第4話 叙爵式と披露宴、そして…
ガリム城塞につくとウィルに導かれ大広間に急ぐ。
叙爵式はすぐに始まるのだ。
既に王家の許可も下りており、本日から正式に私は男爵となる。
ミシェルも正式に男爵夫人だ。
男爵と言っても元は伯爵家の人間のため、同じ男爵位の者と同格か?と言われるとそうではない。
なにせ、伯爵家の後ろ盾が強烈なのだ。
場合によるが子爵家相当の扱いを受けることがほとんどとなるだろうが、王宮でのパーティーなどに呼ばれることはほぼない。
あって伯爵家での新年会とかぐらいだろう。
何らかの諸事情で伯爵家代理としての仕事は有るかもしれないが…
「ここに、レイノルド・ガリムに男爵位を授ける。
これより、レイノルド・タリム男爵としてアルミナ王国に貢献することを勅命する。
アルミナ王国国王陛下代読」
「レイノルド・タリム拝命いたします」
私は父の前に跪き、叙爵の儀をうけた。
横にはミシェルも同じく跪いている。
「タリム地区を頼む。
あそこは荒廃してから久しい、お前とミシェル嬢の計画であれば見事に復興するであろう」
「はっ」
私は父に対して敬礼する。
ミシェルもカーテシーで答える。
これにて叙爵式は終わりだ。
後は結婚披露宴となった。
会場には貴族学校での友達連中も集まってくれている。
ミシェルの友人女性たちもだ。
多くの貴族子女は学園を卒業するとけっこする場合が多いが、例外もある。
その多くは次男、次女以下の弟妹たちだ。
上手いこと長兄姉と縁を結べたり政略結婚でも整えば別だが、多くの場合は戸籍上平民となり家を支えるか外に出ることになる。
私の様に爵位をもらえるなんてのは運がいい方なのだ。
「しかしこれで、タリム男爵かぁ。気軽に声をかけられなくなるな」
「なに、私とお前の仲じゃないか、そんなに気にしなくていい」
伯爵家と子爵家親族との挨拶が終われば、私とミシェルの友達連中が挨拶に来る。
「よかったわねミシェル!レイノルド君みたいな人を捕まえられて羨ましいわ!」
「いいでしょ!みんなも男はちゃんと自分で抑えて手綱を握らないとダメよ!」
「…レイノルド、あんなこと言われてるけどいいのか?」
「まぁ事実だしな。ミシェルがいなきゃ男爵にはなれなかったからな」
「そ、そうか…」
友達連中が引いているが知ったことではない。
それに、ミシェルが男友達から色目をかけられないのだから良いとおもっている。
「レイノルド、もしよかったら仕事くれな」
「俺も頼む」
「お前らな…」
貴族の次男坊以下なんてこんなものである。
家臣として残れればラッキー、そうでなければ平民落ちして高位貴族の従者になったりと就職先を見つけなければいけないわけだ。
うちはいい就職先の一つだろうな。
新興の男爵家、しかも領地を発展させようっていうんだから仕事のしがいはあるかもしれない。
でも、今は十分人員は間に合っている。
残念ながらこれらの売り込みが今後に生きることはないだろう…
*****
披露宴はつつがなく終了した。
遠くから来ている客人たちはガリム城塞の客間に泊まってもらう。
ガリムはアルミナ王国北の要所のため、城塞もそれなりに大きく、兵士たちが寝泊りするためのスペースも豊富にある。
逆に広すぎて使いにくいともいえるかもしれない。
ここ1ヶ月は客間の掃除に大忙しだったな。
私とミシェルは城塞の離れに戻ってきた。
これから2週間、離れは私とミシェルが住む場所になる。
両親や兄たちは本邸に住んでおり、今まで私の部屋も本邸のほうにあったわけだが、今日からはタリム男爵っとして別の家という訳だ。
ちなみにこの離れ、結構小さい。
部屋が二つに寝室が一つ、それとは別にリビングとダイニングがある。
メイドがお茶を入れたりする簡易的なキッチンと待機部屋があるが、まぁこじんまりとしている。
待機部屋には私の執事として今後も仕えるウィルと3名のメイドが詰めることになっている。
彼らはそのままタリム男爵家の家臣となる予定だ。
「それでは、旦那様、奥様お休みなさいませ」
4人が挨拶をして私たちの寝室を後にする。
すでに二人とも湯浴みも済ませ、ミシェルは淡い緑色のネグリジェを着てソファーに座っている。
私は今なんと声をかけるべきかとても悩んでいる。
この後何をするのかは伯爵令息としても分かってはいる。
が、こうどう声をかければいいのやらわからない。
頬に熱が集まるのがわかるし、意識したくなくても隣に座っているミシェルを意識してしまう。
薄手のネグリジェの生地が彼女の躯体をなまめかしく際立たせているのだから…
「レイ、それ」
ちょいっと指差され急に顔がボッと火照る。
「よかったわ。レイが私を愛してくれていると言葉では聞いていたけれど、ちゃんと私の体で興奮してくれるのね」
ミシェルがとんでもないことを口走り始める。
私だって女性の扱いに対して口頭ではならったが、女性からリードされるなんて思っていない。
まってくれ、ミシェルは初めてじゃないのか!?
*****
スズメのなく声が聞こえる。
はっきり言おう、昨日はすごかった。
聞いていた以上のことをした。というかしてもらった…
まさかあんな・・・いやちょっと思い出しただけで興奮してきた。
「んつレイ、おきたの?」
「あ、あぁおはよう」
まだ二人ともベッドで横たわっている。
というかミシェルは初めてだったはずなのになぜあそこまで床上手だったんだ…彼女だってつらいはずなのに
「どうかしたの?ベッドの上で考え事?」
「あ、いや」
彼女がすっと首に手を回して抱きついてくるのに任せて今一度ベッドに倒れ込む。
「2週間はゆっくりできるんでしょ?しっかり楽しみましょう」
フフフと笑う彼女の顔が可愛く愛おしい。
あまり考えても仕方がない。
彼女が初めてだったことは間違いないんだ…きっとシルヴァーナ家の教育が独特なんだろう。
閨の勉強だって貴族の勉強の一つだが、一度だけした夜遊びですら、あんなことはなかったのに、彼女にいいようにもてあそばれてしまったのだ。
とはいえ、誘われたからには私だって彼女を気持ちよくしたい。
彼女の唇を奪って考えることをやめた。
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