第12話 面接

さて、入部希望者の自己紹介だ。手で自己紹介を促す。女子が一番最後になる順番だ。


「7組の坂本マサキです。えっと、部活紹介聞いて、同い年でこんなこと考えてる人いるんだって、なんか自分もせっかくの高校生活楽しみたいなって思ってきました。よろしくお願いします!」


マサキは眼鏡をかけていてこの進学校では典型的なタイプだ。前回も目立つことはなかった。志望動機はまともだ。


「平コウヘイです。3組です。なにか部活やりたいなって思ってきました。運動も楽器もなんか違ったんで。」

消去法か。チラチラアズサを見ていたし、決め手はアズサだったのだろう。志望動機としては弱い。次は水泳部のやつだ。


「9組の立川ジョウ。ジョーでいいよ。俺もなんかやってみたかったんで。あ、水泳部と兼部です。」

うーん、本音が見えないな。やはり水泳部か。さて、次で最後。


「9組の山下カオリです。私は八代くんが説明してるの聞いて、すごいなって私も何かできるかなって思ってきました。よろしくお願いします。」

まぁ、消去法ではない分いいな。だが、ここでこの部活のリスクを話しておかないとな。


「みんなありがとう。特にこちらから断る理由はないんでよろしくな。で、言っておきたいんやけど、俺らは悩んでいる人たちの手助けをする。でも、悩みって人それぞれやろ。例えば恋愛相談なんかもあるやろう。告白がゴールやったしてもその結果はいいものとは限らへん。批判や非難も受けることもあるし、割りと人間のドロドロした部分も見ることになると思うから、そこは覚悟しておいてほしい。それでもよければ、入部届けと誓約書にサインしてもらったら今日は解散や。誓約書は相談された内容を他の人に漏らさないってことね。これやると俺らは信用がなくなってもう活動できなくなるから、罰則もそれなりに重いので十分注意してな。」


結局残ったのはマサキとカオリ。コウヘイとジョーは辞退した。対人関係に踏み込むのは結構面倒くさいし、脅しが効きすぎたみたいだが、ちゃんとやりたい気持ちがないと難しいからな。仕方ないだろう。しかし、結果的には人数ピッタリだ。


「当面は積極的に勧誘もせん予定やから、しばらくはこのメンバーになると思う。マサキ、カオリ、アズサ、ユキ、みんなよろしくな。みんな1年やから気楽に行こう。入部届けと誓約書に名前書いたら今日は解散な。次回は来週月曜日にしてくれ。毎週月水が部活としては定期活動だ。」


部室からみんな退出をしていく。残ったのはユキとアズサだ。アズサはみんなが出ていったのを見計らって、俺に尋ねる。


「準備って何かある?私も何か手伝おうか?」

「アズサには桑田先生と話して正式な部の創設許可をもらって、正式な部室の確保して、俺らと相談者が快適に話せるように整えてほしいんだよな。頼んでいいか?必要に応じてメンバーにも声をかけてくれ。」


「わかった。あと、相談が何かないか友達に聞いておくね。それと…。」

アズサは言いにくそうに言葉を続ける。


「カオリって、ケイタくんと何か接点あった?」

「いや、初対面やけど、なんで?」

「・・・なんとなく。」

そりゃカオリが自己紹介中は目を合わしたが、昔を思い出して変な反応が出ていただろうか。


それはさておき、とりあえずの目標は達成した。部としての体裁は整ったが、実際の相談者が来るかどうかが次の関門かね。軌道に乗るまではプロモーション活動を行っていこう。

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