第13話~アンジェロの目的~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 訓練所から職員寮にある自分の部屋に戻った俺は、ベッドに横たわりながら、今日の出来事を思い返す。


(まさかアンジェロが上級魔法学校を蹴ってこっち下級魔法学校にきていたとは……)


 上級を選ばず、下級魔法学校に来たアンジェロにははっきりとした目的があるはずだ。


(あいつが何を考えているのか俺にはわからないな……)


 有り余る魔法の才能を持て余すようなアンジェロの行動が俺には理解ができない。

 なぜアンジェロはわざわざ下級魔法学校に入学してきたのか。


(俺には関係ないか……寝よう)


 思考を放棄するように目を瞑り、そのまま眠りにつくことにした。


── 翌朝──


 朝の日課をこなし、出勤するために部屋を出るとそこにはアシュリーが立っていた。

 アシュリーは俺に気づくと深々と頭を下げる。


「おはようございます」

「おはよう、どうしたんだ?」

「ラビさんの研究室と講義の教室を案内いたします」

「ああ、助かる」


 手続きをした時に説明を受けたのだが、研究室は俺の個室となっているらしい。

 ただ、場所についてはうろ覚えだったので、アシュリーが案内してくれるのはありがたかった。


「では行きましょう」


 俺たちは一緒に歩き出す。


「まずは研究室ですね」


 歩きながら、アシュリーは説明を続ける。

 アシュリーに案内され、俺は自分の研究室に向かう。

 研究室は三階建ての建物だった。

 一階が魔法に関する書物が置かれた図書室兼資料室になっており、二・三階が魔法の研究を行う部屋になっているようだ。


「ラビさんの研究室は二階の一番奥……こちらですね」


 二階の一番奥に辿り着くと、そこには扉があった。

 アシュリーはその扉の前まで歩くと立ち止まり、俺の方を振り返る。


「ここが、今日からあなたが使う研究室です」

「わかった」


 俺は頷くと、アシュリーに促されるように扉の前に立つ。

 扉の上には確かに『ラビ・グライダー』と書かれた札がかかっている。


(ここがこれから使う研究室か……すごいな……俺、魔法使えないのに良いのだろうか……)


 なんだか感慨深い気持ちになりながら、扉を開ける。

 部屋の中に入ると、そこは広い空間になっていた。


(おおっ!)


 部屋の内装を見て思わず感嘆の声が漏れる。

 床から天井までは五メートル以上ありそうだ。

 床一面に絨毯が敷かれており、壁際には空の本棚が並んでいる。

 また、部屋の隅にはソファーとテーブルが置かれていた。

 俺は部屋の中を見回す。


「悪くない」


 部屋はきれいに掃除されており、清潔感がある。

 俺が感動していると、背後から笑い声が聞こえてきた。

 振り返ると、アシュリーが楽しそうに微笑んでいる。


「どうした?」

「いえ、あまりにも嬉しそうにしているのでつい……」


 どうやら俺の態度が面白かったらしい。

 確かに、今の俺はかなりテンションが高かったと思う。


「すまない、少し興奮していたようだ」

「いえいえ、気にしないでください。次は教室と演習場にご案内しますね」


 そう言うと、アシュリーは俺を先導するように歩き出した。

 アシュリーについていき階段を降りると、誰かが登ってくる。

 階段の途中でその人物と目が合った。


「先輩、おはようございます」

「おはよう、フランシス」


 挨拶を交わしながらやってきたフランシスは、俺たちの方に近づいてくる。

 本や資料を両手で抱えており、重そうにしている。

 そんな様子を見て、俺はフランシスに声をかけた。


「手伝おうか?」


 俺の言葉に驚いたのか、フランシスは目を見開く。

 だがすぐに笑顔になり、顔を左右に振る。


「これは私の授業準備なので大丈夫ですよ!」


 フランシスは俺から逃げるように階段を駆け上がっていく。


(何か気に障ることを言ってしまっただろうか?)


 立ち去るフランシスの背中を見送りながら首を傾げる。


「彼女は異例の早さで教師になったので、気を張っているんですよ」


 考え込む俺に、アシュリーが補足してくれた。


「異例の早さ? 俺はいきなり教師だったぞ?」


 疑問を口にすると、アシュリーは苦笑いする。


「白銀級の冒険者だったラビさんは例外中の例外ですよ」


 アシュリー曰く、冒険者が教師になるには厳しい試験をいくつも突破しなければならないらしい。


「僕でも2年かかってようやく去年合格しましたが、彼女は一年かからず教師の資格を獲たんです」

「なんか悪いな……」


 アシュリーの説明を聞き、申し訳なくなってくる。

 俺はそんな試験の存在さえ知らずに教師になってしまった。


「謝らないでください。僕やフランシスでも冒険者だった時の功績で免除された試験もありますから」

「そうなのか……」

「ええ、だからあまり気にしないでくださいね」

「わかった、ありがとう」


 感謝の気持ちを伝えると、俺はアシュリーと一緒に再び歩き出す。

 しばらく歩いていると、俺たちは目的の場所に到着した。


「ここが【魔法に対する防衛術】の教室になります」


 アシュリーが扉を開けてくれたので、中に入る。

 教室の中は広く、黒板があり、その前に教壇が置かれている。

 後ろには棚が置かれていて、そこには分厚い本が並んでいた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


お読みいただきありがとうございました。

次回も書き上げたら更新させていただきます。

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