例え爪が剥がれようと、その中にめいっぱいの大切なものを握りしめて

『貴様らは幸運だ。その下品な頭に染み付いた汚らわしい三等国の習性は、人類のために浄化されねばならない。晴れて立派なベルチェスター国民となれば、大手を振ってこのゲートから外に出ることができるであろう!』


レムリア大陸の覇者となったベルチェスター連邦共和国は、トゥラン人たちをそう言って貶めた。
トゥランの子どもを強制的に収容する区域の通称は、箱庭《クープ》。
まるで奴隷の子どもを作る工場や農園のように、彼らは押し込められていった。
反抗する大人たちは、無惨に死刑にされる。


「信じるんだ。おれたちには、王がいる。必ず、救いに来る」

万能の王ハルヴァハル。
それに選ばれたのは、愛情深く勇敢な少女。その名前は、エル。

「お前は人間では無い」と徹底的にしらしめされ、この箱庭の中では誰も手を差し伸べてはいけないというルールの中、彼女は緑の目を輝かせ、鮮やかにこう告げる。


「自分にガッカリされることに比べたら、なんだってただの掠り傷だわ!」

そんな彼女の前に現れたのは、トゥランの素性を隠すロス。
はたして、小さな女王の黄金の武器は何を射抜くのだろうか。
その口から紡がれる未来と世界は。

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