第3話 男が抜けるS級パーティー
「ふむ……」
おじさんが去ってから、また1人の時間。
「……正直、半信半疑だよなぁ」
俺は言われたことをもう一度、思い出す。
『あのパーティーは今までも冒険者の募集をしていた。集まったのは、男ばかり。……しかし、皆。パーティーを抜けていった。それも、自ら抜けていったらしい』
自分から抜けたって言っても、自分の諸事情があってかもしれない。
パーティー内のトラブルがあったかもしれないし……。
はたまた、パーティーから逃げる必要があった……?
おじさんも、情報は確かなものじゃないって言っていたし、今すぐ信じてパーティー加入希望を取り消すほどじゃない。
「まあ、一週間のトライアル期間もあるし、そこで見極めればいいだけだ。男が何故か抜けるS級パーティーに潜入ってのも……面白そうだし」
俺がこうして自信があるのは、【エクスカリバー】があるからだ。
もし、【エクスカリバー】と俺の身体能力が通じない事態があったら……。
「それはもう、死を覚悟するしか……って、さすがに考えすぎだよな。たははー」
◆◆
『俺は、アラタ・シナナイと言います……!』
アラタ・シナナイさん。
黒髪黒目の容姿で、礼儀正しい。好青年という言葉が似合う人だった。
剣を1本所有していたが……妙な魔力を感じた。それに、彼自身からも……。
これが自信の源だろう。
それと、私が獣人であってもさほど驚いた様子はなかった。
「それに、私たち【
これは……チャンスかもしれない。
妙な噂が漂っている以上、誰もうちのパーティーに入りたがらない。
……一刻も早く、見つけたいのに。
でも、今回は……。
「ただいま戻りました」
街から遠く離れた屋敷。
そこが、【
「おう、おかえりユナ」
「おかえり」
「ん、おかえりー」
広いリビンには、パーティーメンバーの3人が待ち侘びていた。
私はソファーに座ることなく、立ったまま報告する。
「希望者の面談をしてきました。それで、一週間のトライアル期間を設けたいと思います」
「……」
「……」
「……」
3人は一旦、黙り込むのの。
「……チッ、また辞めるにちげぇーねーよ」
「そうね。まず、私たちを見て逃げるのだから」
「……もう、新しい人。入れなくてもいいじゃん」
3人とも予想通りの反応。
もう、こりごりという呆れた反応……。
「ユナもよく諦めないよなぁ」
「今回の文面。私が担当したのだけど、絶対人は来ないと思っていたのに」
「あの文面で来たってことは、危ない人じゃないの……? えー……」
3人とも。眉間にシワが寄る。
でも私は……。
「はい。このパーティーに、男の人は必要ですから」
私は諦めない。
「はぁ……。まあユナが諦めない限りは、アタシたちも付き合うよ」
「そうね。ユナは私たちのリーダーだもの」
「ん、まあユナがいいなら……」
「では2日後。よろしくお願いします」
私はリビングを後にして、自室に入る。
鏡の前の自分は、黒く長い耳が生えたクロウサギの獣人の私が。
表情は、どこか自信なさげで、何かに怯えている私がいる。
「アラタさん……貴方こそこのパーティーの……。いえ、私の運命の人でありますように……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます