011:妖精の泉


 領地経営。

 スキルと言っていいかは微妙なところではあるが、名前通りのものである。


「つまり……名前の無かったこの湖にわたしが名付けしたことでわたしの土地になったってこと?」

<肯定します。ここはマジカルフォレストの最奥部であるため、誰一人たどり着いた事例がありません。そのため、森自体には名前がありますがこの湖にはなかった、ということです。そこにシルフィーは神力を使ってさらに名付けもしたことで確立されました>

「……」


 要するに名付けをしたからこの土地がわたしのものになってしまったということ。

 でもって、この湖付近にはどの種族にも該当しない、いわゆる種族なしの生命体が暮らしていたが、わたしの影響により種族がなかったその存在種族が与えられた。


 ……確かに途中、妖精さんみたいとかは言って気がするけどまさかそれがこうなるとは思わないでしょ。後ついでに言うならわたしが生と死を司る神、というのも大きく影響があったっぽい。


「めがみさま! わたしたちにしゅぞくをあたえてくれてありがとうー!」

「「「ありがとー!」」」


 この舌足らずな喋り方をする小さな存在。わたしの手のひらに収まるサイズの中性的な人型をしているこの子たちがさっきの種族なしだった生命体である。


「女神様、ねえ」

<間違いではないですね>


 今回のことによってこの子たちは”妖精族”という新しい種族となった。と言っても、ここだけの話なので外の世界というか、大陸の国もそうだがこの世界の人類全てに認識されるようになった、という訳ではない。

