プロローグ③~下級魔法学校学校長~
ご興味を持っていただきありがとうございます。
楽しんでいただけたら幸いです。
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「ザックさん!?」
俺は見知った顔の老人を見て、思わず叫んでしまった。
この老人は名をザック・バーンズといい、かつて俺が所属していたパーティーのリーダーだった男だ。
超優秀な魔法使いで、白銀級の一つ下の階級である黄金級の冒険者だった。
(こんなところで再会するなんて……)
トレードマークの白くて長い髭や、古びたローブを羽織っているところは変わらない。
見た目は70代後半くらいに見えるが、実年齢は100を超えているはずだ。
「久しぶりじゃな、ラビよ」
そう言って俺に笑いかけてくる。
「ザックさんも元気そうで何よりです」
俺も軽く挨拶を交わす。
久しぶりに思ってもみなかった人との再会で、自然と顔がほころぶ。
「お主の活躍はよく耳にしておるよ」
「ありがとうございます。ザックさんのご指導の賜物です」
「ホッホッホ。盾職で白銀級に上り詰めたお主にそう言ってもらえると嬉しいわい」
ザックさんは嬉しそうに微笑みながら頷いていた。
「それで、ザックさんはどうしてここに?」
俺は当然の疑問を口にする。
「うむ……実はな、儂は今ここの校長をやっておるのじゃ」
「え!? そうだったんですか!? 知りませんでした」
(全然知らなかった……魔法学校の情報は機密だらけだから当然か)
俺は驚きつつも、納得した。
ザックさんなら魔法学校の校長になっていても不思議ではない。
むしろ、どうして上級魔法学校の校長ではないのかと聞きたくなるほどだ。
「あの~、学校長、どうしてここへ?」
「おお!! そうじゃったな!」
俺とザックさんが話をしているところに、またもやフランシスが割り込んできた。
フランシスの質問で何かを思い出したザックさんは一枚の紙を取り出した。
「受験者がいるのに、まったく来ないから迎えに来たんじゃよ。まさか、本物のラビだとは思わなんだ」
ザックさんが懐から出した紙には、俺とバーバラの名前が書いてあった。
俺が書いたものと同じ書体なので、受付にあった紙から転写されているのだろう。
(魔法っぽくてカッコイイ。どんな仕組みなんだろうか)
ザックさんの持っている紙を眺めていると、フランシスが慌てた様子で時計を見る。
「すみません!! もうこんな時間でしたか!」
「そうじゃ、受付時間は終了した。今回の受験者はラビとバーバラ嬢の二名だけじゃ」
「わかりました! すぐにお二人を魔力検査室へ連れて行きます!!」
ザックさんに促され、フランシスは慌てて杖を取り出して俺たちに向かって振ってきた。
「きゃっ!? 体が勝手に!?」
急にバーバラの体が浮き、奥の部屋へ滑るように飛んで行く。
「俺もあんな風に移動したい。フランシス、早く魔法をかけてくれ」
期待をしながらフランシスへ催促する。
しかし、フランシスはなぜか困ったように首を振った。
「すいません。私では先輩の魔法抵抗力を貫通できなかったので、一緒に歩いて行きましょう」
「…………わかった」
俺は渋々納得して、歩き出したフランシスの後ろについていく。
「ラビよ。また後で会おう」
「はい、またあとで」
俺はザックさんへ挨拶をしてから退室した。
部屋の奥は広い部屋があり、天井からはシャンデリアのような照明器具がぶら下がっている。
床も大理石のようなものが敷かれていて、歩くたびにコツコツという音が響く。
「ねえ、どうして私だけ飛ばされたわけ?」
「ラビさんにも同じ魔法をかけたんですが、効果がなかったんです」
「なによそれ……そんなの有り得るわけ?」
中央には飛ばされて髪の毛がぼさぼさになったバーバラが不満そうに立っていた。
なにやらフランシスが話をしているが、俺はある物に全神経を集中させている。
(魔力測定水晶か……)
バーバラの横には、手のひらよりも少し大きな水晶が載った台がある。
(ずいぶん久しぶりだな)
俺は自分へ魔法の適性が無いと判断してきた水晶を見て懐かしく思った。
これは魔力を放出できる限界量を測定する水晶。
15歳の時計測したとき、俺の測定結果は【無】だった。
(今なら大丈夫なはず……イージスの魔力が使えるはずなんだ)
全く魔法を使えないと判明したとき、俺は絶望し、もう何もできないと思った。
だが、今は違う。
(俺には神器イージスの魔力が宿っている……頼むぞ)
これから測定だと思うと、心臓が破裂するんじゃないかと思うほど高鳴る。
「あの……先輩? 大丈夫ですか? ここで反応がないと……その……」
「無反応者は不合格なんだろう? それくらいわかっているさ」
心配そうに俺を見つめるフランシスを安心させるように微笑む。
このやり取りを聞いていたバーバラが髪の毛を直す手を止めた。
「無反応者なんているの? 誰だって魔力を放出できるんでしょう?」
「ええ、一般的にはそう言われています。ただ、ラビさんは……」
フランシスはそこで言葉を止め、俺の方を伺ってくる。
「大丈夫だ」
俺がそう言うと、フランシスは頷いた後、話を続ける。
「普通はどんな人でも少しは放出できます。ですが、ラビさんは世界で唯一、体の外に魔力ができない人なんです」
「なにそれ!? そんな人間聞いたことないわよ!?」
「そうだと思います。ラビさんは……その……」
気まずそうに俺の表情を伺ってくるフランシスを見て、水晶へ伸ばしていた手を一旦引っ込めた。
「俺は体の外に魔力が放出できない代わりに、体の内側で使える魔力が桁違いに多いんだ」
これ以上フランシスに説明させるのも酷だと思い、俺は自分から説明した。
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ここまで読んでいただきありがとうございました。
気の向いた時に綴るため、1話程度の文量を書き上げたら更新いたします。
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