第19話子供が出来ました
べリリム侯爵家の夜会から1月、ミシェルの懐妊がわかった。
父たちとの話し合いから半年、ミシェルが言うタイミングを合わせて頑張っただけのことはあったかな。
王都からの帰りは腰が痛くてしょうがなかった。さすがのミシェルもヘロヘロだったし…
「無事に生まれてきてくれるとよいのですが」
「ミシェルが気弱になってどうするんだい」
とはいえ、ミシェルの懐妊が分かってから母が泊まり込んでミシェルの相談に乗ってくれておりかなり助かっている。
ちなみにウィルのところは既に懐妊しており、無事?ニーナが乳母になることが決まった。
あと、兄上のところは音沙汰がない。
「レイノルド、しっかりミシェルちゃんを支えるんですよ!」
「わかっておりますよ母上」
「いいえ分かっておりません、男では女の大変さは理解などできるはずが無いのですから!」
「まぁまぁ義母様落ち着いて」
不条理に母上から怒られた私をミシェルが庇ってくれた。
何とも情けないものだが、確かに男性では女性の大変さなどわかるわけもない。
「ミシェルちゃんはまだ懐妊がはっきりしたばかり、安静にしてないとダメですからね!」
母が怒っているのがミシェルがいまだに仕事をしていることなのだ。
確かにまだ懐妊が分かったところなのでミシェルにはおとなしくしていてほしいのだが、栽培が開始されたシュガービーツの収穫おわり、どのように砂糖を抽出するのか執務室で会議していたのを母に見つかったことでこのお説教を食らうことになった。
「ミシェルちゃんもしばらくは安静になさい!」
「は、はいすみません…」
義母でも母は強しだな…私の言うことはついぞ聞きはしないからな。
翌日からミシェルは主に部屋で本を読んだり編み物をしたりして過ごすようになった。
流石に1日執務室で仕事なんてことは無くなったので、代わりに私が引き受けている。
そして、朝食と夕食は一緒に取っているが、流石に夜は別々に寝ることになった。
「しばらくは一人寝か」
「子が生まれるまでは我慢してくださいましね」
妊娠が分かるとアルミナ王国では基本同衾はしない。
どんなに仲が良い夫婦であっても別々に寝ることになる。
「まぁたまには膝枕とかしてあげますわよ。なんなら手か口で…」
「…たまに頼むかもしれない」
そう私が言うとミシェルはにっこりとほほ笑んだ。
それはもうこちらが引くほどの顔で…
*****
ミシェルが書類仕事しかしないという期間に入ったので私はすべての会議だ打ち合わせだに出ることになった。
父上があまり家に帰ってこなかったのもわかるというものだ…
商業ギルドとの会合に騎士団との防衛・警備に関する打ち合わせ、他の貴族への対応、あとはもちろん書類仕事もある。
移入者は減ったが、人口がある程度増えれば我が家のように子供が生まれる。
「今月子供の出産届はこちらですね」
「街の規模を考えれば多い方ではないか?」
「ミシェル様の人口を正確に把握することが大切ということから戸籍というものを導入しましたが、まさかそれを課税額に影響させるようにするとは思いませんでした」
「おかげでタリムの人口は右肩上がりだ」
これはミシェルが子供ができたことをちゃんと届け出れば税金が安くなるという施策を出してくれたので採用してみた。
これは時限式で申請後3年間税率が下がるので結果的に家賃が安くなる。
住民にタリムの税がどうやって徴収されているのか知ってもらうよい機会になった上に、この出生届というのも円滑に提出されている。
これらの受付は商業ギルドが担っているので、ギルド様々だ。
まぁ不動産管理をしている会社がそもそも商業ギルド所属なのでしょうがないことなのだが。
同じように農家にも減税効果があるので必ず提出してくれているようだ。
「そういえばレイノルド様、ベリリム侯爵が例の件がリム伯爵も了承するとのことです」
