プロローグ④~魔力放出量判定~

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「桁違いに? それが白銀級冒険者になれた理由なの?」


 バーバラが興味津々といった様子で俺に問いかけてくる。

 その表情からは、信じられないという思いと、知りたいという好奇心の両方が見え隠れしていた。


「……大体そんな感じだ。フランシス、時間がないんじゃないのか?」

「あ、そうですね  では先輩、水晶に手を置いていただけますか?」


 俺が話を逸らすと、フランシスは我に返った様子で指示を出してきた。


「ああ、わかった」


 言われた通り、台座に置かれた水晶の上に手を置こうとした。


(これで魔力放出ができることがわかれば、晴れて魔法学校の生徒になれる)


 緊張のあまり手に汗が滲んでくる。

 手が滑らないようにしっかりと握りなおした。


(よし! いくぞ!!)


 気合を入れて水晶へ手を置く。

 すると、水晶の中心から小さな白い光が発生してほのかに輝く。


「こ、これって……」

「え!? うそ!? 本当に先輩が放出を!?」


 フランシスとバーバラが同時に声を上げる。

 俺はその様子をホッとしながら見守っていた。


(良かった。放出できる魔力があった。ありがとう、イージス)


 魂で繋がっている神器の盾に心の中でお礼を言いつつ、水晶から手を離す。

 水晶に残った光が、まるで雪のように舞っていた。


「あんなに小さな光始めて見たわ……」


 バーバラが呆然とした顔で呟く。

 確かに水晶の反応は非常に弱々しいものだったのかもしれない。

 ただ、無反応だった時のことを鮮明に覚えている俺はガッツポーズをしたいくらい興奮していた。

 それを悟られないよう平静を装って、フランシスへと話しかける。


「フランシス、水晶が反応したから試験は合格だよな?」

「……っ、い、いえ、まだ面接が残っています。先輩はあちらの扉から出ていただけますか?」


 指差された方を見ると、そこには入ってきた時とは別の扉があった。


「了解した」


 軽く返事をして、言われたとおり扉へ向かう。


「バーバラさん、水晶へ手を置いていただけますか?」

「……わかったわ」


 俺の背後ではバーバラがフランシスの指示に従って水晶へ手を載せようとしていた。


(危険が迫っている!!?? どこだ!!??)


 脅威にさらされた時のように直感が反応し、俺は即座に振り向く。


(どこだ!!?? どこからなんだ!!??)


 特に変わった様子はなく、バーバラが水晶に手を載せようとしているだけだった。

 しかし、その行動こそが危機的状況を知らせる合図だったのだ。

 俺が振り返ったときにはすでに遅く、バーバラの手が水晶に載る寸前だ。


「フランシス!! 下がれ!!」

(くっ……間に合ってくれ……!!)

「きゃっ!!??」


 俺は水晶を眺めていたフランシスを自分の後ろへ突き飛ばす。

 その直後、水晶が眩く輝き、部屋中が真っ黒な光に包まれた。


「イージス!!!!」


 俺は咄嗟に神器の盾であるイージスを召喚する。

 次の瞬間、耳をつんざくような爆発音が轟き、視界一面が真っ黒になった。


「ぐっ……!?」


 凄まじい衝撃が体を襲い、思わず声が漏れてしまう。

 光が収まって視界が徐々に色を取り戻していくと、部屋の中央にある水晶は粉々に砕け散り、辺りに破片が散乱しているのが見えた。


「なにが……起きたんですか……?」


 後ろでフランシスが呆然とつぶやく声が聞こえる。

 今の衝撃はイージスをもってしても完全に防ぐことができなかった。

 俺の服が所々裂け、フランシスに爆風が当たってしまったようだ。


(どれだけ強い爆発だったんだ……激昂したドラゴンの息吹よりも強い衝撃だったぞ……)


 その事実に驚きつつも、俺はイージスを戻す。


「ごめんなさい……私……私……」


 俺の前に顔面蒼白となったバーバラが体を震わせながら立っていたからだ。

 目から涙を零しており、とてもじゃないが話を聞けるような状態ではない。


(この少女も【事情持ち】か……まあ、そうじゃなきゃ試験を受けに来ないか……)


 バーバラの背後にあった扉は跡形もなく消え去っており、部屋の中心には大きな穴が開いていたのだ。

 水晶へ手を乗せただけでこんな惨状になってしまった。


(どうなっているんだ?)


 なぜか爆発の中心にいたはずのバーバラは無傷だ。

 何か恐ろしいものでも見たかのように震えているだけだ。

 なぜバーバラが無事なのかはわからないが、とりあえず今はそれどころではない。


「バーバラ、怪我はないか?」

「ひっ!? ごめんなさい……私……私は……」


 話を聞くためになるべく優しい声音で話しかけたつもりだったが、バーバラは短く悲鳴を上げる。

 視線を下げたまま、壊れたように謝罪の言葉を繰り返していた。


(この反応は間違いないな……しかし……)


 フランシスも事情がまったくわかっていないようだ。

 尻もちをついたまま動けずにいる。

 どうしたものかと思案していると、部屋の隅から声が聞こえてきた。


「なるほどのぉ……魔力放出過多とは聞いていたが、ここまでとは……」


 声の方へ振り向くと、ザックさんが感心するように頷いていた。

 俺はバーバラを気にしつつ、ザックさんへ視線を向けた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


気分転換に書いているため、次回更新は未定です。

1話程度の文量を書き上げたら更新いたします。

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