(4)

 ブー、ブー、ブー。

 その時、シュネの懐から音が鳴り出す。

「□◎∵∴√‼」

 シュネは懐からエメラルド色の魔法の小型石版タブレットを取り出して……。

 石版タブレットの表面に表示されているのは……冒険者ギルド本部のマーク。

 どうやら、ギルド本部から何かの緊急連絡が有ったようだ……って、どう考えても、何についての連絡かは明らかだけど……僕たちが原因だとしても、今、この町で起きてる事は僕たちの専門外だ。

 シュネは自分の口と石版タブレットを交互に指差し……。

「あ〜、わかった、わかった」

 そう言って、ローアは石版タブレットを取り上げ……。

「はい、『聖騎士ロンメル』パーティーの『聖女ローア』っす」

 シュネは首を左右に振り、自分の口を指差す。

「なるほど……」

 ローアは無視。

「わかりやした」

 ローアは更に無視。

「報酬は、いつもの倍でいいっすか?」

 ローアは無視無視無視。

「え〜……まぁ、仕方ないっすね。いつもの5割増しで手を打ちましょう」

 通話を終えると、ローアは指を鳴らして僕たちにかけた「猿ぐつわ」の魔法を解き……続いて、シュタールの頭を掴むと……。

「うぎょッ‼ 何すんじゃ、このメスガキがッ‼」

 ドワーフに改造された小人症の人間は……普通の人間より寿命が短かくなるが……改造された時に施された精神操作のせいで、自分を本当のドワーフだと思い込んでいる。

 その結果、例えば……ローアさえ自分から見れば「メスガキ」にしか思えない年齢だと勘違いしてたりする……。

「解毒の魔法を応用した酔い覚ましだ。緊急の仕事だ。おい、耳長野郎、全員に浮遊レビテーションの魔法をかけろ」

「え……? な……何?」

「ギルド本部からの緊急依頼だ。あの山車だしを破壊するぞ。正確には山車だしに乗ってるモノだ」

「で……でも……それは消防ギルドとかの仕事じゃ……。それに、あの状態じゃ……何が山車だしに乗ってても、遅かれ早かれ焼けて灰に……」

「阿呆、今の一位のパーティーには、あたしより力が上の聖女が居ただろうが……あたしみたいなのが死んだら、どうなる?」

「……ど……どうなるって言われても……どうなんの?」

「だ・か・ら……聖女だの神官プリーストだのの9割9分以上は……あたしと同じ強力な魔性のモノフィーンドから力を得てる偽物だろうがッ‼ しかも、ズルチートなしの実力だけで冒険者ランキング1位になったパーティーの『聖女』だぞ。判ってんのか?」

「判んない。僕、馬鹿だから判んない」

「あ〜、シュネは阿呆じゃないから、判るよ……ええっとね……」

「お前の説明は後でゆっくり聴いてやる。要は……バカ強いつええ魔性のモノフィーンドと契約してたバカ強いつええ『邪術師』がくたばって……その死体から、マズい魔力が漏れ出してるみてえなんだよ」

「へっ?」

「だから、町の大通りにクソ剣呑ヤベえ『邪遺物』かアンデッドが出現したんだよッ‼ いくぞ、聖女サマの死体をブチ壊すか……聖女サマの亡霊を地獄に送り返すぞ‼」

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