第3話 

 暴力事件の一件後、ザーコンを含めたC級冒険者たちは憲兵に突き出した。

 その後、アーノルドは家に帰り、身支度を整える。

伸び切ったヒゲを剃り、髪も整え、カジュアルではあるが清潔感のあるシャツに着替えた。

(冒険者になるにはたしか……冒険者ギルドで登録をするんだったな……)


アーノルドは冒険者の知識はあまり多くない。しかし、退屈な日々に飽き飽きしており、子供から冒険者が少なくて困っていると聞き、自分にできる事があるなら、やってみようと思い、冒険者になる事を決めた。

(しかし、あまり格好を付けて、冒険者になると言わない方が良かった……この年齢で再就職なんて出来るのだろうが、子どもとの口約束とは言え……断られたら顔向けできない。それに人間相手の戦いならできるが……)

 アーノルドは鏡をみて、自分の身だしなみを確認する。

「礼服とかで行く必要はないよな……お硬い仕事ではないし……」

  ちらりと見たクローゼットの中では勲章を受け取った際に来た、シックではあるが高級品とわかる礼服がホコリを被っていた。

 アーノルドは少し礼服を叩き、ホコリを落とした。

 

兵士として生き、宮仕えする者として仕事柄、多少の礼儀作法を学んだ経験もあるし、

退職した兵士から別の就職先を探す際、多少なりとも就職先に挨拶等をする事や、その際に身奇麗な格好をして挨拶をしたほうがいいと聞いていたことを思い出していた。

 (俺ももう少し若い時に転職していれば、ジジイぐらいの年齢でも働けたのだろうか……いや、過ぎたことだったな……)

 アーノルドは冒険者ギルドのある土地はどちらかと言えば治安の悪い土地であるため、木剣を腰に携える。

 木剣である意味は無用な殺生はしたくないこと。

 そして、アーノルド自身が殺人が正当化される立場では無くなったからだ。


 そして、アーノルドは冒険者ギルドへ向かう。

 アーノルドが住む住宅地は貴族たちが住むような地区ではないものの、国に使えていたということもあり、それなりに上品な雰囲気を持つ地区であったが、そこは違う。

 昼間だというのに飲んだくれ、影を見れば、非正規の娼婦などが立っていた。

 そして、それを覆うように屋台の従業員が活気を上げていた。

 それをかき分け、一際大きい建物にたどり着く。

 そこが冒険者ギルドだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る