第15話 養鶏場の売却と新しい名物
養鶏場自体の経営は安定し、しっかり利益が出るようになった。
今日はその養鶏場を商業ギルドを通じて売却するための会議を行った。
帰ってきた私たち一緒にお茶をしている。
「無事に売却価格が決まりましたね」
「あぁ予想以上の高値がついて良かったよ。投資分完全に回収できたからな」
すでに借金返済ができたように鶏肉の販売はかなりの利益を産んでいた。
今回は商業ギルドを通して売却した結果、当初投資した金額がそのまま売却価格となった。
「これでタリム男爵家の資金はしばらく安心だな」
「久々に新しいドレスでも買おうかしら」
「あぁ問題ないよ。私から贈らせてもらっても?」
「まぁ!レイ君のセンスが楽しみだわ」
「まてミシェル。私はデザインはできないぞ。色を決めるぐらいだ」
「じゃあ私が何個かデザインを描いてあげるから選んでくれる?」
「任せてくれ」
今までミシェルは全部自分でデザインしたドレスを着ていおり、卒業パーティーでドレスを贈ろうとした時にも同じように色の指定とお金だけ出すことになった。
まさかシルヴァーナ子爵家のドレスをミシェルが着て宣伝するためだと思っていたのだが、自分に似合うドレスを自分でデザインしているとは当時思わなかったものな…
「去年と同じく、ジェニファー様から夜会に来ないかと誘いを受けているんだけど今回も行くわよね?」
「もちろん、侯爵家からのお誘いに行かない選択肢はないよ。今年の研究成果もベリリム侯爵に説明しないといけないだろ?」
「えぇその予定よ。今回は少しだけ卵の産出が多い個体を見つけたので、その鶏を増やせるように取捨選択していくところよ。流石にすぐに育つ鶏はまだまだ時間がかかりそう」
「もともと時間がかかると言われているし、そこはベリリム侯爵自身がよーくご存じだろうから大丈夫だろ」
ミシェルは頷いて紅茶を一口啜る。
「それと、今回はジェニファー様から家のシェフの同行を求められたわ」
珍しいな、シェフの同行を求めることなんてなかなか無いぞ。
「カシウスにといっては名誉なことになるな」
「そうね。私が教え込んだだけのことはあるわ」
「多分クリームパフ絡みだろう?」
「その通り。卵を使った生菓子類を夜会に出したいんだって。今はタリムに来ないと食べられないから、ベリリム家で出せば家との繋がりも明確になるしいいことずくめでしょ?」
「しかし、向こうの料理人に教えると、うちの独自性がなくならないか?」
「もともと技術協力をすることを条件にうちはベリリム侯爵家から養鶏業の許可をもらっているんだから、これぐらい還元しないと逆に怒られるわよ」
「それもそうか…」
「ただ、独占権を保つためにベリリム領以外への輸出は認めないということを約束しているわ」
ほら、と言ってミシェルが契約書を見せてくれる。
確かにそこにはその旨が書かれている契約書があった。
こういうことに関してはミシェルは手回しが良すぎるんだよな。
タリムにある菓子工房へも技術を教える代わり外への持ち出しを禁じるという契約を商業ギルドを通維持て契約しており、違反した場合の違反料金は莫大になる。
おかげで今のところタリム以外でクリームパフやカスタードプリンが作られるているということはない。
だからわざわざタリムに来て食べるという旅行客からの収入がでかいのだ。
通行税もとれるし商業ギルドからの売り上げによる税収についてもかなりになるからな。
*****
無事に養鶏場に関する権利は商業ギルドへ売却された。
ギルド長のエリック・ローデはずっと恵比須顔だったな。
これで、タリム家としては研究用の養鶏設備を残して身軽になった。
そでも研究施設にて産出される卵はそれなりの量がある為、ホテルタリム直営の菓子・卵料理店につかわれる。
キッチリ管理された無精卵であるため羽化の心配もなく使いやすいとの事。
うちの養鶏場が動き出す前だと、卵を割ったら雛が…なんてこともあったというから品質が安定したなと思う。
「カスタードプリンも、シューパフも売り上げ好調、今度はクレープでも作りますかね」
執務室にて本日の業務を進めていたところ、ホテルタリムの収益を確認していたミシェルがまた何か発展させるための料理を思いついたらしい。
「ガレットってあるでしょ?そば粉で作るあれ。あれを小麦粉で作って、いろんな食材をはさんで食べるのよ。一般的にガレットは食事として提供されているけれど、クレープは甘いものを入れるの。ジャムとかカスタードクリームとか」
「それはおいしそうだね…しかし、また砂糖を大量に使いそうだね」
「そうねぇー砂糖の輸入金額が徐々にタリムの税収入を押し下げているわよね」
残念ながらアルミナ王国ではサトウキビが育たない。
主に海を挟んだ南のエクスワーク王国からの輸入に頼っているため価格が安定せず高いのが問題だ。
今では平民でも砂糖を購入することは可能な金額となってきたが、甘味と言えばいまだに蜂蜜のほうが多く使われており、砂糖を使った菓子は高級品である。
「クレープなら蜂蜜でもよいのだけれど…いっそタリムで作りましょうか砂糖を」
「は??」
ミシェルの言葉に思わずあっけに取られてしまった。
それは過去アルミナ王国で散々失敗している案件だ。
なるべく温暖な地域でサトウキビを育てようとしたが発育が悪かったり枯れてしまったりしてまともに育ったことが無い。
おかげで砂糖は輸入するしかないというのが現状なのだ。
「ふっふっふ、レイ君私に任せてくださいな」
「というと、君のあの知識を?」
「さすがに今日明日にできるものじゃないけれど、農家に呼び掛けて甘いビーツを探せば早いと思うわ」
甘いビーツ、確かにここ最近タリムで取れた野菜の中で随分と甘い野菜があったと思うが、サトウキビでなくても砂糖が取れるのか?
「ずっとアク取りしないといけないけれど、シロップなら作れると思うわ。
こないだ夕食出てたビーツは結構甘味があったから行けると思うの」
「それは…ミシェルに任せても大丈夫?」
「もちろん、まぁ採算がとれるようになるには数年かかるかもしれないけれどやらせて」
そういってミシェルはさらさらと企画書を書いてくれ、私はサインして計画が開始された。
目処が立っていたとはいえ、まさか1年後それなりの砂糖が生成されるとはこの時思いもしなかった。
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