冒険者ギルド「が」追放されたんで、別ギルドに移籍してランキング1位を目指します!!

@HasumiChouji

プロローグ

バーニング・ダウン

 3年前の例の伝染病の大流行。

 あれと似たような事が、また、起きたら、絶対にあの時より洒落にならん事になるなぁ……。

 僕は、そう思いながら、世にも嫌なフェ○○オを、その医者に強要していた。

 「聖騎士ロンメル」ので売り出し中の冒険者パーティーのリーダーが、よりにもよって、下手な冒険者より英雄扱いされている人に、こんな真似をやってるなんて知られたら……冒険者に憧れてる子供達が大量自殺しかねない。

 でも、これも僕達のパーティーが冒険者ギルドの中で成り上がる為には仕方ない事だ。

 手軽に「冒険者ランキング」上位になる為には……他のパーティーがやりたがらない「汚れ仕事」……ランキング上位のパーティーや冒険者ギルドそのものがやらかした不始末の尻拭いも積極的に引き受けるしか無い。

「ぐへ……ぐへ…………ぐへ……………………」

 僕の聖剣(チ○コじゃなくて本当の剣だ)を口の中にブチ込まれた、その医者の喘ぎ声は、段々と弱々しくなっていった。

 例の伝染病の大流行の時に、幾多数多の人達の命を救った名医の末路がコレとは、世の中ってのは、つくづく理不尽だ。

「死んだ?」

 僕に、そう聞いてきたのは……エルフの魔法使いシュネーシュトゥルム。通称は「シュネ」。

 この世界に、もう本物の「妖精」系は、ほとんど残ってない。

 彼女は、この辺り数ヶ国で迫害・差別されてる少数民族の北方系白肌人種の出身で、その境遇から成り上がる為に魔法の美容整形手術で自分の顔をエルフに見えるモノに変え、冒険者になったのだ。

「うん……」

「じゃあ、証拠隠滅……」

 ポン。

 彼女は一度手を叩いた後、少しづつ、2つの掌の間に隙間を作り……。

 彼女の名前は「吹雪」って意味の筈なのに、得意技は火炎系の魔法だ。

 シュネの2つの掌の間に、「炎」属性のオレンジ色の「霊気オーラ」が溜っていき……。

 ボゴォッ‼

「何やってんだ、マヌケッ‼」

「痛いッ‼ 何、すんのッ?」

 突然、シュネの後頭部を撲ったのは、「聖女」ローア。

 シュネが偽エルフであるように、彼女も本物の「神聖魔法」の使い手じゃない。

 どうやら……百年か二百年前に、この世界で、何か、とんでもない異変が起きたらしい。

 それ以来、「妖精」系の種族は「この世界」を去って故郷である通称「妖精界」に帰り、善・悪・中立・秩序・混沌・自然なんかの「属性」に関係なく「神々」と呼ばれる「神聖魔法」の「力の源パワーソース」との絆を持つ人間も激減した。

 ローアの使う「神聖魔法」の正体は……「神々」とは別の何か剣呑ヤバい存在との契約で得た能力ちかららしい。

 狭い意味での「神々」より下位の異界の存在は、「神々」よりも気軽に人間の願いを叶えてくれるが、本物の「神々」に比べて阿呆揃いみたいで、人間から見て善良な存在が善意で力を貸してくれた場合でも、願いを叶えてもらったり力を借りた人間が、回り回ってエラいツケを払う羽目になる事は良く有る。

 ましてや、ローアの使う偽「神聖魔法」の「力の源パワーソース」は、かなりロクデモない魔物なんで……何が起きるかと言えば……。

 どうやら、ローアに治癒魔法をかけられた人間は……同意も無しに、その「何か剣呑ヤバい存在」に「魂を売った」事になってしまい……死んだ後は地獄だか冥府だか魔界だか奈落だか(この4つは厳密には違う世界だそうだけど、具体的にどう違うか、さっぱり判らない)で魔物達の宴会のオードブルとして、美味しく食べられてしまうそうだ。

