2話 犯人の影

 自宅に帰ると俺は早速、過去の写真を漁った。実際にぬいぐるみで遊んでいたのはいつだったのか、いつ捨てたのか等が具体的に分かると思ったからだ。すると一枚の写真を見つけた。俺とぬいぐるみと近所の女の子、3人で写ってる写真だった。おそらく母親が撮影したのだろう。それよりも一緒に写ってる女の子が気になった。


「父さん、この子…」


「あー。昔、隣に住んでた子だ。歩の一個下でよく遊んでた。名前はえーっと…」


「俺も思い出せない、、」


「この子、歩が小学校上がる前に引っ越ししちゃったからね。確かお父さんの転勤かなんかで。そういえばその時、オモチャとか色々あげたんじゃなかったっけ?」


「え、そうなの?」


「うん。」


「てことはこのぬいぐるみ、この子にあげた可能性ある?」


「あー、あるかも!」


俺はそれを聞いて昔、隣に住んでた家族を調べ尽くした。そしてついに写真の女の子が『相良咲月(さつき)』という名前だということを突き止めた。そういえば『さっちゃん』と呼んでいたような…?ぼんやり記憶が蘇ってきた。もしかしたらさっちゃんが今になって持ち主にぬいぐるみを返却してきたのかもしれない。もし、そうなら何故今頃送ってきたのか。目的は何なのか。それを聞くべく、さっちゃんの現住所を調べて会いに行くことにした。


「いきなりごめんなさい。相良咲月さんでお間違いないですか?」


「そうですけど…?」


俺はさっちゃんに写真を見せた。


「昔、あなたの隣に住んでた者です。このぬいぐるみ、覚えてますか?」


「あー、なんとなく?」


「確かあなたにあげたんですよね?」


「いや、確かこれ貰えなかったんですよ」


「え?どういうことですか?」


「恥ずかしながら私、ぬいぐるみ遊びは小学校高学年くらいまでしてたんです。だからどのぬいぐるみを貰ったのか覚えてるんですけど、このぬいぐるみは貰った中にはなかったんです。気に入ってるぬいぐるみは貰えなかったので、、」


「え、そうなんですか?じゃあ俺、このぬいぐるみ気に入ってたってこと?」


「当時は多分…?」


驚きだった。さっちゃんじゃないなら一体誰が?そもそもこのぬいぐるみはこの写真の後、どこにあったのか。誰かにあげるのを惜しむくらい気に入っていたものなら捨てたのか無くしたのか何故覚えていないのだろうか。様々な疑問を抱えながら実家に戻った。



 戻ると父が怪訝な顔をして俺に話した。


「このぬいぐるみさ、何か仕込まれてるんじゃないか?」


何を言ってるか分からなかった。父はぬいぐるみの中を調べ始めた。すると中から盗聴器と発信機が出てきた。


「な、何これ!?」


「おそらくこれを送ってきた人が仕込んだんだ。だからお前が捨てたのにもすぐ気づいて自宅のドアの前に置くことができた」


「でも何でそんなことを?」


「お前の動向を探りたい奴がいるのかもな。何か心当たりはないのか?」


「ごめん、全くない!」


 本当に分からなかった。過去のぬいぐるみを使ってまで俺の動向を探りたい人がいるなんて。どこかで恨み買ってたのか…?


「気味悪いからさ、このぬいぐるみ燃やしちゃおう」


俺は父にそう提案した。父も納得の様子だった。ぬいぐるみを燃やし、盗聴器と発信機を壊した。


「これでとりあえずぬいぐるみは無くなった。盗聴器も発信機も壊したから位置が特定されることとかはないだろう」


「うん。これでよかったんだよな?」


「ああ。もし今後何かあったら警察にも相談した方がいいぞ」


「うん。そうする」


俺たちはそんな会話を交わした。そして明日からまた仕事があるので東京の自宅に戻った。


 

 自宅に戻り、しばらくした頃。父から電話があった。


「おい。やばいぞ。ぬいぐるみを送ってきた犯人が分かった。逃げた方がいい」


父は焦った様子で電話してきた。


「ちょっと待って。どういうこと?犯人って?」


父から話を聞こうとしたその時。チャイムが鳴った。



_____ピンポーン



「出るな!」


父は叫ぶ。とりあえず自分の部屋にこもって出ないことにした。



「父さん!犯人は誰なんだよ!」


その頃、窓ガラスが割れる音がした。俺の部屋に犯人が入ってきたのだ。



「犯人は…」



父の口から衝撃の事実が語られた。

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