005:住処確保


「まずは基盤を作ろう」


 ということで魔の森ことマジカルフォレストを進んでいるとかなり好条件な立地を発見した。


「おー……でっかい湖ね」


 そう、森の中に大きな湖を見つけたのだ。先の方が見えないので池ではないと思う。こっちの世界の湖や池、沼とかの基準は分からないけれど。

 後で知ったのだが、最初に遭遇したフォレストウルフだっけ? あれの肉は美味しいらしくこの世界で一般的に普及されているらしい。もちろん、牛や豚と言った食用動物も居るらしいが、魔物の肉もよく使われているとのこと。

 なので、それを聞いた後すぐにフォレストウルフと戦った場所に戻って回収した。全部問題ない状態だったのでマジックボックスに収納した。


 あ、マジックボックスって言うのは闇属性魔法の中にある空間魔法の1つね。イメージとしてはなんでも入れられる魔法? しかもわたしの場合は時が止まっているかゆっくりになっているかのどちらかであり、温かいものや冷たいもの、新鮮なものなど、そのまま入れたり取り出せたりする。

 まあ、正確にはわたしの場合は上位互換にされている暗黒魔法なんだけどね。闇魔法の上級スキルが暗黒魔法である。これを取ると闇魔法はこれに統合されるみたいね。


「それにしてもここ……落ち着く」


 なんていうのかな? 神聖な感じがする。空気も澄んでいて非常に居心地がいい。わたしには神聖魔法の適性スキルがあるからそう言ったものには敏感だ。暗黒魔法の方も同じで、悪い感じ? そういったものにも敏感になってしまってるっぽい。


「聖力と言えばいいのかな。間違いなくここはそれで包まれてる」


 湖に何かあるのか……他の要因なのか。聖力の流れ方からして水底。湖の下に何かあるかも。


「どうするつもりもないけどね」


 暮らしやすいに越したこしたことはないしね。それに別に神眼使えば一発だろうし。


「この辺りでいいかな。えっと使えそうなスキルは……これかな。生成」


 自分の思い描いたモノを生成する。ただし生物は対象外。

 説明がざっくりし過ぎているけど、要するに自分が想像したモノを作り出すスキル。代償としてかなりの魔力を消費する。更に言うと生成するものによっても変動する。

 一番消費が少ないやつを作ってもそれでもかなりの魔力を持って行かれるというのがこのスキルの欠点というかデメリットなんだけど……。


「わたしの場合はメリットしかないのよね」


 理由は……もうわかると思うけどスキルにある”魔力無限”、こいつが犯人である。

 名前の通り無限の魔力になる。要するに上限もなく消費してもしても減らない。ただし魔力が抜けていく感覚はそのままなんだけどもね。


「いや、一応デメリットはあるわね」


 さっき言ったけど魔力を使うと何かが抜けていく感覚に襲われる。それはこの世界のだれにでもあることで常識である。

 この抜けていく感覚の正体は消費した魔力だということも分かっている。その感覚は消えないから力を使えば当然わたしも脱力する訳で。


「消費量のえぐいやつは控えておいた方がいいかもしれない」


 そもそも何がどれくらい消費するかまでは流石に分からないからなぁ。因みに脱力した時はその場にしばらくへたり込んだり、身体が動かなくなったりとかするらしい。ひどい場合は気絶する。ただ命に別状はないらしい。


「戦闘中とかにそれになったら死ぬね」


 確実に。

 でもわたしの場合は不老不死が付いているから死なないかもしれない。でも死ぬほど痛い感覚はありそうだから極力ダメージは負わない方針かな。というか好き好んで死にたくないよ。


「んーこういう場所に合うような家と言えば……ん!?」


 そこで勝手に神眼が発動する。発動した感覚があったので間違いない。

 それと同時に、1つの情報が浮かび上がる。それは地球……あっちの世界で見たことのあるログハウスだ。


「これって神眼さんが?」


 スキルをさん付けするのはおかしいけど、なんか意思があるっぽいんだよ……最初は気のせいと思ってスルーしてたけど。


「なるほど。確かにこれならぴったりかも。周りの木に合わせてっと……いい感じ」


 イメージ通り。

 後は生成をするだけなんだけど、どれくらい消費するんだろう、これ……一応周りに魔物の気配はないけど……。


「1つの家を作る……むむ」


 かなり持っていかれそうな予感。無限だから減らないけどそれでも消費する感覚はある訳で。最悪魔眼で何とかなるかな……これなら意識があればスキルを使えるし。余談だけど神眼も同じ。意識さえあれば使える。魔法も無詠唱なら使えるか。


「……問題なさそうかな」


 息を吸って集中する。

 立てたい場所の方向を向き、地面に手を付け神眼で思い描いたログハウスをイメージする。


「――生成!」


 がくっと身体が揺れ、何かが思いっきり抜けていく感覚に襲われ視界が揺らぐ。


「っ……大丈夫」


 襲ってきた脱力感は半端なかったが、気を失ったりとかその場で倒れたりとかへたり込んだりするレベルではない。少しだけ力の抜けた足に力を入れて立ち上がる。


「ふぅ……この感覚、あまりいいものではないわね」


 目の前に作られたイメージ通りのログハウスを見ながら1人愚痴る。

 周りに溶け込むような感じに作られた木製のログハウス。玄関ドアや窓、窓からちらりと見える内装。問題なく生成できたみたいだ。


「外観は問題なし……中ね」


 次は中を確認するため、玄関に向けて進む。


「おー……結構しっかり作られてるわね」


 これで張りぼてとかだったらどうしようかと思ったけど問題なさそう。そのまま中に入れば、家具も一式設置されており、そのまま暮らせるようになっていた。


「……もしかして家具とかも作ったから余計に?」


 生成は作るモノ毎に魔力を消費するから……うん、あり得るわね。

 内装まではイメージしてなかったけど、この辺りは神眼さんがやってくれたのかもしれない。ログハウスだけだったらも少しマシだったかな?


「まあどの道、家具は作らないといけないから結局は同じか」


 で、ざっと内装を見た感じ1階にキッチン、リビング、お風呂にトイレがあるっぽい。トイレはなんと水洗式……どうなってるのか。


「……なるほど、排水口とかはないからそこは異世界仕様になっているのね」


 見た目は普通に洋式の水洗式トイレだが、中にスライムが使われているとのこと。スライムは排泄物もそうだけど色んなものを分解してくれるので実にクリーンみたい。うわ、これ地球に欲しいね。

 レバーを引くと水が流れてそれでスライムの居るタンクに流される。水が流れる仕様は水の魔石を使っているようでレバーを引くことをトリガーに水を出す、と。


「でもわたしの場合、トイレの必要ないけどね……まあ誰かお客さん来た時用かな」


 ひとまず、もう少しログハウスの探索をすることにした。



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