 あ、僕が、この事実を知った時、既に、ローアから何度も治癒魔法をかけてもらっていた後だった。

 まぁ、もっとも「本物の神聖魔法」は「後の面倒見アフターサポートもバッチリの代りに、発動・成功条件がクソ厳しい」モノだったらしく、「本物の神聖魔法」の使い手が一定数居た時代から、発動失敗の確率はクソ低いけど使用した時のリスクもバカ高い「偽物の神聖魔法」との競争に負けてたらしいけど。

「おい、おマヌケ耳長野郎、私ら、何しに、ここに来たんだっけ?」

「だから……このおっさんが……えっと……ドワーフとかゴブリンとかの正体を……えっと……」

 シュネは「頭良さそうに見える演技」は超巧いが、本当に頭がいい訳じゃない。

 脚本ブック通りにる事は出来ても、アドリブシュートはクソ駄目だ。

「あのさ、おめえの魔法で、ここ焼き払ったら魔力が残留すっだろ。残留魔力のパターンで官憲の魔法使いに誰が犯人かバレかねねえよ。証拠隠滅のつもりで証拠残すって、おめえ阿呆だろ」

「シュネ、阿呆じゃないもん」

「うるせえ」

「○×△◇⁉」

 ローアはシュネに「猿ぐつわ」の魔法をかけて議論を打ち切る。

「おい、証拠、全部、普通の油で燃やすぞ」

「う……うん……」

 この医者は……生まれ付きの身体障碍者の治療法の研究をしている内に、ある恐しい事実に気付いてしまった。

 ドワーフやゴブリンの中に「小人症」の人間を魔法で「改造」して生み出されたモノが居るらしい事に……。

 そして、どうやら、「小人症」の家系を人の手で作り出している組織が有るらしい事も……。

 いや、その悪の組織って、要は、この辺りの国・大都市に有る冒険者ギルドの連合体なんだけど。

 ドワーフやゴブリンが居なくなったけど、冒険者ギルドの組織は維持しなきゃいけない。

 だから、各地の冒険者ギルドは、偽のドワーフや……冒険者に狩られる「敵」としての偽のゴブリンを作り出す事にした。

 やがて、それは冒険者ギルド連合での共同事業になり……「小人症」の人間を掛け合せて「ドワーフ」や「ゴブリン」の「素体」になる家系が生まれた訳だ。

 そして、冒険者ギルドは、極秘情報に辿り着いてしまった、この医者の殺害と証拠の隠滅を僕達のパーティーに命じ……。

「お父さん、急患の……えっ?」

 急に部屋のドアが開いて、そこに居たのは、十歳ぐらいの幼女。

「うわああああ……‼」

 僕は、慌てて、幼女に向かって駆け出し……えっ?

 床に何か落ちてた。

 それに足を取られてコケた。

 コケた拍子に聖剣を手から放してしまい……。

 ズサッ……。

「あ……」

「あぎゃっ?」

 宙を舞った聖剣は幼女の体を斬り裂く。

 詳しく描写すると小説投稿サイトの規約違反になりそうな……中途半端だから逆にグロい、即死じゃないけど助かるのは無理っぽそうな傷……。

「やれやれ……」

 ローアは、倒れて、もがき苦しんでる幼女に近付き、僕の聖剣を取ると、幼女の喉元に突き刺した。

「おい、早く焼け……この家ごとな」

 この手の汚れ仕事の時のローアは……普段の「聖女」の人格じゃなくて「魔物」かつ「本物」の人格が表に出てる。

 別に暴走する訳じゃない。

 わざと三文芝居に出て来そうな「聖女」を演じてるような普段の人格よりも遥かに論理的で冷静で頭も回る。

 ただ、「ある目的を果たすのに労力・リスクその他の条件がほぼ同じ複数の手段が有る」場合に一番倫理的にマズい選択肢を積極的に選ぶだけで。

「は……はい……」

「あと、急患とやらも確実にるぞ」

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