第6話 

「意外と近くなんだな……すぐそこに畑がある……」

 アーノルドは剣を抜いて、何時でも戦えるように構えた。

「ああ、ここの洞窟は冬の間、雪を詰めてな、天然の冷蔵庫にするんだ。冷たーい魔法の冷蔵庫なんて庶民には手が届かねえ。だから、このあたりの農民は冬の間はここに小麦や冷やせば長持ちするものを置いておくんだ」

「なるほど」

「けど、今の時期は使わない。ここは今の季節だと湧き水が出てて、今入れるとシケって腐ってしまう。だから、いつもは塞いでいるんだが、多少知恵の効くモンスターが開けて巣にしてしまう。今回はゴブリンが巣を作ってしまった……ってな感じだ。あいつらはオレ達の道具やメシ、そしてオレたち自身も狙っているからな、人間の生活圏が近いここは良い巣だと思ったんだろう……」

(近すぎないか?)とアーノルドは思ったが、ゴブリンは弱い方のモンスター、知恵が回らないのだろうと自身で納得した。

「おっさん、夜目の魔法使えるか?」

「ああ、魔法使いじゃないが流石にそれくらいは使える」

『『ライトアイ』』

 二人は暗いところでも見えるようになる魔法『ライトアイ』を唱えると洞窟を覗き込んだ。

 見えた範囲は約10メートル。それ以上見るためには奥に進むしかなかった。

「奥に行かないとわからないな……」

「ああ、でも入る前からわかることはある。あそこに動物のフンがあったが、おそらくゴブリンだ。あの量からして5匹ほど」

 そして、イラーリは地面に耳を当て、「今のところすぐ近くで動いているやつはいない。ゴブリンは夜行性だ。寝ている可能性がある。それに入口に引きずったあとはない。デカい獲物を取った様子がないから腹を減らしている可能性がある。どんな生き物も飯を食べてないと力は出ねえ……多少凶暴になっているかもしらねえが、そこを冷静に対処できれば力負けする事はない」

 と手慣れた様子で状況を観察していた。

「なるほど、そこまでここから読み取れるのか……」

 アーノルド自身、対人戦においては教える事ができるほどの知識を持っているが、モンスターの知識は一般的な物しか知らず、今聞いた事も知らない事の方が多かった。

「だが、いつだってイレギュラーはある。たかをくくると痛い目に合うのはいつだって自分だ。良い情報ってのはアテにはならない。いつだって信用できるのは悪い情報だけだ」

(いい心がけだな。この娘。軍でも指揮をする立場のヤツが美味い話に踊らされて痛い目にあってきた……痛い目にあったのは俺だが……)

「じゃあ、おっさん!入るぞ。入ったら反響するから会話は小さくな!」

 とイラーリは笑顔で武器を抜いた。

「ああ、了解した」

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