(7)

 冗談みたいな状況だった。

 火事は、何故か突然吹き荒れた季節外れの吹雪によって消し止められた。

 しかし、都市まち中の少なくない建物が燃えてしまい……そして、都市まちと外の街道を繋ぐ門全部の真ん前に、剣呑ヤバい異界への門が開いて、そこから本物の魔物フィーンドが溢れ出している。

 対抗出来る筈のスーパーヒーローギルドや退魔師ギルドは……善良な市民の皆様の手で壊滅状態。

 早い話が、魔物の巣窟と化した、この都市まちを元に戻す手段も、この都市まちから逃げる手段すら無いって事だ。

 この都市まちの歴史で、何度も他国や外敵から、市民を護ってきたらしい城壁は……今や、牢獄の壁だ。

「うわああああッ‼」

「やめて……」

「たすけて……」

 僕は……絶叫をあげて……目の前の獲物を斬り殺す。

 聖騎士パラディンの証である聖剣で倒したのは……婆ァと……その孫らしい幼女。

 でも、生きる為には仕方ない。

 婆ァの肉は固くて食えたもんじゃないけど……ああ……あと何日かは……柔らかい上等の肉が食える。

 誰にも渡すもんか……。

 この肉は僕のだ。

 僕だけの幼女肉だ。

 あははは……。

 生でも噛み切れるほど柔らかい幼女の肉を、ナイフで切り取り、口に運ぶ。

 暖い。

 どこぞの魔物フィーンドが起こしたらしい猛吹雪の影響は、まだ、残っていて、気温は冗談みたいに低い。

 でも……幼女肉の栄養が……僕に、寒さに立ち向かう力を与えてくれる。

 生き延びる……生き延びる……どんな事をしても、生き延びてやる……あははは……。

 僕の為に命を捧げてくれた……この名も知らぬ幼女の為にも……。

 へけけけけ……。

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