プロローグ⑤~水晶爆発の理由~

ここまで読んでいただきありがとうございます。

この話もお楽しみいただければ幸いです


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あの……ザックさん、これって一体どういうことなんですか?」

「いや、儂にも原因はわからん。魔力判定の時に水晶を何度も爆発させた少女がいると聞いていただけじゃ」

「そ、そうですか……」


 バーバラが水晶を爆発させた原因は博識なザックさんでも不明らしい。

 ようやく立ち上がったフランシスが恐る恐るといった様子で口を開いた。


「あ、あの……学校長? これ……どうされるんですか?」


 フランシスが壊れた部屋を見ながら尋ねる。

 ザックさんは持っていた杖を床にカツンと打ちつけた。


「【修復せよ】」


 その瞬間、ザックさんの杖を中心に淡い光が放たれる。

 周辺に散った破片や粉塵がひとりでに動き出し、次々と元の場所へ戻っていった。


「すごい……!」

(ザックさんの魔法は凄まじい……)


 俺とバーバラはその光景をみて目を輝かせていた。

 まるで時間が巻き戻ったかのような光景だったからだ。

 やがて、部屋は何事も無かったかのように綺麗になっていた。


「ふぅ……これでよし、と。もう大丈夫じゃぞ、お嬢さん」

「はい……ありがとうございます……」


 ザックさんに声をかけられたバーバラは、まだ少し震えながらお礼を言っていた。

 修復を終えたザックさんは俺へ向き直る。


「さて、と……本来なら面接で話を聞くんじゃが……形式だけじゃし、ラビは合格でよいぞ」

「ほ、本当ですか!?」


 まさかの合格宣言に、俺の声は自然と上ずってしまった。

 これで俺が心から望んでいた魔法の勉強が始められるのだ。


「うむ。面接では人柄を見るんじゃが、ラビのことなら儂はよくわかっておるしな」

「ありがとうございます!」

(本当に良かった……!)


 嬉しさのあまり、その場で飛び跳ねてしまいそうだ。

 そんな俺から不安そうにバーバラが前に出る。


「あの……私はどうなるのでしょうか?」

「そうじゃなぁ……今、ガリアッツォ公爵から、【娘のバーバラが来ていないか】と問い合わせが来ておる」

「えっ!?」

「来ている場合は、迷惑にしかならいから追い返しても良いとのことじゃ」

「そんなっ!?」


 バーバラが悲痛な声を上げた。

 どうやらバーバラは親である公爵から捜索願が出されていたようだ。

 それも、試験を受けるのを許されていないらしい。


「私は学ぶことを許されないのですね……」


 バーバラはその場に崩れ落ちてしまった。

 その目には涙が溜まっている。

 俺はその姿を見て、過去の自分を見ているような気持ちになった。


「ザックさん、なんとかできませんか?」

「バーバラ嬢は魔法を使おうとすると、過多魔力で爆発を頻繁に起こしてしまう。そのせいで、他の魔法学校には入学させてもらえなかったようじゃ」

「そうですか……だからここ試験を……」


 俺は俯くバーバラへ視線を向ける。

 バーバラ表情は絶望に染まっており、目に光はない。

 このままではいけないと思った俺は、膝を折ってバーバラと視線を合わせる。


「バーバラ、お前はどうしたいんだ?」

「え……?」

「ここで学びたいのか、それとも別の道を進むのか、だ。お前の人生はお前が決めるしかない。お前の人生は、お前が選べばいいんだ」

「私の……人生……」


 バーバラは俺の言葉に耳を傾けている。

 その瞳には、わずかだが光が戻っていた。


「そう、お前の人生だ。お前が本当にやりたいことはなんなんだ?」

「私が……やりたいこと……」


 バーバラは俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。

 その視線からは、強い決意を感じた。


「私は……魔法が学びたい……いくら才能がないと言われても、諦めたくない!!」

(この子の目は本物だな……)


 本気で魔法を学びたいと思っている。

 バーバラの瞳は確かな覚悟を感じさせた。

 ならば、俺が返す言葉は決まっている。


「わかった。それなら俺がお前の盾になろう」

「……え?」


 俺の言葉が予想外だったのか、バーバラは大きく目を見開く。

 後ろで見ていたフランシスも驚いているようだった。

 俺は立ち上がり、イージスを召喚した。

 純白に光り輝くそれは、圧倒的な存在感を放っている。


「ザックさん、我がイージスでバーバラの魔法が爆発しなくなるまですべてを守ります。それでどうかバーバラを入学させていただけませんか?」


 俺はザックさんに告げる。

 俺の宣言を聞き、フランシスは少し不安そうにしている。

 ザックさんは満足そうに微笑んでいたが、すぐに厳しい表情を浮かべた。


「ふむ……本当にできるのか? 先ほど部屋が全壊したばかりじゃぞ?」


 ザックさんは顎に手を当てて俺を試すような視線を送ってくる。


「ええ、やります」


 俺は即答する。

 その言葉を聞いた瞬間、ザックさんは大きく口を開けて笑い出した。


「カッカッカ! そうか、そこまで言うのならやってみせい!」

「はい!」


 ザックさんは俺の肩へ手を置く。

 その力強さから、ザックさんが俺の言葉を信じてくれていることが伝わってきた。


「では、バーバラ嬢は学校を破壊しないという条件で入学を許可する。それでいいな?」

「わかりました」

「あ、ありがとうございます!」

「ただし、他の生徒や学校に被害が出た場合即刻退学じゃ。それだけは肝に銘じておくのじゃよ」

「はいっ!」


 こうして、バーバラは魔法学校への入学が決まったのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


この話を読んでいただきありがとうございました。

気分転換に書いている話なので、次回も書き上げ次第投稿いたします。

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