「あぁ聞いている…まさか父上も出資するとは思わなかったが」
例の件とはもちろんと畜場のことだ。
ジェニファー様に確認してから半月、ベリリム侯爵からお手紙が来た。
ぜひ王都近郊に建築したい、莫大な利益が見込める上に卵と違い鶏での輸送なら今までも経験がある、だが多くの鶏を一度に処理する技術などに対して不安があるので共同出資しないかというものだ。
当然私ごときの出せる金額などたかが知れている。
慌てて父上と兄上に上申したわけだが、ガリム家として了承するとのことだ。
「あと、伯爵からはあとは任せろとのことです」
「よかった、肩の荷が下りる」
下手をするとこのままベリリム侯爵と対面で話可能性するあったんだ。
流石に勘弁被りたかった。
伯爵令息であったと言っても私はいま男爵でしかなく、一領地を持っていると言ってもあくまでガリム領内のごく一部を収めているだけなんだから、何かあったらまじで首が飛ぶ。
父なら問題ないだろう…はっきり言って助かった。
*****
「というわけで、ようやく一段落できそうだ」
「それは良かったわねレイ君」
例の件をミシェルに報告できたが、彼女もそれを聞いて安心したようだ。
ココしばらくずっとその件で駆けずり回っていたからな…
「ところで、レイ君一度行ってみたかった台詞があるんだけど」
「ん?何でも言って良いぞ」
「私と仕事どっちが大切?」
「ミシェルだが」
「わぁお即答」
「当たり前だ」
何だその質問は、私がミシェルを大切にしないなんてありえない。
私は彼女を好いて彼女からも好かれているという自身はある。
「それにお腹の子も大切だよミシェル」
「ん、ありがとう」
どうも最近スキンシップが少なくてミシェルは不安になっていたようだ。
「しばらくは一緒にゆっくりできる時間も取れるはずだよ」
「そうだといいんだけどねぇ…」
何だその含みのある言い方は…なにか心当たりがあるのかミシェル。
ちなみに、ジェニファー様がミシェルに向かって命の恩人と言っていた件については帰りの馬車で聞いた。
学園生活時代、ジェニファー様を目の敵にするという恐れぬ所業をする男爵令嬢がいたんだそうだ。
たしかその男爵令嬢と当時のジェニファー様の婚約者が浮気をしていて婚約を白紙にしたという話は知っていたが、その男爵令嬢に絡まれていた際、突き飛ばされて階段から落ちそうになったというのだ。
落ちそうになったでとどまっているのはミシェルがジェニファー様を支えて助けたから。
たしかに、女性が階段から落ちるなんてことになれば命に関わるだろう。
それで命の恩人ということらしい。
それ以外にも件の男爵令嬢とジェニファー様の元婚約者などの不貞の証拠をかき集めたのもミシェルだという。
通りで元々子爵令嬢であり、私と婚約してからしか高位貴族との付き合いがないはずのミシェルが皆に可愛がられているわけだと思った。
うまく取り入ったなミシェル…
例の男爵令嬢はジェニファー様を含む高位貴族のご令嬢方と口先では「仲良くしたいのに」などとほざいていたそうだが、であればその立ち振舞を鑑みろといいたいね。
ミシェルを見習えるもんなら見習ってみろというやつだ。
今、彼女は廃嫡されて昨年から修道院にいるとのことだ。
まぁそうだろうなぁ貴族令嬢でありながらどんな男にも股を開くなんて噂がたてば生きてはいけまいよ…
ミシェルいわく、逆ハーレムにいい気になってしまった脳内がお花畑のおバカさんたちとのことだが、全くその通りでなんにも言えない。
この騒動で廃嫡になった貴族令息も何名かいるほどだ。
まぁそんなのに引っかかるのはちゃんと婚約者とコミュニケーションを取って愛を育まなかった男どもが悪いと私も思う。
愛とは一方的なものではないのだから。
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