第11話 志望

結果から言うと、部活紹介には結構な反響があった。最悪、タクミにも声をかけようと思っていたのだが、部内恋愛はややこしいので今後アズサと何かあるとすればと思うと声をかけづらかった。この反響は素直にありがたい。


週明け早々の月曜日。男子が4名、女子が1名からの入部希望があった。男子はみなアズサに入部の意思を伝えていたらしい。アズサ効果なのだろう。女子は俺のところに来た。とりあえず、入部の意思ありということで桑田先生にまず報告と相談が必要だな。報・連・相。これ大事。


「アズサかユキ、頼んでいいか?」

「え、何?」

「今の状況を桑田先生に伝えて入部届け人数分と、部について改めて入部希望者に説明しておきたいから仮でもいいので部室が欲しい。使うのは明日の放課後からが希望だな。今日いきなりは集まりにくいかもしれないからな。」


ユキが答える。

「入部届けはもらってるから、部室の件だけ相談してくる。」

「お、ありがとう。」


ユキは目端がきくな。頭の回転も速そうだし、いい右腕になってくれそうだ。これから一緒に部活をやっていく上ではもうちょっと彼女のことも知らないとな。


アズサは出遅れたことで、ちょっと気まずそうだ。


「アズサ、副部長やってくれへんか?」


「え!?なんで私?」


「アズサの強みは人とすぐに仲良くなれることだ。俺は、正直言うと表面上は取り繕うことはできるんやけど、苦手なんよ。だから、そういう対外的なヤツをアズサに任せたい。頼めるか?」


「っていうか、最近会ったばかりやのにそんなことわかんの?」


「そりゃー、俺なんか男やとタクミ以外とほとんど話せてへんで?」


アズサの強みは人を巻き込んでいく力だ。これからは部長として部員の力を引き出すマネジメントをしていく必要がある。適材適所だ。アズサは結局満更でもなさそうな感じで引き受けてくれた。今日は入部希望者に明日のことを伝えて終了だな。


そして次の日の放課後、入部希望者が仮部室に集まる。仮の部室になったのは家庭科室。これまた懐かしい教室だ。


結局集まったのは1人減って4人だった。俺が知っているのは4人のうち、2人。あとの2人は記憶にはあるものの、あまり絡んだことがないはずだ。


俺が知っているのは水泳部男子。悪い奴ではないがちょっとオタクっぽいというか、変態っぽいやつで、注意は必要だろう。もう1人は唯一の女子だ。こちらの女子とは縁があった。


地味めな子だが、過去の俺にはよく話しかけてきていて、修学旅行で告白された。この時点でフラグが立っているのか?よくわからない。さて、面接官としての経験はあまりないので自信はないが、とりあえず、志望動機は聞いておこう。本音が見えやすい雰囲気をどう作り出すかがキモだろう。


「集まってくれてありがとう。俺は八代慶太、みんなと同じ1年なので気楽に話してくれると嬉しいな。せっかくやからみんなで楽しく活動したいと思ってる。立場としては部長ってことになるけど、不満や要望、相談はなんでも言って欲しいかな。」


アズサに目配せし、自己紹介を促す。

「神原アズサ、私も入ったばかりだからまだ何もわからないけど楽しく過ごせたら嬉しいな。よろしくね。」

やはりアズサが話すと空気が和らぐか。そして、ユキにも水を向ける。

「…岸本ユキ、よろしく。」


こいつはブレないね。


「で、みんなにも自己紹介してほしいんやけど、多分みんな、部活紹介を聴いて来てくれたんだよな?だから、名前となんで入りたいと思ったか簡単でいいから教えてほしい。じゃあ俺から見て左から順に頼むよ。」


ここから、入部希望者の自己紹介が始まる。

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