015:今後のことと爆弾発言


「……」


 ぴた。


「……」


 ぴたぴた。


「えっと……どうしたの?」


 少し距離を開けようとするとそれに合わせて移動し、わたしにぴったりとくっ付いてくる少女。いや幼女? わたしよりも小さいし……え? お前も幼女だろって? 違いますが?!


<”シルフィー”の身体は人間年齢で言う9~10歳くらいの少女に該当します。幼女の範囲であると進言します>

「やかましい」


 ぐぬぬ。

 否定はできない。わたしのこの身体の身長は正確値は分からなかったけど、スールによって判明。驚くことに140すらなかったのである。

 

 139.5cm。

 おい。0.5cmとか悪意しかないだろ!? とその時は突っ込みました、まる。140近くとはしたけど、まさかギリ届かない身長になるとは。

 しかも不老不死の影響でこれ以上育たない。要するに身長も伸びないし、胸もぺったんこのままである。いや別に胸はいいんだけど……。


「まあいいや……今更考えたところでね」

「?」

「こっちの話よ」


 こちらを不思議そうに見上げる幼女。

 綺麗な金髪をしている。まあ、あそこで倒れていた時は汚れていたからくすんでいたけど、ちゃんと洗えばその綺麗さがはっきりと分かる。


――「捨てられた」


 ……それを聞いた時は衝撃を受けた。

 彼女を運んで程なくして目を覚ましたので、少し休ませてあげてから何があったのかを聞いたんだけど、その何か、というのがさっきのだ。


「シルフィーと居る」

「うん。それはいいのだけど、そうぴったりくっつかれるとちょっと動きにくいというか……」

「……少し離れる」

「うんうん。そうしてくれると嬉しいわ」


 捨てられた、と言う言葉を聞いた瞬間わたしはこのこの子を無意識に抱きしめて、頭をさすっていた。それで安心したのか分からないけど、泣いてしまったので落ち着かせるために何度も何度も繰り返したのだが……。


「それにしても……このわざわざこの森の下層に人を使って捨てるとか随分手の凝っていることで」


 名前もこの子には無く、付けてもらえなかったみたい。そのことにわたしは怒りを覚える。この世界が地球よりも治安が悪く、命も軽いってことは分かっているけど……。


「……ふう」


 捨てるくらいなら生むなって言いたいところだけども。

 それはさておき、そんな訳でこの子には帰る場所がない。街の孤児院に預ける、と言うのも1つの選択肢だけど、どうもそれは良くない気がする。気がするだけなんだけどね。

 そもそも……肯定する気はさらさらないけど、子供を捨てるのであればその辺にポイでもいだろう。街の外に出て人の居ないところに捨てるということもできた。

 なのにわざわざ人を使ってマジカルフォレストに……さらに言えば上層でも中層でもなく、深い方の下層へ捨てるとか何かある気がする。


 余程、殺したかったのか……はぁ。

 だから生きていたと知られたら何をしてくるか分からない。孤児院では守り切るのも難しいだろうし、他の子が被害に巻き込まれる可能性もある。

 下層まで来れる人を使ったのだからそれなりに費用もかかったはず。冒険者ではないと思うし、冒険者だったらそんなことしないだろう。と言うかしたら普通に罪に問われる。そんな悪に加担するような仕事をギルドが受けるとも思えない。

 こういうのお約束のテンプレだと裏ギルド的なのがあったりするよね。暗殺ギルドだとか、闇ギルドとか。まあこの世界にあるかは分からないけど、似たようなものはありそうだ。


 そういうところに頼めるということは……まあ捨てたやつは恐らく貴族じゃないかね。


「当分はわたしが面倒見ようかしらね」


 それがいい。

 少なくともこの場所なら安全だし、妖精族も居る。それ以前にここにたどり着ける存在なんて居ないだろうし。スールも言っていたけど。


「街に行くのは……うーん」


 またちょっと行く日が延びそうである。


「それならちょっと畑とか作るのもいいかもしれないわね」

「畑作るの?」

「ええ。一応種は以前街に行った時に数種類買っていたしね」


 見慣れた野菜とかもこの世界にあったし何とかなりそう。

 それにこの場所もチートって言えるからね……種植えて水あげたら1日で育つ……なんてことは流石にないよね? いや……うーん?


 そこは今は置いとくとして、間取りとかも考えないと。

 幸い、ここはかなり広いからそれなりの規模の畑が作れそうではある。でも大きく作ったところで人手の方が足りなそうだし何より消費しきれないのがもったいない。

 枯れないってことは分かっているけど、それでもやっぱりね? 妖精族も小さいから消費する量も少ないしなぁ。それに既に小さな畑を作っている妖精も居るし。


<で、あれば。栽培をして出荷するというのはどうでしょう>

「出荷?」

<はい。この世界も地球と同じで流通がなければ商品は届きませんし、購入することもできません。店舗で売ってる商品も元は生産者から買い取り、それを売っている訳です。その生産者として何処かに売ったり、もしくは自らお店を開いて売ると言うのもよいかと提言します>

「なるほど。それならお金も稼げるし」


 どこかに売るというのはいいかもしれないけど……うーん? 自分で売った方が儲かりそうな気はする。

 ……これは1つの案として考えておこうか。ただお店を持つというのはちょっと面倒だよね。わたしもいつも店に居れる訳じゃないし、もしやるなら従業員も必要か。


「……私、豊穣の神の加護ある」

「……ゑ?」


 よし! これからのことを1つ1つ固め行こうじゃないか、と意気込んだところで突然とんでもない爆弾が投下されたのだった。



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