第5話 方針

さて、現在は1996年4月。今後の分岐を考えてみよう。まずは個人的な分岐だ。中学三年生から高校に上がるところで最も大きな分岐は高校の選択だっただろう。高校の選択自体は間違っていなかったと思うので、ここまではいい。なんだかんだで今も昔も学歴社会だ。トップの高校に入れるなら入ったほうがいい。


高校時代は過去に俺が1番無駄にした時間だと思っているので有意義に過ごしたい。3年間帰宅部で、かと言って勉強をするわけでもなく、バイトやゲームに明け暮れ、現役受験は失敗。無謀にも3年の夏から勉強して、難関大学に挑んだから当然だ。大学は行けるなら最難関、現役で目指す方針としよう。恐らく一回やったことがある今なら授業も理解できるはず。不可能ではないだろう。


運動は普通レベルから抜け出せないから、軽く体を動かすようにするぐらいでいい。せっかく若くて動きやすい体だからな。40代とは大違いだ。

となると、文化部か…パッとしないな。何か自分でできないだろうか。俺には未来に起こることがわかる。とはいえ、未来に何が起こるか検索をできるわけではないから、俺の記憶だけが頼りだ。


パソコンはまだWindows95が出たばかり。まだ市場価格も高いし高校にも配備がされていない。携帯電話も普及はこれからだ。今は家の固定電話のみで、そろそろポケベルが流行りだす頃だ。PHSはもう存在するだろうが、若者層に普及するのは遅かった。俺は高校の時にPHSを持っていたが、周りではポケベルが主流で、PHSは少数派だったな。


高校時代にあたる1996年~1998年の重大事件・・・1997年の香港返還ぐらいしか思い出せないな。そして、少し先だが1999年で世界は滅びない。


とはいえ、中学時代の時のように社会人として20年働いてきた経験値は何かに活かせるだろう。それを活かす場は、生徒会長が近いかもしれないが、中学の時に経験したことでわかっている。権限に限界はあるし、自由がきかない。どちらかという言うと、雑務係じゃないのか。


それならいっそ、何か自分で部を作ってみるか。人生経験を生かして、なんでも相談部とか。もしかしたら、特定の状況において、使える未来の知識も思い出すかもしれない。部活つくるのってどうやるんだろうな…まぁなんとかなるだろう。せっかくのチャンスなのでやりたいことをやってみよう。


そして、高校の入学式の日を迎えた。社会人になってからは春だからと言って心機一転とはならないが、中学から高校へあがる春という瞬間は唯一無二のものだ。自然と心が弾む。俺にとっては新しい出会いはないはずだが、今回は無為に過ごすのではなく、しっかりやろうと心に決めている。


高校は家からそれほど遠くなく、自転車通学になる。この道も懐かしいな。そして足を踏み入れた校舎。年季の入った建物で、戦前からのものだ。もうすぐ立て直しになるため、1年生は仮設校舎での授業になる。


入学式を行う講堂に入る。これまた古い建物で埃っぽいけど懐かしい匂いがする。あたりを見回してみると、どうやら過去と同じ面々が揃っているように見える。見たことがあるというぐらいで、仲が良かった数名を除いては名前まで憶えてはいないのだが。


1学年は400人いるので10クラスある。俺は10組。以前と同じだ。どうやらここまでは中学時代に生徒会長やらいろいろなIFを試してきたことは別にして、大きくは同じルートを辿っているらしい。


入学式が終わりクラスに入る。大体見たことがある面々だ。最初の頃絡んでいたヤツらもちゃんといる。最初は俺もクラスの中心グループにいたんだよな。目立つ女子が俺のことを気に入ってたらしいから、なんだかんだと巻き込まれていた。俺があまりに性格的に地味だったために、1年の後半では離れて行ったが。今回はせっかくなのでガッツリ付き合って行こうと思う。相談部を作るのにも人脈はいるだろうしな。


さて、じゃあ部活づくり、やってみるか!でも、どうやるんだろう。

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