第15話~下級魔法学校訓練場~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「俺は嬉しいが……いいのか?」


 そう尋ねると、アシュリーは笑顔で頷いた。


「はい、もちろんです」

「ありがとう……お願いします」


 俺が頭を下げると、アシュリーは嬉しそうに微笑んだ。


「それでは始めましょうか、まずは……杖はありますか?」

「杖? 杖は……すまない。教えてもらうとは思っていなくて」


 俺は自分が手ぶらであることをアシュリーに謝罪した。


(しまったな……)


 まさか講義を受けることになるとは思っていなかった。

 何も準備をしてこなかったことを後悔する。

 だが、そんな俺を見てアシュリーはクスリと笑う。


「意地悪なことを言ってすいません。ラビさんに杖を持つ習慣が無いのはわかっています。どうぞ」


 アシュリーが差し出してきたのは、買ったばかりの俺の杖だった。

 長さは30センチほどで、太さは俺の親指と同じくらいある。

 持ち手の部分には、【ラビ】と彫られているので俺の物で間違いない。


「どうしてこれを?」

「部屋に伺ったときに、机の上に置いてありましたから」


 どうやら俺の部屋に来てくれたときに回収してくれていたようだ。

 本当に気が利く。


「助かるよ、ありがとう」


 礼を言って、アシュリーから杖を受け取る。


「魔法使いなら、常に杖を携帯するのが基本ですからね」

「忘れないようにする」


 俺がそう言うと、アシュリーはコホンと小さく咳払いをした。


「……では改めまして、最初は魔法の発現についてお話ししたいと思います」


 俺は頷くと、姿勢を正して聞く態勢に入る。


「魔法とは、体内にある魔力を使って、世界に干渉することで発生します」


 アシュリーはそう言いながら杖を振ってみせた。

 アシュリーの持つ杖の先端に光が灯り、宙に浮かび上がる。

 すると、空中に光でできた文字が俺の前まで浮遊してきた。


「こんな風に、魔力を変換させた現象の総称が魔法と呼ばれます」


 アシュリーがもう一度杖を振ると、空中の文字が消えた。


「なるほど、そういう括りなのか」


 俺は感心した。

 魔法についての知識がなかった俺にとって、アシュリーの説明は非常にわかりやすく、理解しやすいものだった。


「魔法の基礎となる、四大元素と呼ばれるものがあります。ご存知ですか?」

「火と水、土に……風か?」

「正解です」


 アシュリーが再度、杖を振るうと、今度は俺を囲むように4つの色が異なる光の玉が現れた。

 4つの色はそれぞれ、火の赤、水の青、土の茶、風の緑になっていた。

 アシュリーは答えるのに戸惑った俺を笑うことなく続ける。


「そして、得意な属性は生まれた時に決まっているとされています」

「生まれた時に?」

「そうです。今日はラビさんの得意な魔法の属性を調べたいと思います」

「どうやって調べるんだ?」


 疑問を口にする俺に、アシュリーはどこからか一枚の白い紙を差し出してきた。


「この紙へ魔力を放出すれば、得意な色が浮かび上がってきます」


 手渡された紙に目を落とす。

 何も書かれていない真っ白な紙だった。


(これが適性を調べるための紙?)


 紙をジッと見つめていると、アシュリーがクスリと笑う。


「ラビさん、紙に魔力を放出してみてください」


 アシュリーの言葉に従い、俺はゆっくりと手のひらを前に出して、意識を集中する。

 自分の中の魔力が手に集まってくるのを感じた。


「そろそろ紙が反応してくるはずですよ」


 アシュリーの言葉を合図に、俺の持っている紙が白く光り始める。

 やがて、真っ白だった紙がそのまま発光を続けた。


「なるほど……だから、学校長は僕にラビさんを……」


 俺の持っている紙を見つめていたアシュリーがボソッと呟く。


「ん? 何か言ったか?」


 俺が尋ねると、アシュリーはハッとした表情になる。


「なぜラビさんと仲が良いフランシスではなく、僕が指導役になったのか疑問に思っていたんです」


 アシュリーは真剣な表情で俺を見つめる。


「でも、今のでわかりました。ラビさんは珍しい光属性の持ち主です」

「……光属性?」


 初めて聞く言葉だった。

 思わず聞き返すと、アシュリーは頷く。


「はい、光属性です。一般的にはあまり知られていない希少な属性のひとつなんです」

「希少なのか?」

「使える者が少なく、光属性の魔法は他の魔法に比べて難易度が高いんです」

「そうなのか?」

「はい、なので光属性の使い手は貴重な存在なんですよ」


 アシュリーはそう説明しながら、持っていた杖を振った。

 しかし、今度は何も起こらない。


「あちゃー……失敗ですね」


 アシュリーは恥ずかしそうに笑いながら頭を掻いた。


「失敗したのか?」

「ええ、魔法が発動しませんでしたね」


 アシュリーの言葉に俺は首を傾げる。

 発動しなかったといいながら、アシュリーが全く気にしていないように見えた。

 俺が不思議そうな顔をしていることに気付いたのだろう。

 アシュリーがもう一度杖を構えた。


「魔法を使う上で、もっとも重要なものは何だと思いますか?」


 アシュリーが問いかけてくる。


「そうだな……魔力とか、詠唱とかじゃないのか?」


 俺が答えると、アシュリーは嬉しそうに微笑んだ。


「それも大事ですが、もっと大事なものがあります」


 アシュリーはそこで言葉を区切ると、俺の顔をじっと見つめる。


「それは?」


 俺は続きを促す。

 アシュリーは頷くと、話を続ける。


「魔法を発動させるために一番必要なもの……それは意志の強さです」

「意志の……強さ?」


 オウム返しに尋ねた俺に、アシュリーは頷いてみせた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


お読みいただきありがとうございました。

次回も書き上げたら更新させていただきます。

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最硬の魔法使い〜史上最硬の盾使いは最高位の冒険者を無理矢理引退して憧れの魔法を習得したい〜 陽和 @akikazu1012

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