい。そうですけど?」
「あ、良かったです。僕、真白拓人(ましろ たくと)と言います。夏実の彼氏です」
「ああ!いつもお世話になっています!」
「いえいえ!こちらこそ!夏実、やっぱり誘拐されたんですかね?俺の所にも助けてって送られてきたんですよね」
「ホントですか。夏実、どこ行ったんだろう。」
「犯人に心当たりあります?」
「心当たりというか。昨日、俺の家に死体があったのはご存知ですか?」
「ええ。夏実から聞きました」
「その際に気になる人物というか容疑者が浮上してきてまして。もしかしたら同一犯かもしれません」
「な、なるほど。ちなみにその人は誰ですか?」
「今から話す話、夏実には絶対内緒ですよ?」
「え、ええ。」
そう約束して俺は拓人に母さんが武昌という人物と不倫していたこと、夏実は武昌の子供であること、家にあった死体は武昌という人物であったこと、そして実の父を容疑者として疑っていることを話した。拓人は驚いていたが逆にこの件を週刊誌に取り上げてもらえば調査が捗るんじゃないかと提案してきた。俺もその提案に乗り、週刊誌に事件の経緯を話した。DNA鑑定の件は夏実に知られないよう、伏せて記事にするようにお願いした。少しでも事件解決の手がかりが掴めれば!そんな気持ちだった。
数日後。予期せぬ出来事が起きた。週刊誌が母親の不倫のことやDNA鑑定で俺と夏実の血のつながりがないことも報じてしまったのだ。それだけじゃない。週刊誌の記事がX(旧ツイッター)に載った時、「タケナミウツチ」という変な名前のアカウントが『これ、犯人、息子の武昌なんじゃね?』とリプしたことから世間は一気に俺を犯人と疑い始めた。
世間が俺を犯人と疑う中、優香は俺の事を信じてくれていた。それに夏実の居場所の手がかりも一緒に探してくれた。本当に良い彼女を持ったと心から思った。俺は週刊誌を信用してはいけないと思い、どんな事件でも解決してくれると話題の名探偵、並木奏に事件の捜査を依頼した。奏さんに情報を全て伝えてまずは俺の父親が今、何をしているかを調べてもらうことにした。
数日後。奏さんから電話があった。
「もしもし?あなたのお父さんの居場所というか状況分かりましたよ!」
「ほんとですか!」
「はい。ただ2週間前に病気で亡くなられてますね。おそらくあなたのお母さんと電話されてすぐに亡くなられてます」
衝撃だった。2週間前はまだ俺の家で事件は起きてない。つまり、俺の父さんに犯行は不可能だったのだ。では一体誰が?捜査は振り出しに戻ってしまった。
「あ、あのう。もう一つ引っかかってることがあるんですよね」
「何ですか?」
俺は今思い返してみるとある人物のある発言がどうも引っかかっていた。大したことじゃないかもしれないが重大な手がかりになるのではないかと思い、一応奏さんに伝えた。
俺が家に帰宅すると鍵が開いていた。慌てて家の中に入ると隣人の下田さんがいた。
「な、何してるんですか!鍵開いてました?」
夏実が誘拐された時に窓ガラスが割られていたが窓ガラスもすでに修理していた。つまり、俺が鍵をかけ忘れて家を出ていない限り、俺の家に下田さんが入ることは不可能なのだ。
「いえ、鍵はかかってたわよ?でも私、この家の合鍵持ってるの!」
「え、なんで!」
「数日前にあなたの妹がポケットから落としたのよ!拾って届けようとしたんだけど追いつけなくてね。それで持ってたわけ」
「数日前っていつですか!事件の前?」
「そこまで覚えてないわよ。鍵返しにあがってただけだから勘違いしないでよね?」
下田さんはそう言って家を出て行った。俺は奏さんに隣人の下田さんも合鍵を持っていたことを伝えた。
そして考えた。
………俺の家で武内寛介さんが殺されていた事件は合鍵持ってる人なら犯行が可能だ。つまり母さんともしかしたら父さんも可能。でも父さんは事件より前に病気で亡くなっているから犯行は不可能。母さんは病院にいたという確実なアリバイがある。隣人の下田さんも合鍵を持っていたのなら下田さんにも犯行は可能だけど下田さんの場合、動機が全くない。一方で夏実が誘拐された事件は窓ガラスが割られていたことから合鍵を持っていない人物でも犯行は可能となる。二つの犯行は同一犯なのか?それとも………
俺は必死に考えたけど答えは出なかった。その時、奏さんから電話がきた。
「武昌さん!確信は持てないんですけど。犯人分かったかもしれません。後、妹さんの居場所も」
_______________________
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!このお話には明確に犯人とその動機が存在しますので是非考察しながら読み進めていただけたら嬉しいです。登場人物が多くてキャラの相関など難しいかもしれませんが犯人予想などコメント欄に書いていただけたらとても喜びます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます