鯨音

恋人と別れて以来、慢性的な頭痛とトラウマに悩まされる大学三年生、森崎千里。ある日、彼の前にむつ研究所の職員を名乗る吾田清二という男が現れる。彼はアフリカで無数の死者を出した感染症――大融解が、ウイルスなどではなくオゼビと呼ばれるクジラが起こしたものだと告げ、森崎の頭痛が、その鯨音に関係している可能性があると述べた。頭痛と過去から解放されるため研究協力を承諾した森崎は、同じように苦悩を抱える高校二年生の少女、北畝遥と出会う。しかし北畝は森崎を「偽物」と呼び、毛嫌うのだった。大融解を引き起こす五十二ヘルツの鳴き声――鯨音とその正体を探りながら、理由なく彼を嫌う北畝と折り合いをつけようとする森崎。そんなある日、鯨音を奏でる巨大クジラが発見され、研究所は騒然とする。久々の休暇に水族館を訪れた森崎は、…続きを読む