第8話 夕風先生の不思議な話
姫さんの邪魔にならないよう、おいらたちは花庭に出て、話をした。
それにしても、夕風先生、男にしておくのはもったいないほど、端整な顔立ちをしている。
男のおいらでさえ、どきどきしちゃったよ。
「
「え? どうしてわかります?」
「……私は年がら年中、骨相(人相)を占っているからな。わかるのさ」
「たしかにそのとおりです。おいらが得意なのは、文筆……和歌です」
「そなたは……不思議な人相をしている」
そういって、夕風先生は、おいらの顔を穴があくほど見つめた。
「おいらの団子鼻が、そんなに不思議ですか?」
おいらの冗談口に、夕風先生は、ふふと笑った。
「……そなたは、どこか、人をほっとさせるところがある。魂が大きいのだろう。
そなたなら、私の話を理解できる気がする」
(――褒められた?)
にんまりしたおいらに、夕風先生は、意外なことを喋りだした。
「私と姫とは、誓い合った仲なのだよ」
「えぇ? そうだったのですか……」
「前世の話……だがね」
「はいぃ?」
おいらは驚き、いささか混乱した。
からかってるのだろうか……。
それとも本気で?
「前世? ……そんなものがありますか?」
「あるのさ」
夕風先生は
戸惑うおいらの様子をみて、先生は、わかりやすく説明してくれた。
人の魂は、生まれ変わりを繰り返す。
この世に生まれてくる以前、魂は別の世界に生きていた。
その前世で、夕風先生と花月夜姫は、愛の誓いを交わしたそうだ。
ふつうの人は、生まれ変わるたびに前世の記憶を失ってしまう。
しかし、この夕風先生には、その記憶があるのだという……。
「場所は、
「震旦ってのは、古代中国のことですか?」
その名前を、おいらは金鶏先生から聞いたことがあった。
「よく知っているな」
夕風先生は表情をやわらげ、微笑を向けた。「私は前世では女性だった。そして、花月夜姫は男性だった」
「性別が、逆だったのですか?」
「そう。前世では、性別が異なることもある」
「ふうん……」
「私は貴族の女性で、占いが得意だった。舞も得意で、みなから『舞姫』と呼ばれていた。
花月夜姫は男性で、その国の、一番末の『王子』だった。
『王子』は自分の運命を占ってもらおうと、『舞姫』のもとを訪れ、いつしかふたりは恋に落ちたのだ」
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
次回、舞台は、震旦へ――!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます