第14話

「じゃあ、依頼人の所まで行くから、ちょっとまっててくれ。ギルドに依頼を申請してくる」

 イラーリはギルドに一言二言伝えて、二人は冒険者ギルドをあとにした。

 二人が向かったのは商業地区の外れ、そこには商人たちの居住地区が連なっている。

 「今回の依頼人は移動商人だ。商人にも3種類あるのは知っているか?」

「ああ、俺達のみたいな一般市民に物を売る商人と物を作るギルドに注文された原料を売る商人。そして、物を運ぶ商人」

「流石、おっさんは博識だぜ!」

「無駄に歳をくって覚えただけだ。今回は一番最後の物だけを運ぶ商人だな」

「ああ、そいつはまだ新人でな、色々と勉強中で今回は移動商人として勉強中なんだ!」

 そして、イラーリは自身が目的地に着いた事を気づき、指を指した。

「この当たりだぜ、って、あったあった」

 その道沿い、一つの住居のドアをに叩く。

「どなたですか?」

 中にいた少女にイラーリは

 「おっす!来たぜ!カトレア!」と声をかけた。

「イラーリさん!お待ちしてました入ってください!」と少女はドアを開けた。

「……あら?こちらの方は?」

 アーノルドはカトレアと呼ばれた少女を見る。

 歳はイラーリと同じ程の年齢で、髪は緑色の長い髪。エプロンが似合う男勝りなイラーリとは対照的で、利発そうな少女といった印象を受けた。

「アーノルドだ。イラーリのクエストを手伝うFランク冒険者だ。新人だから不安かもしれないが全力は尽くさせてもらう」

 アーノルドは右手を差出し、カトレアと呼ばれた少女も右手を出して握手をかわした。

「新人さんですか?大歓迎です!」

その言葉にカトレアは嫌そうな顔ではなく、逆に明るい返事をされ、アーノルドは虚をつかれた。

「いいのか?高い金を払って新人の教育代わりにされて」

「実は私も商人としては新人な方なんです!お互い様ですよ!それにFランクとEランクとじゃ依頼金も違うんですよ〜」

とカトレアは微笑み。相手を安心させるようなイントネーションで答えた。

「そう言ってもらえると助かる」

「けど、オレより強いぜ!元王国軍の兵士だったらしい!」

とイラーリは自慢げに答える。

「まあ!それは頼もしい!」

「まあ、年取ったからって辞めてしまったがな」

 その言葉が終わった後、イラーリは手をパンと叩いて話を遮った。

「まあ、雑談はこのあたりにして、そろそろ本題に入ろうぜ!何を護衛するんだ?」

その話を聞いた瞬間、待ってましたと言わんばかりにカトレアは

「では、倉庫の方に案内しますね!しばらく歩くので、ごめんなさいね」

と言い、足を歩みはじめた。

「なあ、カトレア!今回の商品は何なんだ?」

「お花です。とってもキレイな花なんですよ〜」

「花かー、美味そうな食い物だったら、予備分を譲ってもらおうと思っていたのにー」

「残念ながら食べられませんし、実もつけません!染料用に注文頂きまして、それを運ぶんですよ。重さはあるので馬車で運びます。それで、ここですね」

 カトレアは倉庫にたどり着くと鍵でドアを開けた。

「寒いな」

 とアーノルドは肌に感じた違和感にボソリと呟く

「冷気の魔法で植物が元気な状態で保管できるようになっているんです。ほら見てください」

 カトレアは近場にあった鉢を取る。

「このお花、もう3日前に収穫されたものなのですが、こんなに元気なんです。びっくりで……」

 そう言った瞬間、アーノルドは剣を抜き、カトレアの喉元に突き立ていた。 

 カトレアは眼の前で何が起きたか、頭で処理しきれず、ただその恐怖に強張らせた。

「おい!おっさん!何しやがる!オレはお前を信頼していたんだぞ!」

 イラーリも剣を抜き、距離をとって構えた。

「むしろ、俺の方が聞きたい。どんな依頼を手伝わせようとしているんだ?」

「あ、あのっ……」

 カトレアが少し、声を出した瞬間、アーノルドの剣の先が少し触れる。

「カトレアさん……この花……麻薬の原料だぞ……」

 


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