(5)

 あははは……。

 かつての仲間を生贄に捧げる事で、僕は、この都市まちの英雄になった。

 芝居や吟遊詩人のうたの定番パターンだ。

 何かを犠牲にせずに英雄になれた者なんて居ない。

 見たか、これが現実主義ってヤツだ。

 シャロルとジュリアが炎に焼かれる悲鳴を聞いて……思わず(下品過ぎる表現につき自粛)しそうになった。

「いくぞ〜ッ‼ 祭は始まったばかりだ〜ッ‼ 冒険者どもの生き残りを全員焼き殺すぞ〜ッ‼ クソ冒険者を庇う奴らも同罪だぁ〜ッ‼」

 僕に従う群集から、盛大な喜びの声。

 まずは……僕達は……この都市まちの城壁の門の1つに向かった。

 思った通りだ。

 スーパーヒーローギルドや退魔師ギルドの阿呆どもは、半人半魔になった冒険者達を、まだ、倒せていなかった。

「待て、おい、危険だぞ」

 1人1人は奴らが強い。

 でも、こっちには数の暴力が有る。

 善良なる暴徒どもは、スーパーヒーローどもや退魔師どもを叩きのめす。

 しかも、奴らは、脳内御花畑の阿呆な理想主義者だ。

 暴徒化していても、一般市民に手は出せない。

 ざまあみろ。

 正義の阿呆どもは、理性的な現実主義の前に撃退され……。

 僕達は半人半魔化した元・冒険者の周囲に薪を積み上げ……油をかけ……。

「死ね〜ッ‼」

「うぎゃ〜ッ‼」

「うぎゃ〜ッ‼」

「うぎゃ〜ッ‼」

 燃えろ……燃えろ……燃えろ……人間の屑の冒険者どもが……。

 けけけけけ……。

 あれ?

 僕も冒険者じゃ……。

 変だ……。

 僕が、これまで、冒険者として何をやってきたか……何も思い出せない。

 まぁ、いいか。

 大した事じゃない。

 大事なのは未来だ。

 これからは……冒険者ギルドも、スーパーヒーローギルドも退魔師ギルドも最早不要だ。

 この都市まちの英雄は……僕1人でいい。

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