概要
基本的人権が保証されているのは一等国民のみ。
人ではないとされる二等以下の人々は、壁の中で尊厳のない暮らしを送る。
高さ25mの壁に囲まれた強制収容所、その名も「箱庭(クープ)」。
三等国民の子どもたちは、七つの歳を迎えると親から引き離され、天井のない牢獄に収監される。
100年前に大陸の覇権を握って以来、太陽の沈まぬ国ベルチェスター連邦共和国は、残酷な統治を行っていた。
さて。
ところである箱庭のギムナジウムには、自信家の『クイーン』がいた。
「自分にガッカリされることに比べたら、何だってただのかすり傷だわ!」
赤毛の少女の名はエル・スミス。
最底辺の三等国民でありながら、命知らずの小さなスターに、クープの市民はいつも熱狂。
14歳になった彼女
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ここでしか味わえない丁寧な絶望と打ち震えるほどの希望。今、蜂起する。
壁に囲まれた三等国民トゥラン人の強制収容区域、箱庭<クープ>。侵略と統合により、生まれた場所で人間の価値が決まる序列社会。銃殺、鞭打ち、人喰いハウンド――息をするのも命がけな閉鎖的な箱庭に押し込められた人々は、彼らを導くクイーンが現れるのを密かに待ち侘びている。
クープの中に建つクライノート・ギムナジウムで燦然と輝く自信家の少女、エル・スミス。その聡明な頭脳と真っ直ぐな信条は、理不尽の鞭にはけして屈しない。ギムナジウムの仲間やクープで暮らす二等国民たちを惹き付けてやまないカリスマ性の他にも、正体不明の紳士から毎年誕生日に届くカンパニュラの花束とメッセージカードに胸を躍らせる無邪気な一面も彼…続きを読む - ★★★ Excellent!!!例え爪が剥がれようと、その中にめいっぱいの大切なものを握りしめて
『貴様らは幸運だ。その下品な頭に染み付いた汚らわしい三等国の習性は、人類のために浄化されねばならない。晴れて立派なベルチェスター国民となれば、大手を振ってこのゲートから外に出ることができるであろう!』
レムリア大陸の覇者となったベルチェスター連邦共和国は、トゥラン人たちをそう言って貶めた。
トゥランの子どもを強制的に収容する区域の通称は、箱庭《クープ》。
まるで奴隷の子どもを作る工場や農園のように、彼らは押し込められていった。
反抗する大人たちは、無惨に死刑にされる。
「信じるんだ。おれたちには、王がいる。必ず、救いに来る」
万能の王ハルヴァハル。
それに選ばれたのは、愛情深く勇敢…続きを読む - ★★★ Excellent!!!少女は反逆者の王となる。強制収容所ぶち壊し系奴隷蜂起ファンタジー!
強制収容所『箱庭』
人々から尊厳と自由が剥ぎ取られ、代わりに暴力と屈辱が与えられる。
権力者の気まぐれで、あっさり人命が奪われる閉じた世界。
だが、そんなどうしようもない世界の中でも、エルと呼ばれる少女の誇りは誰にも奪えなかった。
ときに仲間をかばうために、身を挺して支配者へ立ち向かう彼女は、えてして無謀そのものだが、人々は敬意を込めて、こう呼んだ。
クイーン。我らが王、と。
ある日、彼女に、差出人不明の不思議な力を持つ黄金の鍵がとどく。
そこから、反逆の運命の歯車が回り出す。
強制収容所というシビアな舞台で、カリスマ少女エルが持ち前の頭脳を駆使して、人々を助けるためにが…続きを読む - ★★★ Excellent!!!必見のダークファンタジー!
舞台は箱庭。
あるものは、抑圧と理不尽。ないものは自由と正義。
人の皮を被った獣たちが支配するそこは、一瞬の油断が死に直結する、いわば収容所です。
絶望の渦巻く箱庭──ですが、14歳の少女、主人公エルの誇りを奪うことはできません。
彼女は、どんな困難があってもひるみません。
身を挺して仲間を守る気高さ、絶対的な支配者を前にして一歩も引かない毅然とした眼差しは、読み手の心を熱くさせます。
差出人不明の黄金の鍵、正体不明のおじさま、ミステリアスで有能なハンサム副隊長……ファンタジー好きにはたまらない要素が、随所に散りばめられています。
果たしてエルはこの先、自由を手にすることができるのか─…続きを読む - ★★★ Excellent!!!彼らの王は立ち上がった。
箱庭(クープ)のクイーンとして君臨するエル・スミスが鍵を受け取ったところから始まる物語。
これでもかというほど「残酷さ」を盛り込んだ小説。
くそったれな世界で、一人の少女と一人の男が革命を起こすために動き出す──
一文一文から伝わる世界の卑俗さ、海外映画でありがちな下品さやブラックジョークを交えた文章は読んでいて胸糞悪くなります。けれど、それが良い。
下品だからこそ、主人公のひたむきさ、勇敢さが際立ちます。無謀だって? 馬鹿だって? そんなことありません。クイーンは強く気高い王だから。
トゥラン人を見下し、蔑み、人として扱わないことを〝常識〟と思って生きているベルチェスター人。彼らの鼻を…続きを読む