 神に近しいというか、信仰している宗教関係の上位役職の人たちであれば何かが生まれた、ということを何となく分かるそうだけど、普通の人はそうはいかない訳だ。


「まあ別に知られない方がいいの確かだし」


 人は良くても悪くても臆病な生き物だから。わたしも人間だったけど……まあそうだよね。謎の新しい種族が確認されたらどうなるか……考えられるのは幾つかあるけど。


「未知のものほど怖いものはないってね」


 で、話を戻そうか。

 領地経営というスキルはそのまま領地に関連するスキルであり、スキルというよりはなんかゲームとかのシステム的なものかなって思う。


_______________________________

〇領地経営


■所有者:シルフィー

■所有地

 □妖精の泉フェアリーレイク


〇領地詳細

■領地名:妖精の泉

■領地レベル:1

■人口:100人

■聖力(神力):∞

■魔力:∞

■主な種族

 □妖精族

■主な資源

 ◇究極

  □聖水

  □薬草類

  □野菜類

  □果物類

  □植物類

  □魚類

  □土

■特殊

 □シルフィーの加護

 □神域結界

 □聖なる水

 □無限水源

 □枯れることなき自然

 □溢れ出る生命力

 □尽きない魔力

_______________________________


「えぇ……」


 うん、よく分からない。いや、色々とやばいってことは何となく分かる。

 資源の究極しかないって言うのもおかしいし、特殊の方はもっとおかしい。というかシルフィーの加護って何!? わたしの加護? そんな加護ないよ。


<否定します。シルフィーは女神に分類されるため、加護を付与できます。主な効果として生命力・魔力が強化されます>

「ん?」


 思ったより大した感じではないのかな? いやでも生命力と魔力か。


<生命力が強いと再生のスキルが覚醒しやすくなり、魔力が強いと様々な魔法に適性を持ちやすくなります>


 否。大したことないなんてことはなかった。


<他にも色々と複合的な効果があります>

「いや、いいよ……それ以上は」

<承知しました>


 この先は聞きたくないというか……聞かない方が幸せな気がする。


 で特殊の話に戻すけど、神域結界っていうのはまあ、この前のわたしの神力で上書きされた結界のことを指していると思う。神域とかとんでもない単語がくっついているけど。



□神域結界

神の領域に達した結界。

何者も発動者の許可なく、通すことも出すことも不可能。

外側から見ると何もないように見せられる。また許可ない者が通っても、結界内の空間には入れず、彷徨うこととなる。



<要するに許可ない者が入ろうとしても同じところをぐるぐるしているだけになります。分かりやすく言えばこの結界内は別空間のようなものですね>

「あーね」

<シルフィーはこの結界の効果を弄ることが可能です。見えるようにしたり、入ろうとした者を弾き飛ばしたり、永遠に彷徨わせることもできます>

「いや怖いから……ってか、弾き飛ばしたらここに何かあるって察せられるでしょ」

<どれだけ頑張っても見つけることは不可能と断言します。そもそもここまでたどり着ける存在は居ません>

「まあほら、万が一、億が一も考えて、ね。とりあえず仕様は今のままでいいわ」

<了解しました>


 そんな恐ろしい機能はいらない。

 特殊の他のやつも見てみると分かるけど、まあ名前そのままだね。どれにしてもかなりやばいものだということは分かる。というかやばいものである(断言)。


 聖なる水はまだマシ。聖力で溢れているから当然、水もその影響を受ける。湖の水全てが聖水となっているだけだ。いやそれでも十分な代物なんだけど。

 その下の”無限水源”だけど、これもまだいい。いや砂漠とかだったら喉から手が出るほど欲しいものだろうけど、名前通りの効果でこの湖の水をいくら使っても涸れることがなく、溢れることもない。

 いくら使おうが湖の水量は変わらないという訳だ。うん……いいとは言ったけど、それでもとんでもないやつだこれ。



 でさぁ……一番やばいのがこの下三つなのよ。

 この”枯れることなき自然”と”溢れ出る生命力”それから”尽きない魔力”。


 まず、”枯れることなき自然”はわたしの領地内、この湖周辺に生えている自然は枯れることがない。外から種を持ってきて育ててもその恩恵を受ける。花でなくとも野菜や果物と言ったものも対象となる。とんでもない。

 で、その”枯れることなき自然”のとんでもなさに拍車をかけているのが2つ目の”溢れ出る生命力”だ。これによって植物の成長速度が異常に早くなっていてむしり取っても1日くらい経てばまた生えるというとんでもなさ。

 しかもそれだけではなく、この”溢れ出る生命力”は植物に限った話ではない。動物や人間と言った生き物にも効果があって怪我とかの治りがこの領地内に居れば異常な速度で回復する。再生みたいなものである。


 で、極めつけには”尽きない魔力”。

 世界には当たり前のように魔力が存在している。体内に持つ魔力の他に自然界に存在する魔力もある。どっちにしても魔力なのは変わらない。

 普通魔法は体内の魔力を放出して扱うものだけど、自然界にある魔力を利用することも可能。場所にもよるけど空気中の魔力が多いけば多いほど術者の消費が減って魔法を扱いやすくなるのだ。

 で、自然界の魔力も少なからず植物たちに影響を与えている。1つの例を挙げるなら木だろうか。豊富な魔力を含有する木とかは普通の木と比べて燃えにくく頑丈である。


「……」


 なのでこの領域内にある木や草といった植物は普通と比べて強い。自然界の魔力も無限ではなく使えば当然消費されてしまうけど、地球で言う光合成だろうか? それを植物が行う際に魔力を放出するので自然が多いところほど魔力が豊富だったりする。

 こういった森の中は絶好の魔力スポットである。ただ魔力の影響はいいものばかりではなくて、魔物とかの敵対生命体にも良くも悪くも影響を与える。

 具体的なことは言わないけど、特殊個体はその魔力の影響を受けて生まれているとされている。まあ端的に言えば魔物も魔力で強化されることがあるということ。


 そんなとんでもないものが3つ重なっているこの場所は……うん。


<世界一のパワースポットですね>

「なんでこうなった……」

<別にいいじゃないかと提言します。あって困るものではありませんし、シルフィーはスローライフを望んでいるのですよね?>

「うん。ぶっちゃけのんびり過ごせたらそれでいいかなとは思ってる」

<でしたらこの場所は最適かと思います。人も寄り付きませんし、果物や野菜といったものもあります。ここでは取れないものは時々街に言って買ったりしているだけで暮らせます>

「確かに」


 あ、言われてみてば確かにそうか……。そう気づくわたしだった。




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