第14話 始動

今日はいよいよ第一回目の部活動だ。と言っても、今日は簡単な相談開けんしかないので、チラシについてと、これからどう動いていくかの話し合いになる。とりあえず仮説は持っているが、みんなの自主性を大事にしたい。考え方のクセやら性格も知りたいしな。


放課後になり、部室となった家庭科室に部員が集まる。アズサ、ユキ、マサキ、カオリ、俺の5人だ。


「今日から人生相談部始動です!拍手っ!」

勢いでとりあえず拍手させてみる。

「そして、我が部のチラシができました!拍手っ!」

再度拍手を求める。アイスブレイクとしてはこんなもんでいいだろう。


「まだ部として成立したばっかりやし、本格的な相談は多分ゴールデンウィーク明けやと思う。で、今日はチーム分けをしときたいなと思ってる。」

「チーム分け?」

アズサがつぶやく。


「そう、2人ずつで2チーム、俺は単独かなと。相談が部単位とかやったら全員で当たってもいいんやけど、当面は個人的な相談やと思うんだ。そう思うと、5人全員に話すのは相談者側からすると話しにくいし、俺らも必要以上に個人情報を持たないほうがいいんだよ。」


なるほどとみんなうなずく。そこでユキが口を開く。

「どのチームがどの相談を受けるかってどうやって決めるの?もしかしたら偏りがあるかもなって思うんやけど。」


「特に相談者から指名がない限りは均等分配やな。チームで対応してて、迷うようなことはできる限り個人情報に配慮しつつ、月水の部活で相談。もちろん、部活がないときでも緊急のときはいつでも相談してほしい。逆に俺も相談させてもらうし。当面はどのチームにも俺は顔を出そうと思ってるよ。他、聞きたいことあったらなんでも言ってな。」


マサキが話す。

「確かにチームを分けるのは納得できるけど、正直、今はケイタくんなしで動くのは怖いと思ってたんだ。どんなチームにしろ一緒に来てもらえると助かるよ。」


「さて、他になければチーム分けやな。これはグッパやあみだくじで分けるのが簡単でいいんやけど、4人で話し合って決めてほしい。話し合う中でお互いの考え方とか、相性とか見えてくるもんがあると思う。ランダムな決め方じゃなければなんでもいいから話し合ってみて。」


ということで、俺は傍観者スタイルになる。さて、誰がどう動くか観察だ。俺にとっては性格把握という面もある。


最初に口を開いたのはアズサだ。

「まずは自己紹介しよっか。入部届書いてもらったときには私してなかったもんね。神原アズサです。よろしくね。で、マサキくんが7組、カオリさんが9組だったよね。」

他の3人がうなずく。


「坂本マサキ、7組です。その時はなんで部活に入りたいかも一緒に言ってたからこれも伝えとくね。簡単に言うと、自分がなにをしたいのか見つけにきました。あの演説すごかったよね。」


「山下カオリ、9組です。私もほとんどマサキくんと同じね。」


「岸本ユキ。10組。気になったから?」


なんで疑問形やねん。こっちが聞きたいわ。


アズサが続く。

「私はマサキくん、カオリさんと似てるかな。ケイタくんね、初日の自己紹介で突然相談部を作るって言いだしたときは何言ってるのこの人って思ったんやけど、入学して一か月もしないうちに、企画書書いて、顧問の先生決めて、部活紹介をして、メンバーが実際に集めて、ここまで形にしてきたのを隣で見ちゃったからね。私も何かしたいって思ったの。」


ふーん。なるほど。アズサはともかくとして、ここまではマサキが好感触だな。あいつが自主的に志望動機の話をしだしたから会話が続いている。もう少し沈黙が増えると思ったが。


「私はアズサと組みたい。」

突然、ユキは結論を口にした。


「私にはアズサみたいにこの部活に対する熱が今はない。だから、それを補ってもらうって意味で…釣り合い取れると思わへん?」

なるほど。やる気のバランスね。確かにそう感じるな。


「なんかもっと時間がかかる気がしてたけど、理由として僕は納得できるよ。いいんじゃないかな。」

マサキが話す。アズサとカオリも異論がないようで、俺を見る。


「納得した結論ならそれでいいぞ。交流も兼ねてと思ってたが、元々のお題はクリアしてるからな。」


マサキはカオリと組むのがいいと思ってたしちょうどいい。美少女系のアズサやユキと組むと、緊張で彼の良さが発揮されないかもしれない。


俺とでも、頼りすぎて良さが発揮されない気がしていた。ある程度任していく方が伸びそうだ。


「ほんとはもっと時間かかると思ってたんやけど、じゃあ決定やな。ということで今日の部活は終了!で、時間あるから俺は駅前にビリヤードしに行ってみようかなと思うんやけど、誰か行かへんか?自腹だから無理にとは言わないぞ。俺は1人でも行くんやけど。」


そう、この頃はビリヤードがボチボチ俺の周りでブームを迎える。久々にやりたくなったというのもある。カラオケブームが全盛だが、なかなかいきなりはハードルが高いだろう。そういえば、たまごっ〇もこの頃だったか。


ユキ以外は一緒に来るそうだ。

「じゃあ行くか。あ、ユキって好きな人いるのか?」

「え、なに?いきなり。」

他の3人はびっくりしているが、ユキは冷静だ。


「すまん、すぐ帰ってしまいそうだから説明が抜けた。それを聞きたいって相談が入ってたんだよ。言いたくないならパスでいい。」

「…いないよ。」

ユキは答える。

「了解。ありがとな。また水曜日に。」

「うん、バイバイ。」

ユキは1人帰路につく。


「アズサ、どうした?気分が悪いのか。」

「んーん。なんでもない。ちょっとびっくりしただけ。」

「?なんともないならいいが、そんじゃ行くか。俺はチャリ取ってくるから校門で待っててくれ。」


4人でビリヤードに行くと、マサキが超うまかった、とだけ言っておこう。俺はそんなに上手くはないが、一応、それなりに突けるぐらい。年の功はどこに行った。今度マサキと2人で行って教えてもらおう。

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