第16話
アーノルドとイラーリ、カトレアはそのままの状態で街を歩く。
「な、なあ……おっさん。本当に大丈夫か?こんな布で包んだ感じで、この花を運んで……しかもこんなに人通りが多いところで……」
「いや、むしろ人通りが多い方がいい。憲兵に見つかったら、逆に保護してもらえる。ここでの不安点は暗殺だ。取引している奴が、この花の危険性をこちらが気づいたとなれば、必ず口封じにくる。
不要に近づく者には注意しろ。それに立ち位置はカトレアさんが真ん中で俺がやや後ろ、イラーリはやや前で横に並んでいる状態をしてくれ。用心警護の動きの基本だ」
「わかった」
3人はその後、無言のまま、王国軍本部までたどり着いた。
「何かようかな?」
憲兵の一人が近づいてきた3人に声をかける。
アーノルドは憲兵に真剣な声色で尋ねた。
「軍団長のアレクに会いたい」
「ん?軍団長のアレク様に?」
憲兵はアーノルド他、含め、彼らの服装を見て、剣を抜く。
「彼はご多忙の上、アポのない者はお帰り頂いている。それに一般市民が何用だ?それにその包は?……ってあで!」
と後ろからやってきた年上の憲兵が頭を叩いた。
「お前!この方の顔を忘れたのかよ!」
「何するんで……って……あ!アーノルドさん!?」
憲兵は目を丸くしてアーノルドの顔をじっくりと見る。
「アーノルドさん、お久しぶりです!今日はどういった御用で?」
「アレクに会いたい」
「わ、わかりました。どうぞ入ってください」
先程まで警戒していた憲兵がまるで職場の部下のような態度に変わり、丁寧になる。
そして、憲兵に案内されて3人は奥へと進んだ。
「おっさんマジで、軍に居たんだな。みんな挨拶してるぜ」
「ああ、無駄に長く居たから知っている人の方が多い」
「アーノルドさぁぁぁんんん!!」
アーノルドとイラーリが少し雑談をしていると活発な女の子の声が木霊した。
アーノルドはその少女に気づき手を上げて挨拶をする。
「久しぶりだな。サーシャ。怪我はないようで良かった」
「はい!アーノルドさんから教えていただいたお陰です!今日は何故ここに!?も、もしや、また復帰を……」
とサーシャは言おうとしたが、後ろの2人を見て、「あのう……こちらの方々は……ま、まさか、けっ……けっ……」と尋ねた。
「はじめましてだぜ!オレはイラーリ。このおっさんとは仕事仲間だ!」
「良かった……って仕事仲間!?しかもおっさんって……」
「私はカトレアと言います、アーノルドさんには護衛依頼をしていまして……」
「ご、護衛!?」
(軍でもトップの実力者だったアーノルドさんをおっさん呼ばわりして、しかも、このカトレアさんという方は護衛依頼!?王侯貴族たちを幾度となく暗殺者から守ってきて、依頼が絶えなかったアーノルドさんに護衛依頼できる人物!?つ、つまりは高位貴族……まるで普通の町娘と低位冒険者みたいな服装をしているけど……変装をしているご令嬢とボディーガードといった所かな……ああ!せっかくアーノルドさんに会えたっていうのに!)
とサーシャは脳内で高速で状況を理解し、貴族の手を煩わせる事は良くないと判断して、「お仕事中とは失礼致しました。では、ここで……」と去っていった。
「おっさん、めちゃくちゃ可愛い女の子じゃねえか、ひゅ〜。やることはやってるんだな。おっさんも」
とイラーリはアーノルドに言うも、「彼女は俺の最後の直属の後輩だ。そんなセクハラ上官みたいな事は俺はした事はない」
と言って、再び歩み始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます