2話 相方の計画…?

 稀咲陣は自殺配信をしながら本当に死んだ。頭から血を流していたのは煉瓦に頭をぶつけたからなのだが、警察はビルから飛び降りた際の衝撃として事件を処理した。自殺配信は急上昇1位にランクインし、バズった。本当に死んでしまったことでマスコミ等にも取り上げられ話題となった。峰岸宝は号泣しながら相方の死を嘆いた。「相方の稀咲陣が自殺配信をして世間に迷惑をかけてごめんなさい」と自身のYouTubeチャンネルで何度も謝った。マスコミの取材にも泣きながら何度も頭を下げた。



 やがて世間は宝に同情の声を寄せるようになった。ネットでも宝は悲劇のヒロイン的な扱いをされた。そして宝は相方の陣のためにもYouTubeを一人で続けていくと動画内で語った。宝は陣との思い出を語る動画も出した。とにかく世間の注目は集まっていたため、陣のことを触れる動画から再生数が回った。しかし、宝は陣と一緒じゃないと意味がないと世間に訴え続けた。世間からはさらに同情の声が寄せられた。こうして峰岸宝は一躍時の人となり有名ユーチューバーの仲間入りを果たした。




 陣の葬式にもマスコミは押し寄せた。宝は「流石に葬式に来るのは違うでしょ!」とマスコミに怒った。世間もマスコミの行動を批判した。その後、宝は『葬式に現れたマスコミについて』という動画を出した。マスコミに対して怒りを露わにする宝に賛同する人が多数現れ、コメント欄は盛り上がった。今では宝はどんな動画を出してもネットが盛り上がるユーチューバーにまで上り詰めた。














 しかし、これが宝の計画だった。宝は陣の自殺配信を利用して本当に殺し、相方が自殺してしまった悲劇の配信者として有名になることが目的だった。陣の着地する位置に煉瓦を仕掛けるという証拠がほぼ残らないやり方で宝を殺すことが目的だった。もちろん再生数のため。世間の注目を集めるため。そのためなら親友を殺すことさえ厭わなかった。宝は自殺配信前に書いていた計画書を燃やした。



「世間は陣が自殺したと思っている。俺には同情の声が寄せられ、今では有名ユーチューバーの仲間入りだ!俺の計画は完璧だった」



そう言って高笑いした。高笑いしながらYouTubeを見ていたらショート動画で奇妙な動画を見つけた。




『峰岸宝は殺人鬼』


というタイトルのショート動画だった。内容は仮面を被った人物が「峰岸宝は相方を自殺に見せかけて殺した殺人鬼です。証拠は後日出します」と語るだけのショート動画。イタズラの可能性だって全然ある。しかし、宝は何故か異様に恐怖を覚えた。



「俺の計画を知ってる人物がいる…?」



宝はそう思ったらいてもたってもいられなくなり、この動画を出した人物を特定しようと試みた。

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