第3章

1話  事故物件の謎

【前置き】

〜第3章は今までの話と少し異なり、物語の中でちゃんと解決はしません。あなたはこの謎を解き明かす事ができますか?〜







_______________________


 俺の名前は柿崎拓海。職業はユーチューバー。と言っても有名ユーチューバーとは言い難い。フリーターとして働きながらユーチューバーの収入でギリギリ生活を送れるくらいの再生数と知名度しかなかった。再生数が伸び悩む度にジャンルを変える等、とにかく迷走していた。そんな時、俺は人生一発逆転できそうな特大ネタを見つけた。





①事故物件との出会い


 俺はネットサーフィンをしていたら偶然、3年前に一家心中事件のあったアパートを見つけた。さらにその後、そのアパートは次々と怪奇現象が起こり、現在は格安物件として売られているらしい。たまにインタビュアーの取材等も行われていて都市伝説界隈では少し知名度のあるアパートらしい。もしこのアパートに住んで怪奇現象をそのまま配信すれば!伸びるかもしれない!しかも今住んでいるところよりも格安の価格。俺にとってはメリットしかない。すぐにこのアパートへの引っ越しを決めた。



 俺が事故物件に越してきた日。アパートのオーナーのおじさん(この時、俺は名前を知らなかったが後に剣崎茂と判明する)に嫌味を言われた。



「どうせお主も冷やかし目当てで越してきたんだろう。こっちは迷惑しているんだ。3年前の一家心中以来、格安にしないと売れなくなってしまった上にマスコミが騒ぎ立てて。本当に嫌なもんだ」



このおじさんの言っていることは最もだ。でも俺にも生活がかかっている。もし事故物件配信の企画が伸びれば人生一発逆転のチャンスかもしれない。この機会を逃すわけにはいかないんだ。だから…



………ごめんなさい、オーナーさん!………



心の中で謝った。


そして引っ越してきた日から早速、俺は事故物件配信を始めた。しかし、初日は怪奇現象は一切起こらなかった。






②オーナーのブログ



 二日目。俺はアパートについて詳しく知っておいた方がいいと思い、調べてみた。3年前に一家心中を起こしたのは片山家一家。4人家族で父、母、子供二人という家族構成だったらしい。元々、経営が悪かった父の会社が倒産し見境がなくなってしまい、一家心中を図ったらしい。その後、しばらく通常価格で売っていたが一家心中のあったアパートとネットで騒がれてしまい、なかなか売れることはなかった。そこで格安物件として売るようになったという流れらしい。ネットで騒がれた原因はマスコミが報道を煽ったのが原因らしい。



 さらに調べていくとアパートのオーナーのおじさんのブログを見つけた。


『剣崎茂の日記』というタイトルでブログをやっていた。



『はぁ。今日もマスコミが押し寄せていた。あいつらが来るせいで私のアパートはネットで散々事故物件と罵られている。本当に迷惑しているんだ。消えてくれ!』



『格安にしたら売れるようになったけど今度は怪奇現象が起こると騒がれるようになった。デマを流すのはやめてくれ。本当に迷惑だ。』



『怪奇現象が起こるというデマのせいでまたマスコミが押し寄せるようになったよ。さらにジャーナリストまで。取材料払えば良いってもんじゃないからな?どうしてくれるんだ本当に、、』



 俺はこのブログを読み進めていくうちに本当にかわいそうになってきた。コメント欄も同情の声で溢れていたが中にはそれを面白がるコメントも見受けられた。そしてコメントで論争も起きていた。




………かわいそうだけど、、生活のためだ!本当にごめんなさい!………



俺は心の中では何度も反省したがYouTube活動のため、今日も配信を行った。








③初めての怪奇現象


 事故物件住んでから二日目の配信。一日目は何も起きなかったせいで全然再生数が伸びなかった。


「今日は何かしら起きてくれ!」


俺はそう心の中で祈っていた。



 配信が始まって30分ほど経過した頃。隣の部屋から「ドンドン」と壁を叩く音が聞こえてきた。


………え!?………



俺は少し違和感を覚えた。


「隣の部屋、誰も住んでいないんですよ!なのに壁を叩く音が聞こえます。これは一体何なんでしょうか?」



さらに怪奇現象は続いた。俺のスマホに非通知で着信が来たのだ。俺は電話に出た。



「もしもし…?」



俺が電話に出るとありえないくらい低い声で「ここから出て行け…!」と聞こえてきた。鳥肌が立った俺は急いで音声をスピーカーにした。YouTube配信で視聴者にも伝わるようにするためである。電話の向こうでは得体の知れない誰かが「出て行け…!」と連呼。隣の部屋からは壁を叩く音。



 これぞまさに怪奇現象…!




この日のYouTube配信は非常に盛り上がり、普段は数千回の再生数が一日で30万回を上回った。

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