ミステリー短編集

yama

第1章

1話 不気味なぬいぐるみ

 俺の名前は片寄歩。東京で一人暮らしをしている社会人。社会人として平凡な日々を過ごしていたある日、差出人不明で謎のぬいぐるみが送られてきた。そのぬいぐるみは幼い頃、よく遊んでいたぬいぐるみだった。母親が俺の誕生日に買ってくれたぬいぐるみ。限定物でなかなか手に入らない貴重なぬいぐるみだったのだが、俺が母親におねだりして「ずっとそのぬいぐるみで遊ぶこと」を条件に買ってもらった。無くしたのか、捨てたのかは正直覚えていないが小学校に入る前くらいには見なくなっていた。そんなぬいぐるみが突如、自宅に発送されてきた。正直気味が悪かった。誰か分からない人から物が送られてきただけで気持ち悪いのだが、極めつけはそのぬいぐるみに俺の名前が刻まれていたこと。昔、母が俺のだと分かるようにぬいぐるみに俺の名前を刻んでくれた。つまり、あの時、無くしたか捨てたかしたぬいぐるみが20年以上の時を経て今の自宅に送られてきたということだ。本当に気持ち悪い。母親は俺が小学4年生の時に他界してしまったから母親が送ってくるわけがない。俺は父親にぬいぐるみを知らないか電話してみた。


「もしもし?俺が5歳くらいの時に遊んでたぬいぐるみ、覚えてる?」


「ぬいぐるみ?どんなだっけ?」


「今、写真送るね」


俺は父にぬいぐるみの写真を送った。


「ああ、母さんが買ってくれたやつね。懐かしいな。このぬいぐるみがどうしたんだ?」


「それが俺の自宅にいきなりこれが送られてきてさ。差出人不明で。父さん何か知ってるかなーって思って。でも流石に知らないよな」


「知らないなぁ。でも怖いな。差出人不明でいきなり送られてくるなんて」


「ああ。ちょっと気味悪くてさ。しかも俺の名前が刻まれてるんだ」


「まじ?ホラーだな、それ」


「ほんとそう!イタズラにしても度が過ぎてると思うし。結局、このぬいぐるみって捨てたんだっけ?」


「うーん。確か捨てたんじゃなかったかな?小学生になってからもう遊ばないって言ってオモチャとかその類は断捨離したはずだからさ」


「だよなぁ。じゃあこれ送ってきた人は全く同じぬいぐるみを用意して俺の名前を刻んでわざわざ送ってきたってこと?」


「ん、ちょっと待てよ?」


「どうした?」


「いや、何か妙な違和感覚えてな。ちょっとまたかけるわ」


そう言って父は電話を切った。妙な違和感?どういうことだろう?数分経ってまた父から電話がかかってきた。


「ごめん急に。あのぬいぐるみさ、あの時、限定品かなんかで母さんが買ったんじゃなかったかなって思って調べてみたんだよ。そしたら限定品だった。今は売られてないしそもそも世界中に数個しか売り出されてないぬいぐるみだったんだ。つまり今、買うことはできない」


「てことは…」


「多分あの時のぬいぐるみだ。」


ゾッとした。捨てたはずのぬいぐるみが何故、あの時と同じ形で残っているのか。そして自宅に送られてきたのか。本当に気持ち悪かったため、翌日の朝、粗大ごみと一緒に出すことにした。



_____しかし__________



 俺が家に帰るとドアの前に捨てたはずのぬいぐるみが置かれていた。さらに『捨てないで』と貼り紙までされていた。恐怖を覚えた。



 俺は誰かに監視されているのか…?誰が何の目的で…?



 真相を明らかにしないままでは不気味さが残ってしまうと考え、週末の仕事休みに実家に帰ることにした。もしかしたら実家にヒントが隠されてるかもしれない。俺は真相を探るべく、帰省した。

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