第2章
1話 ストーカー
「私、ストーカーされてるんです!」
私は探偵の並木奏に助けを求めた。私の名前は宮本彩花(さいか)。1ヶ月以上前から私はストーカー被害にあっている。最初は気のせいだと思っていたが私の盗撮写真が家のドアに貼られたり、実家まで特定されてそれが貼られたりもした。また、最近では駅の階段を降りていた時、後ろから突き落とされたこともある。流石に怖くなった私は警察に相談した。しかし、証拠不十分と言われ、捜査をしてくれなかった。そのため、腕の良い探偵として有名な並木奏に相談することにした。私は今までの事情を全て話した。
「犯人に心当たりはありますか?」
奏さんは私に聞いてきた。
「わかんないです。でも無差別じゃないとしたら私の元カレかなぁって思ってます。」
「それは何故ですか?」
「あまり良い別れ方をしなかったので。」
「なるほど。その元カレ、今どこにいるかとか分かります?」
「住所変わってなければ!」
「じゃあそこに案内してください!」
「今ですか!?」
奏さんの捜査はかなり強引な時があると聞いていたがいきなり案内を頼まれるとは思わなかった。私は奏さんの車に乗り、元カレのアパートへ案内した。
『清水』と書かれた表札。私は元カレの家が変わってないことを確信した。
「私、車で待っててもいいですか?ちょっと気まずいので」
「そうですねぇ。そうしましたら電話繋いでてもらってもいいですか?私と元カレさんの会話をスピーカーにするのでそれをあなたに聞いてほしいんです」
「わかりました」
こうして私は元カレと奏さんの会話を車で聞くことになった。
「あのー。すみません。僕、探偵の並木奏という者なんですけども清水海斗さんでお間違いないですか?」
「ええ。清水海斗は僕ですけど。探偵さんが何か用ですか?」
「宮本彩花という方をご存知ですよね?以前、交際されていたと伺ったのですが」
「あ、はい」
「あなた、彩花さんのストーカーをされてます?」
意外に直球で聞く奏さんに私はびっくりした。もっとカマをかけるものだと思っていたからだ。
「してないですよ!彩花とは確かに酷い別れ方でしたけどもう完全に吹っ切れてますからね?あいつ、感情的になりやすいし。もう二度と会いたくないですよ。ストーカーなんてしません」
海斗はハッキリ答えた。内心私は少し傷ついた。そんなに言わなくても。
「そうですか。分かりました。突然すみません」
話が終わったみたいだ。奏さんは帰ってきた。
「彩花さん!元カレさんは犯人じゃないみたいです」
………いや、「ストーカーしてますか?」って聞いて「してます」って答えるストーカーいないでしょ。この人、アホなの?………
私は少しイラッとしたが一応依頼してる身なので我慢した。それに海斗と別れてからすぐ怒る性格は直そうと決めていたのだ。
その日の夜。奏さんはストーカーがいつ現れてもいいように私の家の前で張り込んでくれることになった。それは正直ありがたかった。
深夜2時頃。
_____パリン。
窓ガラスが割れる音がした。
そしてフードを被った人物が部屋に入ってきた。
「きゃー!!」
私は悲鳴をあげた。その瞬間、奏さんは助けに駆けつけてくれた。奏さんはフードの人物を追いかけた。私は怖くなってその場に立ちすくんだ。
数分後。奏さんから電話がきた。
「ごめんなさい。ストーカー、見失っちゃいました。ところでストーカーが菅原ひなたと呟いていたんですけど心当たりありますか?」
「ごめんなさい。分からないです」
本当にわからなかった。
………菅原ひなた。そんな人物、私の知り合いにいただろうか?………
しかし、この後起きる恐ろしい出来事に比べればこの時のストーカー被害はまだ序の口に過ぎなかった…
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