第11話~王都近郊爆発事件~
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この話も楽しんでいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
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「なるほど、この記事か」
俺は教員用の寮の共有スペースで新聞を手に取り読み始める。
そこには、王都の近郊で謎の爆発音が数日間にわたって発生していることが書かれていた。
(俺がバーバラの爆発を受け止める練習をしていた日だ)
冒険者ギルドの職員が調査を行ったが、真相は掴めないままらしい。
(毎日場所を変えたし、人のいない上空へ吹き飛ばしたからな……記事になるのは当然か)
王都の近くでこんなことが起こったら誰だって不安になる。
もう少し離れた所へ行く必要があったようだ。
(でも、あんな音と爆風を隠せるような場所なんてどこにあるんだ?)
「あの……先輩?」
そんな考え事をしていると、後ろから声がかけられた。
振り向くと、そこにいたのは茶色の髪を肩口まで伸ばし、眼鏡をかけている女性。
フランシス・ミラーだった。
日中と違い、長い髪を三つ編みにまとめていた。
それにローブも身に着けておらず、薄緑色のシャツとスカートという格好をしている。
普段の魔法使いの姿しか知らない俺からすると、珍しい光景に感じられた。
そんなフランシスが俺の手元の新聞を見るために顔をのぞかせてきた。
「それ、少し前の新聞ですよね? 何か調べものですか?」
「ん、いや、何もしていない」
「本当に……?」
疑わしい目つきで見られる。
まるで俺が悪いことをしているかのように。
(あの場にいたフランシスに隠しても無駄か)
フランシスはバーバラが判定水晶を爆発させたあの場にいた。
聡明なフランシスなら、俺が読んでいた記事とその内容を結び付けて考えるだろう。
変な誤解をさせる前に、きちんと説明しておこう。
「バーバラは魔力を放出させると爆発を起こすんだ。それを防ぐ練習をしていた」
「そうだったんですね……って、えぇえ!?」
俺の言葉に驚くフランシスだが、構わず続けることにする。
「完全に無力化することができないから、上空に打ち上げることで被害を少なくしているんだ」
「先輩が無力化できない威力なんですか?」
フランシスが目を丸くして尋ねてくる。
俺はそれに対して頷くと言葉を続ける。
「あぁ、そうだ。戦艦タートルの砲撃よりも威力がある」
「小さい島なら一発で吹き飛ばすあの戦艦タートルの砲撃よりも……ですか?」
俺はそうだと言わんばかりに頷ずき、さらに付け加える。
「そのうえ、ほとんど間を置かずに連射が可能なんだ」
俺の言葉を受け、フランシスの顔が驚きで歪む。
おそらく、頭の中で想像しているのだろう。
島を消し去る爆発源がこの学校の敷地内や周辺で何度も連発される様を。
想像するだけで恐ろしい光景だ。
「信じられないだろうが事実だ」
「う……そうなんですね」
俺の言葉にフランシスは頷くことしかできなかったようだ。
その顔には困惑の表情が浮かんでいる。
俺としても、まさかフランシスがそこまで動揺するとは思わなかった。
「フランシス、バーバラは俺のいないところで魔法を使わないと約束を──」
──ドーン
俺の言葉を遮るように小さい重低音の爆発が辺りに響く。
俺とフランシスはその衝撃と音に驚いて思わず窓の外を見た。
「先輩!?」
「バーバラか!? そんな馬鹿な!!」
そこには夜の空にはっきりと土煙が天に登っている様子が確認できた。
俺は慌てて窓へと駆け寄る。
「フランシス、あっちには何があるんだ!?」
「えっと……訓練場のはずですが……」
バーバラは簡単に約束を破るような少女ではない。
数日間一緒にいただけだが、それだけは確信を持って言えることだった。
(だとすればどうして!)
嫌な胸騒ぎを覚えたため、俺はフランシスの手をつかんだ。
「頼む! 案内をしてくれ!」
「は、はい! こっちです!」
俺たちは走って教員用の寮から出た。
(バーバラじゃないことを祈るしかない)
心の中でそう願いつつ、フランシスの後を追う。
途中ですれ違う学生たちが驚いているが、気にしている場合ではなかった。
「ここです!」
そのおかげで、五分もしないうちに目的地に到着することができた。
訓練場は石畳が敷かれた広大な敷地だった。
俺たちが立っている場所からは、地面が円状に抉れてクレーター状になった広場のような場所がよく見える。
巨大なクレーターの側には初級魔法学校のローブを着た少女が立っていた。
燃え盛るような赤毛に猫のように大きな目を持つ美少女だ。
「バーバラ……」
地面には大きな亀裂が入っており、ところどころ焼け焦げたような跡も見られる。
明らかにバーバラが魔法を使ったことをうかがわせる状態だった。
「こ、これを……バーバラさんが?」
フランシスが引きつった顔でそう呟く。
絶句するフランシスをよそに、俺はゆっくりとクレーターに近づいていく。
そこでは、バーバラが俯いて立ち尽くしていた。
その表情は髪に隠れて見ることはできなかった。
「おい、バーバラ」
「…………」
俺が呼びかけてもバーバラから返事が返ってくることはなかった。
そんな様子に違和感を覚えるも、まずは何があったのかを確認しようと決心し、近づくことにした。
「こんなに危ないやつがこの学校にいていいはずないでしょう!?」
バーバラのそばに寄ろうとしたとき、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。
声の主を探すと、見覚えのある顔が二つ見えた。
蒼髪のアシュリーと、金髪のアンジェロだ。
アンジェロが教師であるアシュリーへ何かを抗議しているようだった。
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お読みいただきありがとうございました。
次回も書き上げたら更新させていただきます。
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