(10)

「待ちやがれ〜ッ‼」

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 ひたすら逃げる。

 何故だ? 何故だ? 何故だ。

 何故、僕の聖剣の力を……どう考えても聖騎士の資格なんてなさそうな暴徒が発動出来たんだ?

 おかしい。おかしい。おかしい。

 お……おかしい事は……他にも有る。

 な……なんで……何年も冒険者をやってきた筈の僕が……たった、これだけ走ったぐらいで、息切れを起こすんだ?

 うわっ?

 また、足を滑らせて……コケる。

 ゴキっ。

 思わず地面に右手を付いたと同時に……変な音。

 そして、肘や肩に激痛。

 ウソだ。

 聖騎士である僕の人生の終り方が……こんなマヌケなモノの筈が……。

「うわあああ……ッ‼」

 右腕が痛みで動かなくなったんで……左手だけで予備の武器のナイフを抜こうとするけど……片手、それも利き手じゃない方の腕なんで巧く抜けない。

 ついさっきまで食事に使ってたナイフ。

 ああ……あの幼女肉も、今頃、どこかのコソ泥のモノになってるんだろうなぁ……。

 あははは……。

 僕の冒険の旅の終りが……こんなのなんて……ん?

 思い出せない。

 何でだ?

 頭を打ったせいか?

 僕は冒険者だった筈だ。

 なのに……僕が今までやってきた冒険を何1つ……思い出せない。

 おい……冗談じゃない。

 僕は……誰なんだ?

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