第14話~魔法に対する防衛術~
ご興味を持っていただきありがとうございます。
この話も楽しんでいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
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教室の中に入り、辺りを見渡す。
(なかなか良い雰囲気だな)
落ち着いた色合いの木材で作られた机と椅子。
窓の外に広がる緑豊かな景色。
日の光が差し込み、室内を明るく照らしている。
俺は一通り見回すと、アシュリーに声をかける。
「アシュリー、俺の授業はいつからなんだ?」
「来週からですね。今週は新入生のオリエンテーションがあり、在校生は春休み中です」
「なるほどな……ちなみになんだが、カリキュラムのような物はあるのだろうか?」
「カリキュラムですか?」
アシュリーは不思議そうに首をかしげる。
「ああ、どんな授業をすればいいのか、まったくイメージが湧かないんだよ」
「一応教科書のようなものがありますが、ご覧になりますか?」
「見せてくれ」
頼むと、アシュリーが教室の後ろにある棚から一冊の本を取り出す。
「これが去年使われていた【魔法防衛学】の教科書です」
手渡された本をめくってみると、各属性魔法に対する防衛方法が書かれていた。
火属性魔法への対処法として、水属性魔法で消火する方法や、土属性魔法による壁を作って防ぐ方法などが載っている。
ただ、どれも基本的な対策ばかりで、実戦的な内容ではなかった。
(なんだこれは? まったく役に立たない内容ばかりじゃないか)
教科書を読みながら、心の中でため息をつく。
この教科書は理論だけを詰め込んだもだ。
実際に魔法を防ぐ時には、実践経験がものをいう。
それなのに、この本ではその部分が完全に抜け落ちている。
これでは、いくら本から知識を得たところで意味がないだろう。
「アシュリー、これは本当に使えるのか?」
俺は眉をひそめつつ、アシュリーに問いかける。
するとアシュリーは難しい顔をして考え込んでしまった。
「…………すいません、僕の口からはなにも」
しばらくして口を開いたアシュリーの言葉は歯切れが悪かった。
どうやらアシュリーもこの教科書が抱えている問題点を認識しているようだ。
アシュリーが困ったような表情で続ける。
「前にこの授業を受け持っていた方が魔法界隈では著名な方でして……」
「問題のある人なのか?」
俺が尋ねると、アシュリーは頷く。
「そうですね……はい。優秀な魔法使いではあるのですが……その……性格に少々難がありまして……」
アシュリーは言いづらそうにしている。
悪口を誰かに聞かれたら立場が危うくなるほどの人なのだろう。
「そうか、わかった。なら一つだけ聞かせてくれ、その人は今どこに?」
「昨年度末に学校長との仲違いで、別の魔法学校に転勤されました」
つまりもうここにはいないということか。
それでも陰口を誰かに聞かれるのを恐れるアシュリーの様子から、その人物の性格の悪さは伝わってきた。
俺はそれ以上尋ねることをやめた。
「教えてくれて助かったよ、ありがとう」
お礼を言うと、俺は魔法防衛学の教科書を閉じた。
「そうなると俺は【0】から授業のことを考える必要がありそうだな」
「すみません、力になれなくて……」
アシュリーが申し訳なさそうに言う。
「気にするな、自分でなんとかするよ」
俺はそう言ってアシュリーの肩をポンと叩く。
おそらく、俺が授業をするとなると、ほとんどが実践方式になるはずだ。
(俺が教壇に立ってうんちくを垂れるなんて想像できないからな……)
一ヵ月ほど前まで冒険者だった俺に求められているのは、実践的な指導のはずだ。
そうじゃなかったら、いきなり俺へ教師をしろなんて無理な話だ。
(さて、どうしたものか……)
顎に手を当て、考え込む。
(……そうだ!)
そこで、ふと思いついたことがあった。
「授業で実技をするとき、俺はどの場所を使えばいいんだ?」
「それなら、昨晩に僕と会った訓練場が使えますよ」
俺の疑問に対して、アシュリーは即答してくれた。
「そうなのか?」
「ええ、僕が管理していますので」
「じゃあそこを借りることにしよう」
「わかりました。ラビさんが優先的に使えるようにしておきますね」
「助かるよ、ありがとうな」
礼を言うと、アシュリーは少し照れたように頬をかいた。
「いえいえ、これも仕事ですから」
その後、俺はアシュリーに校内の施設について説明を受けた。
まず、校舎の隣にある大きな建物が生徒用の図書館らしい。
中には魔法に関する書物や、魔法の歴史書、魔法の使い方が書かれた指南書などがあるそうだ。
次に魔法関連の店が並んでいる区画があるという。
そこは学生向けの魔道具やポーションなどを扱っている店で、品揃えも豊富だという話だ。
最後に確認のため、俺とアシュリーは訓練場に向かう。
「学校の中なのに施設が豊富なんだな」
「基本的に生徒が校内だけで生活できるようになっているからですね」
確かに言われてみれば納得できる話だなと思った。
全寮制の魔法学校だから、生徒たちが日常生活でも困ることがないというのは良いことだ。
魔法を習うには最適な環境だろう。
「なるほどな、色々と参考になったよ」
「いえ、お役に立てたのならよかったです。着きましたね」
アシュリーが立ち止まったので、俺も立ち止まる。
「昨日は暗くてわからなかったが、こんなところだったのか」
目の前には白い壁に囲まれた広場のような空間が広がっている。
地面には芝生が生えていて、とても開放感があった。
「ラビさん。今週の講義を始めてもよろしいですか?」
隣に立つアシュリーがいつの間にか杖を取り出していた。
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お読みいただきありがとうございました。
次回も書き上げたら更新させていただきます。
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