第9話
その後、アーノルドは呼吸を早め、剣を振り、1体、2体、3体と斬り伏せていく。
(速い……速すぎる。まるで時間が飛んでいるみたいだ。ゴブリンたちがまるで死んでいる事に気づいちゃいねえ……)
一撃必殺、それがアーノルドが経験を基に身につけた白兵戦での基本戦術だった。
1キロの重さの剣を何百、何千回と振るうことは容易い。
だが、彼は剣を振るうたびに腕の筋肉が悲鳴をあげ、筋が切れ、確実にその速度が落ちていく事を知っている。
一瞬の遅れ、それが戦いにおいての死に繋がるため。最小の行動で最高の結果を出していく。
そして、女の周りにいた子供ゴブリンもためらわず、一振りで3本の首を刈りとった。
「君!イラーリ……彼女の下に行け!」
アーノルドは襲われていた女を庇うように立つと近場にいたホブゴブリンとゴブリンチャンピオンを睨みつける。
「はっ、はい!」
女はよたよたと歩きながら、イラーリの下に行き、イラーリは彼女に肩を貸した。
「大丈夫か?」
「なんとか……」
その言葉を聞くとアーノルドは再び足に力を込める。
あっという間に近づかれたアーノルド相手に3匹のホブゴブリンたちは武器を構える。
1匹目はどこからか奪ってきたであろうツルハシ。2匹目は剣。そして3匹目は木で作った棍棒。
「ゴブっ!」
ホブゴブリンはツルハシを横に振るもアーノルドは力任せに弾き返す。
「ゴブギャア!」
圧倒的腕力により弾かれたツルハシは後ろに振りかぶり、後ろにいたホブゴブリンに突き刺さる。
仲間を傷つけてしまったという一瞬の驚愕がホブゴブリンの思考を一瞬停止させる。
その隙をアーノルドは見逃さず、突きの姿勢に入り、懐に飛び込み一閃を放つ。
脊髄を一撃で突き、絶命させたアーノルドは指したホブゴブリンの影に隠れ、死角を利用し、距離を詰める。そして、まるで闇夜のコウモリの様に飛び出ると一振り、二振りとホブゴブリンを屠った。
「や、やべえ……」
勝てる!とイラーリは心の奥で感じるもアーノルドは焦っていた。
(ショートソードの切れ味が落ちてきている。逆刃も利用して何とか取り巻きは殺したが、あいつは……)
「うがぁぁぁ!!!!」
眼の前で繰り広げられた、殺戮にゴブリンチャンピオンは吠え、斧を構えた。
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