(9)

 あれ? ここ、どこだ?

 ……それに、もう明るい……。

 そして……ここ、馬鹿デカいテントか何かの中?

「三六二番の患者さん、意識を取り戻しました」

 若い女の声だ。

「だ……だれ?」

 そう言った途端……何か変な感じが……。

「脳の活動……正常の範囲内。三六二番の患者さんに事情の説明を行ないます。例の書類をお願いします」

 その声の主は、明らかに並の冒険者よりいい鎧を着装つけている……それも、多分だけど、筋力増幅機能付きの奴だ。

 その鎧の色は……派手なオレンジ色。

 風貌は……ぶっちゃけて言えば、女なのに男より女にモテそうな感じだ。

 そして、その女は白一色の服の男から、何かの書類を受け取ると、僕の方を見る。

人命救助レスキューギルドの者です。いいですか? 良く聞いて下さい。あなたの心身は、かなり量の『邪気』に被曝しています。必ず専門の魔法医の治療を受けて下さい。それも至急です。紹介状とこの都市まちの主な魔法医のリストはこちらです」

 そう言って、そのレズっぽい女は紙を3枚、僕に渡した。

 一枚目……医者への紹介状らしい。結構、細かく僕が発見された時の状況や、魔法で僕の体を走査さぐった結果が書かれている。

 二枚目……この都市まちの各地区ごとの魔法医の住所と名前のリスト。

 三枚目……え……えっと……な……なんだよ、これ?

「こ……これ、何ですか?」

「何か判ったという事は字は読めるようですね」

「い……いや、そうだけど……」

「でしたら、書いてある通りです」

「い……いや、その……あの……」

「だから、書いてある通りです。被曝した邪気を除去する治療を受けた後、必ず当局に出頭して下さい。貴方は昨晩の事件の参考人です。それは、その為の召喚状です」

「あ……あ……あ……」

「当局からの伝言です。『貴方には弁護人を選び、その弁護人から法律上のアドバイスを受ける権利は有るが、黙秘権は認めない』」

「あ……あの……昨日のアレって、結局、どうなったんですか?」

「どこまで御存知か当方には判りかねますので、最初から話しますね。まず、この都市まちの一画で放火によるものと見られる火事が発生。その火が冒険者ギルドがやってる見世物の山車だしに引火。しかし、魔法で動いていたその山車だしは延焼しながら、都市まち中を暴走。その山車だしに乗っていた冒険者ランキング1位のパーティーとやらが何故か強力なアンデッドに変貌し、火事から逃れようとしていた無辜の市民を虐殺し始めました」

「え……えっと……じゃあ、そのアンデッド達は……どうなったんですか?」

「2体が同士打ちと見られる状況で活動停止……貴方が発見された辺りですので何か御存知……」

「知りません、知りません、知りません、気絶してました」

「そうですか。残りは鎮圧されました」

 そうか……ローアとシュネが……あの2人、中々すごいじゃん……と思ったら、その人命救助レスキューギルドの奴は、とんでもない事をヌかした。

「あと、『退魔師ギルド』によるアンデッドの鎮圧を妨害して事態を悪化させた冒険者2名が指名手配中です。あなたと同じパーティーのメンバーである事は判明していますよ……自称『聖騎士』ロンメルさん」

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