ラストプロローグ~バーバラの全力爆発~

最後のプロローグになります。

お楽しみいただければ幸いです


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「すぅー……はっ!」


 深呼吸を終えると、発動前にも関わらずバーバラの体から激しい魔力の波動を感じた。

 かつてないほど濃密で巨大な力が渦巻いていることがわかってしまう。


(これがバーバラの全力放出……!)


 百メートル級の戦艦タートルの砲撃を前にしてもこんなに恐怖を感じなかった。

 それほどのプレッシャーを感じると同時に、イージスが淡く光り始める。

 イージスから凄まじい量の魔力を供給されてきた。


(イージスもわかっているこれを防がないと王都が危ないことをっ!!)


 俺の背後には距離はあるものの、王都がある。

 ここで受け止められなければ、大爆発の衝撃が王都を襲うかもしれない。


(頼む!! イージス!!!!)


 バーバラの未来と背後の王都を守るため、限界まで結界を広げた。

 さらに、ありったけの魔力をイージスに流し込み、力を増幅させる。

 イージスの纏う光がさらに強く輝き、真っ白な光を放つ。


「うおぉおおおおおおおおおおおお!!!! 来い!!!! バーバラ!!!!」


 腹の底から叫ぶと、体中の魔力という魔力を体の中を巡らせた。

 視界が真っ白に染まるほどの眩い光が俺達を包み込む。


「行くわよラビさん!!!! 光よ私を照らして!!!!」


 バーバラが叫んだ直後、強烈な衝撃と共に全身が焼けるように熱い感覚に陥る。

 光が現れることはなく、過去最大規模の爆発が俺を襲っていた。


(これほどとは……くっ!!??)


 俺は歯を食いしばって、押し寄せてくる暴力的な力に耐え切れない。

 今までこの盾が受けてきた攻撃の中でもトップクラスの威力だ。

 気を抜くと、すぐに吹き飛ばされてしまいそうだ。


「ぐううううぅぅぅぅうう…………ッ!!!!」


 全身の骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。

 しかし、この魔法をなんとかしないと、後ろにある王都に被害が出てしまう。


(すまないバーバラ……俺の練度が足りないらしい……くっそぉおおおおお!!!!)


 俺は受けきることを諦め、爆発そのものを上空に向かって解き放つ。


「うらっあああああああああ!!!」


 俺が叫ぶと同時に、とてつもない轟音と共に、頭上に広がっていた雲を吹き飛ばした。

 上空で爆発したことにより、地上へ突風を吹かせる。


「はあっ……はあっ……こうすることしかできなかった……」


 俺は息を切らしながら、周囲に異常がないことを確認した。

 バーバラの様子を見ると、肩で大きく息をしており、膝が震えてしまっていた。

 魔法の行使を終えて疲れ切ってしまったのだろう。

 それに、俺が防ぎきれなかったことに落胆していると思われる。


(あれだけ豪語してこのざまか……我ながら情けない……)


 俺にできる最大限のことをやったつもりだが、完全に防ぐことができなかった。

 ここが魔法学校だったら、目も当てられない結果だ。


(バーバラには申し訳ないな)


 俺が考え込んでいると、バーバラが俺をめがけて走ってくる。

 顔が見える位置まで近づくと、そこには今にも泣き出しそうなバーバラの顔があった。


「すまない、俺は──ぐはっ!?」


 謝罪を口にしようとした俺へバーバラがおもいっk抱きついて来る。

 その顔は涙で濡れており、俺の肩に顔を埋めると嗚咽を漏らし始めた。

 バーバラは必死に感情を押し殺しているように小刻みに震えている。


(防ぎきれなかった俺の責任だ……)


 きちんと謝るために口を開こうとした時、バーバラが勢い良く顔を上げた。


「凄い!! 凄いわラビさん!!」

「…………え?」


 涙を頬に伝わせながらも、満面の笑みを浮かべるバーバラ。

 まさかの反応だった為、俺はその意味がわからなかった。

 何がそこまで嬉しいのか理解できない。

 俺からしたら失態以外の何者でもないと思う。


「俺は受け止めきれなかったんだぞ? 学校なら天井が吹き飛んでしまう」

「屋外なら私が魔法の練習をしても問題ないってことでしょう!?」

「それは、そうかもしれないが……」


 俺が言い淀んでいると、バーバラが俺の胸に両手を添えて、上目遣いをしてくる。

 その瞳は潤んでおり、頬は少し赤くなっているように見えた。


「私の爆発を逃がせるなんて白銀級冒険者って本当に凄いわ!!」


 バーバラは俺の手を取ると、目をキラキラと輝かせて見つめてくる。

 その表情からは尊敬の念が溢れんばかりに伝わってきた。


「引退したから元なん──」

「それでそれで!! 上に受け流すのはどれくらいの間隔でできそうなの!?」


 俺の言葉を遮るように、バーバラが鼻息荒く詰め寄ってくる。

 眼前まで接近しているバーバラはかなり興奮しているようだ。


(そんな顔をされたら何も言えないな……)


 俺は若干呆れつつも、バーバラの肩を掴んで引き離す。


「受け流すだけなら造作もない。いくらでも練習すればいいさ」

「ほんとに!? それじゃあもう一回お願い!!」


 意気揚々と杖を構えるバーバラ。

 やる気に満ち溢れた表情を見る限り、相当嬉しいようだ。


(今まで練習したいのに我慢していただろうからな)


 魔法を使いたいのに使えないというジレンマにずっと耐えてきたんだろう。

 そんな思いを知っているからこそ、俺はバーバラの要望に応えてやりたい。


「一回と言わず、何度でも受け流してやる。全力で練習するといい!」


 俺の言葉にバーバラは満面の笑みで頷くと、大きく息を吸い込んだ。


「よーし! 全力でいくからね!」


 バーバラは嬉しそうに胸の前で杖を縦に構える。


「水よ現れなさい!!」


 バーバラが振り抜いた腕に合わせて、濃厚な魔力の塊が爆発した。


(さっきよりも強い……気分で威力が変わるのか……)


 俺は苦笑いを浮かべながら、爆発をイージスで受け流す。

 その後、バーバラが満足するまでひたすら爆発を受け流し続けるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回から本編が始まります。

書き上げ次第更新いたしますので、お待ちいただければ嬉しいです。

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